
展覧会名:珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年
会場:名古屋市美術館
会期:2025年4月12日(土)~6月8日(日)
展示内容:
Ⅰ絵画の「ジャンル」と「ランク付け」
Ⅰ-1. 歴史画 ─神話、物語、歴史を描く ~絵画の最高位~
Ⅰ-2. 肖像画 ─王侯貴族から市民階級へ ~あるべき姿/あるがままの姿~
Ⅰ-3. 風俗画 ─ 市井の生活へのまなざし
Ⅰ-4. 風景画 ─「背景」から純粋な風景へ ~自然と都市~
Ⅰ-5. 静物画 ─ 動かぬ生命、 死せる自然
Ⅱ 激動の近現代 ─「決まり事」の無い世界
Ⅱ-1. 「物語」の変質 ─ 1. 物語/現実
Ⅱ-1. 「物語」の変質 ─ 2. 幻想の世界へ
Ⅱ-2. 造形の革新─1. 光と色彩の饗宴
Ⅱ-2. 造形の革新─2. フォルムと空間
惹句:まるで美術の教科書
訪問日:5月22日
ここ最近ちょっとした仕事で投稿記事を書く余裕がなかった。でもそちらが一段落。書かなかった間に美術展2つと音楽会を1回行ってきたので、やっとそれを書くことができる。
まずはその中で最後に行った 西洋絵画の400年展。
この美術展は、なぜこんなにというほど混んでいた。それもあまり美術展に来ないような雰囲気の人が多かった。窓口では切符を買わず、だれもが前売り券だった。そしてこの美術展は写真がほぼ自由だったが、著名作品の前に立って記念撮影をする人もいてやれやれとおもった。なんらかの動員の結果だろう。

お客さんの状況
作品というよりも、作者たち自体は確かに惹句の「まるで美術の教科書」そのもので、ルネサンスから後期印象派までの著名な作家を集めていた。作家一人につき一点のカタログのような展示会4であったが、その人が評価される作風とは違うものが多いように思われた。名古屋でヤマザキマザック美術館が似たような展示をしているが、そちらの各作者の作品の選択のほうが、私のイメージに合っていた。
ただし教育のための展示という意欲はとても強く、下記のことは非常に役立った。
①ルネサンスから印象派以前までの絵画のジャンルに格式で順位があること。
展示内容のⅠの順番で、歴史画がトップで一番下が静物画。これはオランダ周辺で風景画が描かれだした時にざっと読んだことがあるが、丁寧に説明を読んだのは今回。ちなみに風景画は、本来は神が作った風景をオランダでは人が作ったから記録に残したいということで描きだして注目され、このランクに入ったはず。
②印象派以降の絵画の世界の整理
激動の近現代といっても1960年くらいまでだが、「決まりごとのない世界」とまずは言い切って、その中のジャンルをうまく整理している。
⓷各作品ごとに丁寧な作者説明と作品説明が書かれている。むしろ作者説明が充実していて、多分それだけで本になると思う。

説明の例 モネのの絵に対する説明とモネの説明
以上のように、ルネッサンスから1960年代くらいまでの美術史を学ぶのならば、学芸員の努力で非常にいい美術展だったと思う。
出展されていた絵画については、印象に残ったものをあげあげていく。
1.Ⅰ-1. 歴史画 のジャンル

サン=ベルナール峠を越えるボナパルト
ジャック=ルイ・ダヴィッドの工房
歴史画といっても、リアルタイムのナポレオンの肖像画だった。
ナポレオンの肖像画としても有名なもので、確かナポレオンが5枚を書かせたもの。やっぱり人気があったようで、多分小型版の複製をダビットの工房で作ったもの一枚が日本に来たのだろう。ナポレオンのかっこよさを存分に引き出した絵を日本でも味わうことができる。なお有名なナポレオンの戴冠式のナポレオンのみの作画も入手しているから美術館は偉い。
2.Ⅰ-2. 肖像画 のジャンル

ベッドフォード伯爵夫人 アン・カーの肖像
アントニー・ヴァン・ダイク
東京富士美術館はオールドマスターの優品をたくさん持っているとの事だが、この絵はいいと思う。Ⅰのグループの肖像画はかなりいいものがあった。この絵は伯爵夫人の気品ただよう素敵な絵で、さすがヴァン・ダイクだとおもう。
3.Ⅰ-3. 風俗画

・漁師の娘 ウィリアム・アドルフ・ブーグロー
風俗画もいいものがあった。この絵は女性が美人過ぎると思うが、それでも貴族と違うた市井の女性の逞しい雰囲気が出ている。
4.Ⅱ-1. 「物語」の変質 ─ 1. 物語/現実
Ⅱに入って印象派以降となるが作者の名前は揃っているが、その他の美術展でよく見るためか、あまりドキッとした絵はなかった。この中で私が好きな絵を2枚。
Ⅱ-1.で、ターナー コロー、ゴッホ、シャガール、などあったが、その中ですくっと立っているモディリアーニの絵に惹かれた。

・ポール・アレクサンドル博士 アメデオ・モディリアーニ
5.Ⅱ-2. 造形の革新
ここには、ゴーガン、シスレー、セザンヌ、ユトリロ、ブラマンクなどがあったが、やっぱりモネを選んだ。キスリングもよかったが、各作者に対して私のイメージをはずれえいるものが多かった。
モネの絵も、ほんとうはこういったおとなしい絵ではなく、多分視覚障害を起こしてからの、見えなくなりつつある色との激しい戦いをやっているような絵が好きだ。

睡蓮 クロード・モネ
美術の教科書のような展示であることは事実。特にⅠのほうはいい作品がいいと思った。Ⅱのほうは、東京富士美術館の学芸員と私の感覚が違うかもしれないが、それぞれの作者で見たいという方向の作品がずれていた。
ただし全体として肖像画が多く、最近人物画を描いているため非常に参考になった。