ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

早春

2018年09月29日 | 誰も逆らえない巨匠篇
そもそもなぜ本作に『早春』というタイトルをつけたのだろう。紀子3部作の『晩春』はまさに嫁ぎ遅れの娘紀子(原節子)を主人公にした名が体を表す映画だったが、『早春』というタイトルにあてはまる登場人物は、妻帯者に横恋慕する金魚こと金子千代(岸恵子)ぐらい。本作の主人公はまちがいなく結婚後生まれた子供を病気で亡くし倦怠期を迎えた杉山夫婦(池部良、淡島千景)である。『晩春』によって映画監督として不動の地位 . . . 本文を読む

お茶漬けの味

2018年09月24日 | 誰も逆らえない巨匠篇
小津の従軍後初の作品となる予定だった本作。軍の検閲であえなく没になったシナリオを改定して、紀子三部作の合間に公開された1本。小津安二郎と脚本家野田高梧との名タッグによる、いわば絶頂期にあたる映画だが、シリアス路線の三部作と違ってコメディタッチの“気安く”見れる作品だ。 小津独特のローアングルも本作ではさほど低く感じられず、むしろ誰もいない家やオフィスの中をクローズアップやクローズアウトを駆使 . . . 本文を読む

木と市長と文化会館/あるいは7つの偶然

2018年09月22日 | 誰も逆らえない巨匠篇
パリ郊外の町で市長をつとめる主人公ドゥショーム(パスカル・グレゴリー)は社会党所属なのに大地主、緑を愛するエコロジストなのかと思いきや中央政界進出のため文化会館建設を計画する矛盾の塊。恋人で作家のベレニス(アリエル・ドーンバール)はパリの都会生活を自画自賛しながら、田舎に近代的建築は不似合と釘を刺す。柳の大木を切り倒し美観を損なう会館建設には断固反対の小学校教師マルク(ファブリス・ルキーニ)も . . . 本文を読む

二十四時間の情事

2018年01月25日 | 誰も逆らえない巨匠篇
彼女(エマニュエル・リヴァ)は映画女優で、日仏合作の反戦映画をヒロシマでロケ撮をしていた。彼(岡田英次)は建築家で、ヒロシマに住んでいた家族を原爆で亡くしている。ホテルの部屋で体を重ね合わせた後、彼女がフランスに帰るまでの24時間が、ほぼ2人の会話のみで進行していく。 映画冒頭、原爆の影響で髪の毛が抜け落ちていく女性や、皮膚がケロイド状に焼け爛れた子供の無残なドキュメンタリーシーンが延々と . . . 本文を読む

バルタザールどこへ行く

2018年01月24日 | 誰も逆らえない巨匠篇
自らの映画をシネマトグラフ、素人同然の俳優をキャスティングしそれをモデルと形容した孤高の映像作家ロベール・ブレッソン。 モデルには演技しないことを求め徹底的に無駄な装飾をそぎおとした演出は映画界のライザップ?、観客の感情移入を避けるという意味ではあの小津安二郎に通づる体温の低さを感じる方もおられるだろう。 同時代のヌーヴェルヴァーグ監督にも影響を与えたというブレッソンだが、作品によって信者 . . . 本文を読む

軽蔑

2017年10月03日 | 誰も逆らえない巨匠篇
ゴダール作品には珍しく大金をつぎ込んだ大作である。そのため製作者側からのかなりの横槍が入ったらしく、冒頭のカミーユ(バルドー)の全裸シーンも製作者側からの要望によって後から付け加えられたらしい。英、仏、伊の三ヶ国語が入り混じった脚本を、製作側で一ヶ国語に勝手に書き換えるという騒動もあったという。 当時ハリウッド側からプログラムピクチャーを撮らされていた名匠F・ラングを起用したところや、アメリ . . . 本文を読む

さすらい

2017年08月01日 | 誰も逆らえない巨匠篇
一方的に別れ話を切り出された男が、故郷を捨て方々をさすらった挙句、疲れ果てて故郷に舞い戻る。アントニオーニ作品の中では、ストーリー的にも明解で、「太陽はひとりぼっち」のように身構えて鑑賞するような映画ではない。アントニオーニの故郷でもあるポー河流域を舞台にしており、自伝的作品とも言われている。 イルマに捨てられて、娘を連れてさすらいの旅に出るアルド。アルドが立ち寄る場所は、川辺の土手や舗装さ . . . 本文を読む

失われた週末

2017年07月24日 | 誰も逆らえない巨匠篇
映画冒頭、週末旅行を企画する兄弟。そして荷造りをしながら窓の外をやたら気にする弟ドン・バーナム(レイ・ミランド)。窓枠からぶら下げられた1本の酒瓶によって、観客はドンがアル中状態であることを知らされ、恋人や兄に隠れてコソコソと酒を飲んでいることが明かされる。一見まともそうに思える作家の卵が、酒に溺れて堕落していく様が非常に生々しく描かれている。1杯が2杯に、2杯が3杯に・・・・、自分への言い . . . 本文を読む

恋人よ帰れ、わが胸に

2011年02月24日 | 誰も逆らえない巨匠篇
I.A.L.ダイヤモンドと脚本を共同執筆したビリー・ワイルダー晩年の作品。狡猾な弁護士ウィリー(ウォルター・マッソー)が義理の弟ハリー(ジャック、レモン)を重傷患者にしたてあげ、保険会社から多額の賠償金を搾取しようとするコメディ映画だ。 男を作って逃げた元女房サンディ(ジュディ・ウェスト)が、賠償金目当てで戻ってきたとも気づかずに、サンディをつなぎ止めておくため怪我人を演じ続けるハリーを、ジャッ . . . 本文を読む

昨日・今日・明日

2010年09月16日 | 誰も逆らえない巨匠篇
デ・シーカ、ローレン、マストロヤンニのトライアングルによる珍しいオムニバス映画。ナポリ、ミラノ、ローマというイタリアを代表する都市に暮らす男と女をローレンとマストロヤンニにの2人が、1人3役ずつ見事に演じ分けている秀作コメディである。 ローマ生まれのナポリ育ち、ソフィア・ローレンにはやはり南イタリアの女がよく似合う。ナポリ編では、税金滞納による逮捕を免れるため常に妊娠状態をキープしようと夫(マス . . . 本文を読む

ユリシーズの瞳

2010年09月15日 | 誰も逆らえない巨匠篇
はじめから『オデュッセイヤ』をベースにした映画にしたくて、脚本家のトニーノ・グエッラに相談をもちかけたところ出来上がったのが、この『ユリシーズの瞳』だそうだ。20世紀初頭マナキス兄弟が撮ったといわれる幻の映画フィルム3巻を探し求めて、(アンゲロプロスの分身と思われる)映画監督A(ハーベイ・カイテル)が、アテネからサラエボへ魂の旅に出かける一大叙情詩。 カンヌでパルムドール本命視されていた本作だが . . . 本文を読む

こうのとり、たちずさんで

2010年09月14日 | 誰も逆らえない巨匠篇
国境付近の難民キャンプを取材にきたTVディレクター・アレクサンドロスと撮影クルーの一行。さまざまな民族が一緒に暮らす住居用に改造した貨車を映したフィルムの中に、議会で謎の言葉を残して失踪、そのまま行方不明となった大物政治家の<男>(マストロヤンニ)の姿を発見する。スクープになると直感したアレクサンドロスは再婚している元<夫人>(ジャンヌ・モロー)を訪ね、失踪事件の真相に迫ろうとするのだが・・・・・ . . . 本文を読む

エレニの旅

2010年09月08日 | 誰も逆らえない巨匠篇
ロシア革命勃発でソ連を追われたギリシャ難民グループがたどり着いた沼地に、やがて集落が形成され、生活も次第に落ち着きを取り戻す。血のつながっていないグループのリーダー、スピロス宅に引き取られた戦争孤児エレニだったが、妻を喪った孤独に精神をやられたスピロスは嫌がるエレニに結婚を迫る。すでにアレクシスと恋仲だったエレニは、スピロスの留守中双子を出産し養子に出していた。そしてスピロスとの結婚式当日、エレニ . . . 本文を読む

シテール島への船出

2010年09月01日 | 誰も逆らえない巨匠篇
アンゲロプロスが新たに<国境>をテーマにして撮った3部作の1作目。ギリシャ山間部や旧港を叙情的にとらえた映像は絵画的で確かに美しく、それだけの映画ではないことも感覚的にはなんとなくわかるのだが、(私自身あまりアンゲロプロスを好きじゃないこともあり)その良さを説明しろといわれると非常に困ってしまう漠とした作品だ。 ソ連に亡命していたスピロが故郷ギリシャに32年ぶりに戻ったものの、村民はスキー場開発 . . . 本文を読む

勝手にしやがれ

2010年08月13日 | 誰も逆らえない巨匠篇
ゴダールが一躍注目を浴びるきっかけとなった長編デビュー作。ほぼジャン・ポール・ベルモントとジーン・セバークの会話のみで構成されており、ストーリーもあってないようなもの。当初、セバーク演じるパトリシア役には(ぞっこんだった)アンナ・カレーニナを想定していたが、ゴダールが当時無名だったこともあり、どうもオファーを断られたらしいのだ。 低予算の都合上、脇役陣もほとんどが映画関係者の素人で固められ、ロケ . . . 本文を読む