空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

筋ジスの生徒死亡:「教員の力量不足」というのを文字通りに理解しては些か理解が足りざるものと思う

2019-05-21 18:41:08 | ノート
朝日新聞 筋ジスの生徒が死亡 通報まで16分「教員の力量不足」 井上充昌 2019年5月20日23時46分(アクセス・2019/05/21)

宮城県教育委員会は20日、県立名取支援学校高等部(名取市)の生徒が通学バス内で心肺停止になり、死亡したと発表した。生徒は難病「先天性筋ジストロフィー」患者で、たんがのどにつまったことによる窒息死とみられる

17日午前8時21分、通学バスに同乗する保安員が、生徒の顔色が優れないことに気付いた。呼びかけても反応が悪いため学校に連絡したが、学校の指示で保安員が119番通報したのは16分後。救急車が到着した8時50分には心肺停止状態だった

通報までの時間について、県教委は「生徒は約10年バス通学しており、窒息を想像できなかった。校内の連絡にも時間がかかった」と釈明

遠藤浩一校長は「教員の力量不足だった。もっと短い時間で通報できるよう取り組みたい」と話す

 場所が場所なので地元報道をみよう。
 なにしろ朝日新聞の場合、学校に連絡した時点(8時21分)から『ふつー具合が真剣に悪いヤツがいたら救急車呼ぶだろ。たかが救急車を呼ぶ程度の判断さえ16分かかるよーな低能教員なんぞ、クビだ、クビ』とか思いかねない。校内の連絡に時間がかかった、じゃねーよ、と。

河北新報 通学バス内で支援学校生徒死亡 救急車要請に遅れ、学校が遺族に謝罪 2019年05月21日火曜日

県教委によると、生徒は17日午前8時8分に乗車。乗降を支援するバス会社社員が同21分、生徒の顔色が悪いことに気付き、学校に連絡した。同37分に学校の指示で社員が119番。救急車が到着した同50分には、生徒は心肺停止状態だった。午前10時11分に搬送先の仙台市内の病院で死亡が確認された

学校の通学バスの緊急時マニュアルでは同乗のバス会社社員が学校に連絡し、指示を受けるよう定めている。当日、学校側は担任と養護教諭の2人を現場に向かわせ、生徒の様子を見ることを優先。校内で救急車要請を判断し、119番するまで16分かかった

 朝日新聞からでも推知できるが、バス内の同乗者には独自に救急車を呼ぶ権限がない。「具合が悪そうだ」「顔色が悪い」という情報からすぐさま『ウム、これは筋ジス患者の子だな! ということは痰がつまって窒息しているのだ。即座に救急車を呼べ!』と判断するとしたら、そりゃエスパーだ。

 なので、「学校側は担任と養護教諭の2人を現場に向かわせ、生徒の様子を見ることを優先」つまり結果的にはここで明暗がわかれた。さらに救急車を呼ぶ判断について「校内で救急車要請を判断し」とあり、恐らくはマニュアルどおり、学校居残りの上長の判断を仰いだわけである。ここで明暗二つ目。

 ということで、朝日新聞では”空白の16分間”に見えるところでは、まあこれだけマニュアル準拠であろう行動があったわけだ。何もせずにあわあわしていたわけではない。責任範囲をしっかとさだめた、その限りでは軍隊的にかっちりした行動のため、結果として不幸になったわけである。

県庁で記者会見した遠藤浩一校長は「救急車を迅速に要請する力量がなかった。学校管理下で起こった事案で責任を感じている。緊急時の連絡体制を見直したい」と述べた

 力量―教員関係のテクニカルタームの気配が。

県教委は県内全ての特別支援学校に対し、通学バスの緊急時対応を点検するよう通知した。生徒の死因が病死であることから、関係職員の処分は検討しない

 まあ、せやろな。



 逆に言えば、一日三回で済む程度なので、まさか朝の一発目からそれかよ、ということでもある。

 妥当な感想はこんなところかなと:




 …あとバスの添乗員さんにその権限があったかどうか。権限なしでやればクビだったりもありえる。



 なおわたしは、保育園の例だが、『倒れていた(と判断した)折りたたみ椅子を立てて立てかけておいた』で責任問題になってクビになった例を知っている。



 むしろマニュアルが整備されすぎていた事例である。
 以下の例は社会の現実を知らずに社会学をする例である:



 で、自発的に独断専行したヒトから首になっていくわけである:





 どの子がどんな病気でどういう危険がありえるか、バスの添乗員さんにどこまでの情報開示と守秘義務を求めるかということを考えるべきであろう。個人情報なんだよなあ…。

 でまあ。

 責任回避のためには、このようなケースであれば、ぶっちゃけさっさと救急車を呼んで救急のひとたちに責任転嫁するのが楽。五分以内の救急車召喚判断・電話が推奨。そうすると、あとは救急車が無事付くかどうかの交通事情と専門家の腕の問題になる。

 私としてはこの作戦をとりたい。いやあ、モチはモチ屋ですわ。

 ところが、社会全般にあんまりにも気楽に救急車を呼びすぎだ、という批判もあるわけで、まあ公共機関としましては、不必要な救急車召喚は避けるべき、ともされるわけだ。

 ということで、今回の事例は、そんな社会の要請と病気の必然と時の運とマニュアル対応の狭間でうっかり起こっちゃった例、と評価することになるのかと。さしあたり教職員の責任は問わないというのはそういうことだろう。

 こんな話に纏めたくなるのは、こういうフェイルセーフ用システムが弱体化してやしないか、そっちにまわす資源が足りてなくないか、とこのごろ思わんでもないことが背景にあるかもだ。

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