ネタばれせずにCINEるか

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60歳のラブレター

2009年05月20日 | 映画館で見たばっかり篇
住友信託銀行が毎年行っている映画タイトルと同名の募集企画、その手紙の中から実際のエピソードをピックアップして、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ・『キサラギ』の古沢良太が1本の映画にまとめあげた熟年ラブストーリー。企画ものの映画というのはおエライさんたちの意見が反映されやすいせいか凡作に終わるケースが多いのだが、本作品に関してはいい意味で期待を裏切られた感じだ。

夫の退職を期に離婚を決めたタタキアゲの橘孝平(中村雅俊)と世間知らずで引っ込み思案の妻ちひろ(原田美枝子)、糖尿病の夫・松山正彦(イッセー尾形)と一緒に魚屋を営んでいる妻・光江(綾戸智恵)、そして、妻と死別後娘と二人暮らしの内科医・佐伯静夫(井上順)と佐伯に好意を寄せる売れっ子翻訳家・長谷部麗子(戸田恵子)。微妙に絡み合った三組三様のこわれかけた夫婦(もしくは恋人)関係が、1枚のラブレターによって見事に再生するという感動ストーリーに仕上がっている。

30代の脚本家と監督ということで危惧された熟年の心理描写などには、「お前、見たんか?」とこちらから突っ込みをいれたくなるほど心憎い演出がされている。多くの人が指摘しているように、橘と佐伯それぞれの一人娘(星野真理・金沢美穂)の鋭い観察眼に大人たちがしてやられるシーンなどに、その“若い目”が生かされているのは当然としても、還暦を迎えようとする人なら必ずや背負っている人生に対する疲労感や悲しみ、後悔の念などがにじみ出たシーンが真に迫っているのだ。

実在の妻から夫へ、夫から妻へ送られた約9万通の手紙から取捨選択されたエピソード集だけに、そのリアリティも半端ではなかったということなのかもしれない。各エピソードのつなぎ方の滑らかさなどは熟練の域に達しており、自己紹介を兼ねた主要登場人物6人のモノローグを入れたタイミングも絶妙。フェミニズムよりの(公私混同もはなはだしい)バッシング評も散見されるものの、『Always・・・』(1の方)で泣けた人なら必ずや涙腺がやられるラストのお涙頂戴3連続攻撃などは、もはやこの脚本家の得意技といえそうだ。

孝平のラスト・シークエンスが途中のカットでネタばれしてしまっていたのはご愛嬌として、エンディング・ソングも(どうせだったら森山良子などという部外者ではなく)綾戸にブルースを歌わせても良かったのでは・・・などと勝手に思ったりもしたのだが、本作品が上半期邦画戦線で今のところ頭一つ抜け出していることは間違いなさそうだ。

60歳のラブレター
監督 深川栄洋(2009年)
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1 コメント

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Unknown (アラフィーるか)
2009-05-17 22:43:20
こんな素敵で感動した映画、見逃さなくて本当によかったです!
邦画を見る人が増えたという新聞記事があったけど、若い人向けだったり、浅いドラマでいい映画に出会ってませんでしたが、こんな映画を待ってました。
席が半分位しか埋まってないのが勿体ないです。
熟年世代が観れば感動して前向きになって、しいては日本が明るくなるのにと思いました。

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