日本の風景 世界の風景

日本と世界各地の景観を、見直します。タイトルをクリックすると、目次(1)(2)(3)になります。

りんごの高級品指向

2009-11-24 | 貧困の起源
高級りんご「ふじ」の小売価格が暴落、1個100円。りんご農家は赤字。
収穫しても損だから放置して出稼ぎに行くが、りんご農園は荒廃。




りんごの消毒(生産コストのうちで農薬経費が10%以上を占め、トップ)

3月
  マシン油乳剤   トップジンM水和剤   石灰硫黄合剤
4月
  ハマキムシ防除剤   スポットサイド水和剤
5月 
  バロックフロアブル   サンスクリット水和剤   バイカルティ
  石灰硫黄合剤     マラトン乳剤      ベルクートフロアブル  
  ダントツ水溶剤     ダイアジノン水和剤
6月 
  炭酸カルシウム水和剤  有機銅剤
7月 
  ピレスロイド剤      有機銅剤  アリエッティC水和剤
8月 
  ストッポール液剤(落果防止剤) ダーズバン水和剤
9月 
  ファイブスター顆粒水和剤

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りんごの小売価格安値
1個の小売価格200円以上を想定し、りんごの高級化が進められてきた。
しかし、生産過剰に陥り、激しい産地間競争、産地内ではりんご農家間の安売り競争が展開されている。日本のデフレそのものである。




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りんご価格低迷で出荷調整 長野・青森など6県   

りんごの価格が不景気による消費者の買い控えで低迷し、長野県農協グループは2009年11月28日、市場を通して生食用に販売するリンゴの出荷調整を始める。
青森県など全国の主要産地5県の農協と協力する仕組みを初めて活用する。
全国で1,330トン、うち長野県は計900トンを対象に調整する。

調整するのは、全国で12月7日までの10日間に出荷が計画されていた量の1割程度である。全農長野県本部によると、長野県内では農家が生食向けに出荷施設へ持ち込んだリンゴのうち、小さかったり形が悪かったりするものを対象とする。計800トンをジュース向けとし、計100トンを一時保管や加工に回す。出荷施設での廃棄処分はない。

現在は長野県の主力「サンふじ」の出荷最盛期で、予定の4~5割を出荷した段階。同本部果実課は
「まだ折り返しの時点で需給調整をするのは痛いが、価格を浮上させるためには市場流通を制限するしかない」
と強調する。

2008年産のりんご価格は、全国で前年産よりも2割の下落である。ことしは台風などの自然災害で昨年より生産量が減る見込みだが、不景気による需要の落ち込みが激しく、さらに価格が低迷している。
農水省生産流通振興課によると、11月中旬の三大都市圏の平均市場価格は1kg当たり前年産より5円低い209円。ここ6年間の平均価格を2割下回り、最低となっている。
りんご専業農家では、夏場の天候不順でりんごは小玉傾向であり、しかも収穫最盛期の出荷調整で、二重の痛手となった。

(信濃毎日 2009/11/29)


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りんご価格安定政策の失敗  
2008年11月長野県議会より

議員の質問
リンゴの価格保障についてお聞きします。今、りんごの主力「ふじ」の最盛期を迎えています。しかし、りんご農家の皆さんからは「資材価格が高騰しているのに、りんごの値が下がってこのままでは年が越せない」と切実な声を寄せられます。
青森県産との競合や景気悪化による消費の落ち込みなどが重なり合って、市場の出荷価格は1キロ80円まで値を下げて、ただ同然、出荷するほど赤字になる事態です。
一方で、肥料・農薬・出荷資材など生産コストは昨年から相次いで値上がりしてダブルパンチです。自然災害は局所的なものですが、今年のりんご価格暴落は生産農家全体を直撃しています。1年間の苦労が報われない、売上から費用を引いたら生活費が残らない深刻な事態に対して、緊急に支援を講じて欲しいと思いますがいかがですか。
果樹王国長野県でありながら、果樹の価格暴落に備えて支える制度はありません。県として価格保障制度を検討すべきではないですか、農政部長にお聞きします。


長野県農政部長答弁
本県産のリンゴの状況につきましては、景気後退等の影響から、市場価格の低迷がございます。また肥料費等の農業資材が高騰しておりまして、農家経営は極めて厳しい状況にあると認識しております。
当面の経営支援対策としては、国が緊急に創設いたしました、肥料費の増加分の7割を助成致します「肥料・燃油高騰対策緊急対策事業」の活用とともに、運転資金の融資要望にたいしましては、「農林漁業セーフティーネット資金」によりまして対応してまいります。さらに恒久的な対策と致しましては、市場競争力の高い品目・品種の改植・わい化栽培への転換等を助成致します果樹経営支援対策と強い園芸産地育成事業などを活用致しまして、収益性の高いリンゴ経営への転換を進めるとともに、生産コストの軽減対策と県産リンゴの需要拡大をすすめ、農家の生産意欲の高揚に努めてまいる所存でございます。
リンゴの価格保障制度につきましては、平成13年度から、6年間国の制度として果樹経営安定対策が実施されましたけれども、品質の劣る果実の出荷が増加致しまして、全体の市場価格の低下を招いたことから、平成18年度をもって廃止されました。
この様な経過を踏まえますと、果実類については、今後新たな価格保障の制度の創設は困難であるというふうに考えております。




松島の世界自然遺産登録は可能か

2009-08-29 | 世界地理
宮城県の松島は、200以上の小島が点在し、実に風光明媚である。塩竃-松島の大型観光客は休日には観光客を、平日には修学旅行客を乗せ、松島の賑わいをさらに賑やかにしている。松島の関連自治体は、世界遺産に登録申請する準備をしている。






しかし、松島観光の目玉「五大堂」付近は、小型観光船の係留のため、岸壁にゴミが大量にたまっている。肝心の五大堂の風景が台無しである。小型観光船には営業の自由があるとして、拡声器で客引きをして批判された時代があった。今度は、五大堂の景観をぶちこわしているが、それも営業の自由か。






本当は松島は、感動し、泣けるほどきれいなのである。その美しい松島を知らないまま観光客はさっさと通り過ぎる。五大堂も古びた祠(ほこら)という程度の記憶しか残らないだろう。
下の写真は、手前が五大堂、後ろが福浦島(ふくらしま)。福浦島への橋はかつては通行料無料であったが、いつからか通行料200円を取るようになった。さらにコスト削減競争の激しい旅行会社は、福浦島への橋を「縁切り橋」と名付け、旅行コースから除外した。多くのツアー客は、福浦島に行くことができない。
福浦島の亜熱帯植物群落が見られる。福浦島から見る松島の景観も、泣けるほど素晴らしい。松尾芭蕉の心境に達すること確実である。






白石市体育館&音楽ホール

2009-06-24 | 世界地理
宮城県白石市の新幹線「しろいし・ざおう」駅前に、ガラス張りの体育館・音楽ホールCUBEができた(1998)。
設計:堀秀人+高橋寛
施工:大林組・奥村組
敷地面積:30756㎡
建築延べ面積:  13047㎡
階数:地上4階
構造:RC+S造
監修:三枝成章

1998年受賞 BCS賞。日本建築士会連合会優秀賞。JCBデザイン賞。労働大臣賞進歩賞など受賞。機能性と芸術性にすぐれた作品である。



田舎の街にはもったいない設計であり、なかなか使う機会がない。たまに演歌ショーがあると、トイレ、トイレと騒ぐ客ばかり。
芸術性が簡単に損なわれても、便所の看板を目立つようにしておけばよいと考えたようである。
ゴミ箱も自販機も、設計者の想像できないような配置になっている。空いたスペースには何かなければ気が収まらない、東北人の貧乏性が露出したのであろうか。



それより、維持管理、特にガラスの外面を拭いたほうがよい。雨水だけでは砂ほこりはなくならない。




岩出山中学校 風の翼

2009-06-19 | 世界地理
宮城県大崎市立岩出山中学校新校舎は1996年3月完成。
地下1階、地上3階。建築面積6557㎡。総工費51億円。
教科教室型校舎(言語系、自然系、生活系、芸術系)。   
設計は山本理顕。

公立中学校は箱形コンクリート建築、学年別フロアという固定観念がある。山本理顕設計の岩出山中学校は鉄骨とコンクリートのむきだしになった、素材の特徴を生かした、斬新なデザインである。
しかも中学校では珍しい教科型校舎である。
「風の翼」の曲線が美しい。




山本理顕は岩出山中学校の設計により、1997年にはBCS賞(建築業協会賞)と東北建築賞を受賞、1998年には毎日芸術賞を受賞した。

多感な中学生が、冷え切った箱形コンクリートの教室で3年を過ごすのは悲しい。一流建築家による、ハイセンスな校舎からは、次代を担う優秀な人材が輩出することは間違いない。

建築デザインを重視したために建築費用50億円は余りに高く、しかも校舎の象徴である「風の翼」はムダ、という岩出山町民(現在は大崎市岩出山)の声は少なくなかった。教員30人、生徒300人には贅沢というのが本音であった。
芸術性よりも実用一点張りにこだわる町民が反発していることが一因かもしれないが、校舎外側には汚れが目立つようになった。

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完成してから10年以上経過したので、外の汚れは当然である。PTAが宮城県名物「イモ煮会」のレクリエーションをかね、大人の知恵と機械を使って外壁の清掃をしたら、建設当時の輝きがよみがえる。そうすれば、生徒はもっと校舎に誇りを持つだろう。

建築デザインの研究者や学生、全国の学校関係者が、わざわざ岩出山まで足を運んで校舎を見ている。岩出山中学校関係者や旧岩出山町民が考えている以上に、「風の翼」は魅力的なのでであろう。
校舎外壁の汚れを除去し、さらに芝生を養生してもらえば、見学者の感動もひとしおだろう。


巣鴨はソーラー商店街

2009-05-07 | 世界地理
「おばあちゃん、おじいちゃんの原宿」は巣鴨。JR巣鴨駅前街の屋根がソーラーパネルである。70店舗の商店に、ソーラーパネル188枚、270mの長さである。総事業費1億7千万円。商店街の電力の10%をまかなうことができる計算である。

巣鴨商店街はおばあちゃんにも、おじいちゃんにも、そして地球にもやさしいまちづくりをめざしている。




ただ、ソーラーパネルの向きが巣鴨商店街の向きで決めたので、半日しか太陽光を受けることができないのが、残念。昼には日陰である。






新庄市のこれから

2008-10-09 | 世界地理
人口4万人の新庄市は「早期健全化基準以上」の自治体として、市の財政支出としては債務返済が最優先される。市単独事業としては、何もできないだろう。市関連の人件費削減、暖房費用節減、除雪回数削減だけでは財政再建にはならない。満足な学校給食もできない状況において、無理な財政再建を急いでも、市民の心は新庄から離れ、機会あれば山形市、仙台市、あるいは首都圏に家族全部で移転したい気持ちになるだろう。
しかし、急ぐべき事は新庄市に人が集まって賑わいを取り戻すことであり、その結果としてカネの集まる自治体とならなくてはならない。
なぜ、新庄に来ないのか。

① 新庄の入り口が汚い。
山形市あるいは大崎市から自動車で行くと、新庄市の入り口で合流する。そこには閉鎖されて幽霊屋敷同然に荒廃した、大型病院と大型商店が放置されてあり、新庄市の第1印象をきわめて、暗いものとしている。観光客ならば、1度目は新庄を通り過ぎ、2度とは行かないだろう。建設者が撤去すべき病院と商店だろう。しかし、撤去するカネもないから倒産したのである。これは新庄市が地元建設業者に、土地をタダで与えることを条件にしてでも、安く、撤去すべき幽霊屋敷である。作業員として地元の失業者を雇い、重機を使用せずにゆっくり解体撤去すべきであろう。
その跡地に、容易に使途が決まらないならば、市民花壇か市民農園にでもしておけば、新庄市の印象は大きく変わるだろう。
新庄の市街地には何かあるような、好印象を与える努力が必要である。






② 三度の食事ができる街づくり
昼飯の食べることのできる店はいくつもある。しかし、夕飯を食べる店がない。自動車利用の多い昨今、飲屋に行かない限り、夕飯を食えない、というのでは、若者が新庄市に定住できない。小規模地方都市では、帰宅して自宅で夕飯を食べるので、夕飯屋が商売として成立しない。
どちらが原因とも結果とも言えないが、若者が自動車を走らせて、夕飯を食べに集まる場所がないのである。

③ 旧市街地再開発の中止
道路をまっすぐにしても、自動車の通り抜ける時間が短縮されるだけで、実効はない。日常的な渋滞のない道路は、そのままにしておく方が、古い住宅と調和して、きれいな街づくりになる。ハイテク産業など要らない。古色蒼然とした、落ち着いた都市のままでよい。

④ ユニバーサルデザインの市街地再開発
高齢化老齢化が進んでいる。しかしこれまでのバリアフリーとしての、老人向けあるいは車いす用の歩道を充実させるのではない。いわば障害を持つ人すべてのための道路建設、公共施設の建設に力を注ぐべきだろう。年金生活者が、新庄市の商店・病院に一人で来て、一人で買い物のできるような町にしていくべきだろう。障害者万人のためのユニバーサルデザインの町づくりを、めざすべきだろう。

⑤大型店に対抗できる商店街
ヨークベニマルもジャスコも、平日は赤字である。週末だけの商売である。
古い商店街は、クルマで週末の大量買いのできない、老人・子供に商売の的を絞るとか、週末には商店街のイベントを増やし、ヨークベニマルもジャスコに客の流れない、大胆な工夫が重要であろう。
例えば、土曜日・日曜日には近郊の農家の協力を得て、野菜を終日安く売り、大型スーパーに対抗する。肉・魚は平日の冷凍品の残りをまとめて安く売る。
賞味期限の切れた加工食品を、それを客に了承してもらって、格安に売る。これは大型スーパーにはできないことである。

⑥新庄駅東の広大な無料駐車場を有料にすべきである。1時間100円、1日で500円程度の低料金を設定すれば、放置車両は消えるし、市の収入の足しにはなるだろう。無料が巡回指導や、放置車両の処分などで高くつく。

⑦必要な施設は、市民有志の寄付を募ればよい。例えば県立新庄病院を市立病院に移管するのであれば、赤字負担の市民有志あるいは全国から赤字負担の寄付を集めたらよい。黒字になれば、寄付した者に配当金を出せばよい。徳州会病院との役割分担などという、カルテルを実践するのもよいと思う。
小学校を建設するのならば、父母から建設費を徴収すればよいが、しかし、これは無理だろう。小学校に市立体育館を寄付金で建設し、それに小学校が使用料金を払う。夜間は大人が有料で使う。つまり、体育館を儲かるようなものとするのである。







新庄デスティネーション

2008-10-08 | 世界地理
JR東日本と宮城県合同の宮城県デスティネーション=キャンペーンが、2008年10月中に限り、行われている。
仙台では、10月1日から七夕を開催、人気を集めている。


destination目的地が本来の意味だが、某予備校調査ではdestinationを「七夕」と勘違いしている大学受験生が51%もいたとか。
さて、「destination新庄」では、
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イベント列車、鉄道マニアは途中下車 

JR東日本の「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」のイベント列車「リゾートみのり」が2008年10月1日、JR陸羽東線小牛田(宮城県美里町)―新庄(山形県新庄市)間を走った。
10月1日午後0時28分、新庄駅に滑り込んだ3両編成104人乗りの列車はガラガラ。弁慶や義経、松尾芭蕉らに扮して、最上駅から乗り込んだ地元関係者を含めても20人足らず。
一番列車を盛大に出迎えようとホームに並んだ最上地域の観光関係者らや地元の民舞グループも肩すかしを食った。
JRによると、鉄道愛好者らで前売り券はほぼ完売、小牛田駅では「みのり」はほぼ満席だったが、途中の鳴子温泉駅(宮城県大崎市)で80人ほどが下車したという。この日午後、小牛田―仙台間で運行される蒸気機関車を一目見ようと、鉄道愛好家らは小牛田に引き返した。終点新庄までは行かなかったのである。
新庄の産直施設や瀬見温泉女将会が用意した200人分の芋煮と山菜おこわ「弁慶めし」は、11分後に到着した山形新幹線の乗客の胃袋に納まった。
「みのり」は12月31日まで小牛田(土、日、祝日は仙台)―新庄間を1日1往復。4日には新庄駅で再度の出迎えイベントと出発式が予定されている。
           (朝日新聞2008.10.2)


臨時季節列車「リゾートみのり」仙台~新庄


新庄の中心市街地とジャスコ

2008-10-07 | 世界地理
2002年11月8日、新庄市郊外といってもJR新庄駅から徒歩10分足らずの距離に、全国展開の大型スーパージャスコ、正確にはマックスバリュ新庄店が開店した。商圏人口28,000人、年商15億円の想定である。従業員96人うちパート87人だから、正社員が9人である。たった9人の生活費のために新庄の商店街は潰れた、という恨み節はあちこちで聞く。


新庄市の小売総額は年600億円である。ジャスコの年商15億円は、ジャスコによる商圏拡大もあるから、既成商店街への影響は小さい、というのがジャスコの言い分である。
しかし、ジャスコの言い分にはウソである。新庄市の600億円とジャスコの15億円は異なる。
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新庄市の600億円は新庄市にとどまり、何回も使われるカネである。洋服屋で使った2万円の中から、洋服屋は八百屋とか菓子屋でカネを使うのである。仕入れ費用は東京に届けられたとしても、残りは新庄市内の商店街でくりかえし、使われるカネである。600億円の小売総額はそのようにして合計されたカネである。もともとは150億円程度のカネなのかもしれない。
一方、ジャスコは87人のパート従業員の人件費8700万円程度を地元に残すだけで、あとはジャスコ本部に吸い上げられてしまう。新庄で回転すべきカネが、ジャスコの次の新店舗投資資金になる。年商15億円は、毎日毎日新庄から消えてるカネの年間合計である。新庄に残れば、いつくもの商店・個人・金融機関などをまわり、100億円以上の役割を果たす15億円である。




新庄市  実質公債比率30%の問題

2008-10-07 | 世界地理
山形新幹線開通
1992.7.1  東京-福島-山形 *1992年は山形国体
1999.12.4  山形-新庄(延伸)開通 
山形-新庄間61km延伸事業は山形県が142億5000万円を山形県外郭団体の山形県観光開発公社(財団法人)に出資した。複数の民間金融機関は山形県観光開発公社に208億5000万円を出資した。
合計351億円が山形-新庄間の延長工事総事業費として、山形県観光開発公社JRから無利子で貸し出された。
JRは当初10年間は支払い猶予、以後10年間で山形県観光開発公社と民間金融機関に返済される。
財団法人山形県観光開発公社は、現在の社団法人山形観光物産協会である。



新庄市の公債の問題


山形新幹線が新庄まで延伸されるので、新庄市は金融機関からの借金でJR新庄駅東口の大改造をはじめた。山形新幹線の開通した1999年が一般公債残高がピークで227億円に達した。上下水道事業を合計すると、1999年の新庄市の全公債残高は387億円になった。
2000年以後は借入額を減らしたので新庄市の財政規模が縮小した。このため、公債比率が高くなった。
実質公債比率は歳入に公債を含まない数値で、これが30%を越えると、財政の危険ラインである。グラフの2008年以降は、財政再建努力目標を描いたものである。
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自治体財政:3市村が破綻状態、新庄市など40市町村は“黄カード”(毎日新聞2008年10月1日)

総務省は2008年9月30日、自治体財政健全化法に基づき全都道府県と市区町村計1857団体の2007年度決算の財政状況をまとめた。北海道夕張市のほか同赤平市、長野県王滝村の2市1村が、同法の財政再生基準を上回って「財政破綻(はたん)」扱いとなり、「財政再生団体」となった。同法が本格実施される2008年度決算で同基準を上回ると国の管理下で再建に取り組むことになる。
青森や福島、大阪、島根など13道府県の40市町村は警告段階に相当し、自主的に再建を進める「早期健全化団体」となった。地方交付税の減収や地域間格差の増大で、厳しい財政運営を強いられる自治体が少なくないことが浮き彫りになった。
早期健全化団体となったのは、山形県新庄市、青森県黒石市、大阪府守口市、高知県安芸市など13市17町10村。主に北海道や関西地方に集中した。
指標ごとでみると、財政規模に対して事業会計、普通会計を含む全体の赤字割合を示す「連結実質赤字比率」で2市が再生団体に、7市2町が健全化団体となった。そのほか普通会計だけで赤字割合をみる「実質赤字比率」で再生、健全化団体がそれぞれ1市、借金返済の割合を示す「実質公債費比率」で再生団体が2市村、健全化団体が31市町村。長期の負債額が財政規模の何倍に相当するかを示す「将来負担比率」で健全化団体が5市町となった。
自治体財政健全化法は各自治体に毎年、前年度の決算から指標を算出して議会への報告・公表を義務付けている。今年度は指標の公表までだが、2009年度からは指標に基づいて実際に再建計画を策定する義務が生じる。

<財政再生団体>
北海道夕張市・赤平市。長野県王滝村
<早期健全化団体>
北海道留萌市・美唄市・三笠市・歌志内市・江差町・積丹町・南幌町・浜頓別町・中頓別町・利尻町・洞爺湖町。 
青森県黒石市・鰺ケ沢町・深浦町・大鰐町・西目屋村・田舎館村。 
山形県新庄市。  
福島県双葉町・泉崎村。  
群馬県嬬恋村。
長野県平谷村・根羽村・泰阜村。  
大阪府泉大津市・守口市・泉佐野市。
兵庫県淡路市・香美町。 
和歌山市。  
鳥取県日野町。  
島根県浜田市・奥出雲町・飯南町・斐川町・西ノ島町。  
高知県安芸市。 
沖縄県座間味村・伊平屋村・伊是名村。






新庄市の財政破綻と米価

2008-10-02 | 世界地理
1970(昭和45)年に総合農政が始まって、いわゆる減反政策が始まった。
1985年の政府買い入れ米価は60kg当たり18,668円、史上最高価格であった。
新庄市の農村地帯では、米収入の増加をもくろんで水田開発が進められた。しかし、1990年以降に水田の造成が完成しても、すでに米価は下がり、赤字経営になった。
生産者米価は政策的に引き下げられ、2003年には13,820円に低下した。
新庄市の米収穫量は5千トン減少し、2万トンになった。米作農家の所得は低下するはずだが、政府は減反奨励金などで所得を補償した。しかし、減反補償金は年々減らされ、新庄市だけではなく、新庄市周辺、山形県内、東北地方でも、米作農家の所得は低下した。農村地帯の商店街の衰退の一因になった。






米作が赤字になるのは、人件費を生産コストに含むからである。家族労働主体であれば、生産コストは下がる。中古の農業機械を近隣で共同購入すれば、さらに生産コストが下がる。米作を、赤字垂れ流しで続ける農家はない。米作は実質的に黒字である。
逆ザヤとは政府が農家から米を高く買い入れて、米国業者に安く売り、政府の食糧管理会計が赤字になっている状態である。

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こんな話を聞いたことがある。どこで聞いたか忘れたが、新庄とは無関係である。こんなこともあるということである。

① 東北の米作農家は飢饉対策として、2年前の米をモミの形で保存している。農家はふだんは2年前の米を食い、客が来た時には去年の米を食い、盆・正月だけは今年の米を食う。
農協から政府米の供出割り当てがきたら、検査用に今年の新米1俵を出すが、残り100俵200俵の供出は2年前の米である。手違いで米蔵に残っていた4、5年前の古米を供出することもある。
都会の消費者は、制度的に米穀店で政府米を買わざるを得ない時期が戦後40年続いた。その結果として、うまい新米など食べたことがないから、2年前の古米を食べても、まずいとは分からないのである。

② 毎年、米の収穫時期に、古米を買い集めるヤミ米ブローカーが農村をトラックで回る。2年前の米、去年の米、今年の新米を、3ランクに分けて買う。古米は農協よりも1割安いが、新米は1割高い。古米でも量的には無制限に買い取ってくれる。
農家とブローカーの庭先取引であり、農協にも税務署にも知られない。農家には50万100万円の大金が、すぐに手に入る。農家は、冠婚葬祭などで大金が必要になった時にも、古米ブローカーを呼んでカネをつくる。

③ 減反政策では、減反対象の水田を、役場の検査員が人目でわかるようにしておかなくてはならなかった。
水田を減反地として放置するより、転作作物を植えると、転作奨励金が入る。水田に、大豆・小麦・そばなどの作物を栽培するのである。しかし、大豆・小麦・そばを植えると、米作以上の労力がかかり、売値も安い。そこで、大豆・小麦・そばなどを水田に植えたら、その後は秋まで放って置く「捨て作り」という手があった。
また、栗の木を植えることも流行した。3年で実をつける大きさになったら切り倒し、また栗の苗木を植える。少量の栗の実など販路はないし、栗の実つまりイガは邪魔物である。実をつける前に成木を苗木に植え換え、転作奨励金をもらう栗栽培が、最も得な時期があった。

④ 郊外の米作農家が、市街地の商店街や団地に、2年前の古米を売り歩く。田舎の人間は新米・古米の味が分かるので、古米を一度売ると、二度とは売れない。そこで、わざわざ遠方の都市に古米を新米と偽って売り歩き、3、4年経って売り主の顔を忘れた頃にまた古米を売りに行くのである。

⑤ 農家には小型混米機がある。精米業者には大型混米機がある。本来の利用目的は、数種類の白米を混合して、米の味をよくするためのもので、「格上混米」といわれた。酒のカクテルみたいなものである。格上混米は、精米業者あるいは米作農家の良心的無料奉仕のようだが、良質高価格米を増量することが目的であり、結果的には無料奉仕ではない。
混米機にはもう一つの役割がある。2年前の古米と去年の古米をブレンドして、去年の古米にすることである。また、去年の米と今年の新米をブレンドしてとして新米をつくることである。安い古米を大量に仕入れ、新米の増量をする。安い古米の混合割合を増やすほど、利幅が大きくなる。2種類3種類の新米カクテルよりも、新米・古米のカクテルの方が儲かる。
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政府が米の生産規制を強行しても、米作農家にはそれなりの対応がある。減反政策では損をした農家は多いが、結構な利益を得た農家も少なくはない。米価の引き下げが地方都市の商業の衰退を招いた原因とは断定できない。米作農家はそれなりの工夫で、それまでの所得水準を維持したのである。
「政策があれば対策がある」との中国のことわざが、日本でも生きている。