日本の風景 世界の風景

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葉たばこの等級審査

2009-11-27 | 貧困の起源
葉たばこ収納価格は専売公社の等級審査で決定された。
前夜、審査官を旅館から料理屋に連れ出し、酒を飲み、多少のカネを渡した。
効果テキメンで、ともに飲み食いした者の葉たばこは1等か2等。
しかし、審査官がクルマで審査当日に来る時代になると、4等5等の捨て値ばかり。
葉たばこ栽培から酪農に、一斉転換が進んだ。



葉たばこは日本専売公社(現在のJT)の完全統制品であった。
契約農家にだけ種子が渡され、栽培途中で抜き打ち検査があった。農家は葉数の増えるたびに、栽培本数と葉数を数え、畑の端に表示しておかなくてはならなかった。
12月~2月の指定日に、葉たばこ全部を専売公社に収納したが、この時の等級審査により、葉たばこ農家の現金収入が大きく変化した。
葉たばこ農家は、葉たばこ耕作組合に加入していた。等級審査時の贈収賄工作は組合総ぐるみとして露見した場合、大事件になり、もみ消しは困難であった。そのため、いくつかの有力農家が、毎年、審査官に金品を送った。
しかし、実は審査官は受け取った金品を、葉たばこ耕作組合あてに返していた。組合幹部がそれを農家には返さず、横取りした例が多かった。噂になっても、証拠の残ることではなかった。

1949年の日本専売公社の設立時から、60年代の葉たばこ耕作組合に疑惑の目が向けられたものだが、政治家-葉たばこ耕作組合-専売公社の結びつきは強固であり、1985年の日本専売公社の民営化まで続いた。
特に1960年代は、葉たばこ農家の収納価格の不明朗な問題、政治家の圧力による葉たばこ農家の増加と生産過剰など、信じたくない話がどこからも聞こえてきた。

松川葉とか東山葉は、キセル(煙管)たばこ煙管たばこ「ききょう」の原料として、葉を密着して切り刻むことができるように、収納直前には一枚一枚の葉を、手でのして、しわを完全になくさなくてはならなかった。早朝から深夜まで、家族総出の単純な、重労働であった。手の指からは指紋も掌紋も消え、葉たばこのヤニが染みこんだ。
たばこ製造工程で切り刻んでしまうのに、葉一枚ずつをのすことを強制し、しかも、のし具合を等級審査基準とする、専売公社の姿勢に批判が強まった。
1979年、専売公社は煙管たばこ「ききょう」の製造販売をやめ、中国からの輸入販売に変更した。しかし、中国産煙管たばこは「ききょう」の香りと味の良さには及ばなかった。
1985年に「ききょう」の後継たばことして「小粋(こいき」の製造販売を開始した。「小粋」用の松川種・だるま種などの栽培農家には機械化を支援したり、等級間の価格格差を縮小したりした。民営化とともに、栽培農家への高圧的姿勢は消えた。

たばこ1箱300円を500円に値上げするらしい。2兆円の増税となる。たばこ購入者が減ると、2兆円の税収増とはならない。
たばこの需要が減ると、葉たばこ生産農家が、JTから栽培契約の打ち切りか、購入価格の引き下げを要求されると、政府から葉たばこ栽培農家に補償金が支払われることになるだろう。

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昭和57年度 日本専売公社検査結果(会計検査院)

結論:国内産葉たばこについて過剰在庫386,925t(昭和57年度末)の解消

日本専売公社における国内産葉たばこの在庫量は、標準在庫量24箇月分に対して37箇月分となっていて13箇月分過剰になっており、このため年間に固定することとなる資金を計算すると約2840億円となる。 そして、在庫量の中には品質の劣っているものが多量に含まれている。
日本専売公社では、国内産葉たばこの過剰在庫の解消を図るため、廃減作による生産調整を行うこととしたが期待どおりの進展をみせず、また、品質の劣っている葉たばこについてまで買入れを余儀なくされているため原料の効率的な使用を妨げる要因となっている。
このような事態は、日本専売公社の資金を固定するばかりでなく多額の経費を負担することとなるので、過剰在庫を解消すべく各般の対策を講ずる要がある。
過剰在庫の問題に関し、昭和58年11月29日、日本専売公社総裁に対して意見を表示した。その全文は以下のとおりである。


国内産葉たばこの在庫量について
貴公社では、製造たばこの主要原料である国内産葉たばこについては、たばこ専売法(昭和24年法律第111号)の規定により、貴公社の許可を受けた耕作者から、廃棄するものを除き、収穫したすべての葉たばこを収納することとなっているが、その在庫量は昭和57年度末において使用量の37箇月分に当たる386,925tとなっている。
しかして、貴公社では葉たばこが原料として使用されるまでに要する2年間程度の熟成期間等を考慮してその標準在庫量を24箇月分と定めているが、52年度末における国内産葉たばこの在庫量がこれを上回る30箇月分となっていたことなどから、昭和52年度決算検査報告において特に掲記を要すると認めた事項として掲記したところであり、これに対して、貴公社においては、過剰在庫の解消策として葉たばこの生産調整等を図ってきているほか、葉たばこの品質向上を図るため各種の措置を実施してきているが、その後の生産調整等の実施状況について調査したところ、次のような事態が見受けられた。

1 生産調整について
貴公社では、国内産葉たばこの過剰在庫の解消を図るため、その基本的手段として極力廃減作による生産調整を行うこととしたが、たばこ耕作農家に対する配慮等から急激な対策を採り得ないまま、53年から56年までの間に5,530haの自然廃減作による生産調整を行うにとどまり、その結果、耕作面積は64,550haら59,020haになっていた。
57年においては、生産調整を更に促進するため、廃減作するたばこ耕作者43,027名に対し、1a当たり15,000円の臨時葉たばこ生産調整奨励金72億円(交付対象面積4,799ha)を交付するなどして4,943haの廃減作を行い、耕作面積を54,077haとした。しかし、この面積では年間の葉たばこ使用量に見合った生産量となるにとどまり、過剰在庫の減少には寄与しないものとなっている。 しかも、この面積は59年まで固定させることになっているため、この間、自然廃減作が生じてもその分を他の耕作者に増反させることとしており、過剰在庫の解消のための生産調整が期待できない状況となっている。

2 用途区分葉について
貴公社では、耕作者が収穫した葉たばこを、品質等級にかかわりなく、使用不能と判断したもの以外は全量買い入れることになっている。この中には、品質の特に劣ったもの(用途区分葉)が含まれている。
製造たばこの高級化、多様化の傾向が強まってきているため、用途区分葉は、使用することに制約がある。それにもかかわらず、正常葉として買い入れている。用途区分葉は、その使用量を上回る収納量になって、52年度末在庫量の16,980t、57年度末においては105,576t、つまり国内産葉たばこ在庫量の27%を占めるる。
用途区区分葉の在庫量は58年度の使用計画からは、40箇月分の在庫が生じる。このような事態により、貴公社の葉たばこ全部の57年度末在庫量は386,925tで、標準在庫量24箇月分を13箇月分上回り、37箇月分となっている。552年度に比べ過剰在庫の事態は依然として解消されず、。むしろ増える状況となっている。さらに用途区分葉も、毎年増加している状況である。
葉たばこ全部の過剰在庫となっている分は約2840億円相等であり、また、保管寄託料相当額は約30億円と多額に上っている。
このような事態を生じているのは、たばこ耕作農家の経営に与える影響を考慮して積極的な生産調整を講じなかったこと、用途区分葉の発生の抑制が十分でなかったこと、製造たばこの輸出についての努力が十分でなかったことなどによるものである。
ついては、製造たばこの売行きの停滞や、たばこの喫味上外国産葉たばこをある程度使用せざるを得ないことなど種々の困難な事情はあるにしても、過剰在庫を解消すべく各般の対策を講ずる要があると認められる。

会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。






ブランド牛の限界

2009-11-26 | 貧困の起源
肉牛1頭を2年肥育して、300万~500万円で売れた。個別出荷で儲け、産地のブランド化を怠った。
BSE問題以降、非ブランド肉牛は1頭100万円以下の安値安定、1頭200万円以上の赤字となった。
肉牛は畑の堆肥つくりのため1頭だけ残し、あとは投げ売り。



高級ブランド牛肉の例
牛肉生産農家は単独では肉牛給量が不足し、商品的流通は不可能である。ブランド牛肉の指定を受けることはできない。
生産者組合をつくると、ブランド牛肉としての生産出荷が簡単である。組合規約には肥育方法が細かに書いてあるが、どんな肥育をしても、そしてブランド牛肉でなくても、おいしい部位の肉はおいしい。

三重県の高級ブランド牛肉(松阪周辺がブランド牛生産地域)
松阪牛   黒毛和牛 松阪牛協会
伊賀牛   黒毛和牛 伊賀牛生産協議会
鈴鹿山麓牛 黒毛和牛 一本松畜産組合
北伊勢和牛 黒毛和牛 宇賀新田肉牛組合

岩手県の高級ブランド牛肉(岩手県のほぼ全域がブランド牛生産地)
前沢牛    黒毛和牛  前沢牛協会
岩泉短角牛  日本短角牛 株式会社岩泉産業開発
山形村短角牛 日本短角牛 久慈農協短角牛肥育部会
江刺牛    黒毛和牛  江刺農協(奥州市)
岩手奥州牛  黒毛和牛  いわて奥州牛協会
キロサ牧場牛 交雑種   キロサ肉畜生産センター(岩手町)
いわて牛   黒毛和牛  いわて牛普及推進協議会
岩手短角和牛 日本短角牛 いわて牛普及推進協議会
岩手しわ牛  黒毛和牛  岩手中央農業協同組合肉牛専門部会
岩手東和牛  黒毛和牛  花巻農協東和支部
岩手北上牛  黒毛和牛  花巻農協

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肉牛肥育コストはなぜ高い
仔牛1頭の価格100万円以上
松阪牛や近江牛のような高級ブランド牛肉を肥育する農家は、仔牛産地の繁殖牛専門農家から、生後1年目の血統の優れた仔牛を買い入れる。仔牛の価格は100万円~200万円。他のブランド牛肉産地の、仔牛仕入れ値は30万円~50万円。

飼料(えさ)は1年1頭50万円以上
高級ブランド牛肉の飼料(えさ)は、生育段階で配合が微妙に変わる。各生産農家の秘密でもある。量的にも季節的にも、日本国内産の大豆・とうもろこし・牧草などは不適当であり、アメリカなどから輸入した飼料を与える。2年の肥育で100万円はかかる。労賃も含めると、1頭500万円が最低希望価格になる。
低価格ブランド牛肉は、仔牛30~50万円。飼料は価格第1に選び、自家製の飼料も与えるので、2年の肥育で50万円。1頭100万円が赤字・黒字の分岐点である。労賃を入れると、1頭200万円が最低希望価格。

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ジャスコグループのオーストラリア輸入牛肉
イオン(株) 2004年1月8日


「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」緊急大放出!!
これからも、安心でおいしい牛肉をお届けしてまいります

イオン株式会社は、タスマニア島(オーストラリア)のイオン直営牧場より牛肉を緊急輸入し、1月10日(土)より7日間、「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」拡販キャンペーンを実施いたしますのでご案内申し上げます。

当社は、米国でBSE感染牛が見つかったことを受け、国内産牛肉やプライベートブランド(PB)「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」の販売に力を入れてまいりましたが、米国産牛肉の輸入停止措置に伴う牛肉の供給や価格に対するお客さまのご不安を少しでも解消し、「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」の品質とおいしさをより多くのお客さまに知っていただこうと、今回、通常の2倍にあたる100トンを緊急輸入し、これまでと変わらないお値打ち価格にて販売してまいります。

オーストラリアのタスマニア島にあるイオン直営牧場では、成長ホルモン剤・抗生物質および肉骨粉・遺伝子組換え飼料を一切使用せずに肉牛を肥育し、オーストラリア・タスマニア州政府がそれを証明しています。また「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」は、自然の穀物を与え、通常の輸入牛肉の約1.5倍にあたる200日間以上という長期穀物肥育を行い、柔らかい肉質とおいしさを追求した商品です。その品種は、日本人好みの霜降り牛になりやすいブラックアンガス種の血統を受け継いでいます。

当社は、イオン直営牧場内での各工程の安全管理と品質管理について、国際レベルの自主基準を設定し遵守することで、「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」の素牛農家とイオン直営牧場を対象に、このほど第三者認証を取得いたしました。この取り組みは、2002年6月より導入している「SQF2000」という第三者認証システムを用い、安全と品質が確保されていることを、第三者機関に認証いただいたものです。

なお、当社は、イオンの自主基準に基づき、米国産牛肉の販売、およびPB「トップバリュ」における牛由来成分の使用を見合わせております。また、輸入牛肉のセーフガードが発動された昨年8月以降も、「トップバリュ グリーンアイ タスマニアビーフ」の店頭価格を据え置いております。当社は、今後もお客さまに、安心でおいしい牛肉をお届けしてまいります。

   記

1. 実施期間 2004年1月10日(土)から1月16日(金)
2. 実施店舗 イオン(株)直営「ジャスコ」「マックスバリュ」等331店舗
3. 取扱い商品例
   ヒレステーキ用 100g  398円
   ロースステーキ用 100g 398円
   ももひとくちステーキ用 100g 248円
   ももかた切りおとし 100g 198円
4. 売上目標 2億円

出稼ぎの終わり

2009-11-26 | 貧困の起源
20世紀の出稼ぎ労働者は、21世紀には期間工と呼ばれる。
2008年の金融危機が「世界のトヨタ」を襲撃、会社は期間工を真っ先にクビにした。
自動車産業のクビ切りが急であり、次の職場がない。
寮も追い出され、田舎に帰らなくてはならないが、農家の主人・跡取りはまだまし。
2男3男になると親元に帰省しても、完全な邪魔物扱いである。家を飛び出て、次は大都会のホームレスである。

 
     (金ヶ崎。トヨタ組立工場)


失業保険法(1947年制定)が生きていた時代
半年間出稼ぎに行き、残り半年を失業保険金で生活のできた時代である。
半年を都会の自動車工場や土木建築現場の出稼ぎに行き、残り半年は故郷に戻って失業保険金で生活することができた。厳密には、故郷で野良仕事をすることは失業状態ではないので、失業保険を受給する資格はないのだが、誰もそんな違法状態をとがめる者はいない。
農業の赤字を、出稼ぎと失業保険金で補填するのである。出稼ぎ農家は、みかけ上、裕福な生活ができた。
耕耘機、田植機、稲刈り機のような農機具を買い、さらにTV、冷蔵庫、洗濯機も買うことができた。さらにはハワイに優雅な旅行を楽しむ出稼ぎ家族もいた。
出稼ぎで成り立つ農業とは、経済学的には破綻した産業である。そして、家庭の破綻に至る出稼ぎ農家も少なくはなかった。

雇用保険法(1974年制定)の時代
6か月以上出稼ぎを続けないと、失業保険金をもらうことができなかった。
農繁期に農業、農閑期に出稼ぎという生活パターンは成り立たなくなった。
農繁期の、それも非常に忙しい時だけ農村に戻り、1年の大半は出稼ぎ、という通年出稼ぎが多くなり、農村社会には老人子どもだけが残されて、農村社会は崩壊した。
農村社会再建のため、出稼ぎ者には「出稼ぎ手帳」が交付された。通年出稼ぎをせず、半年の出稼ぎをくり返す者に交付された。出稼ぎの終わった時点で、失業保険は支給されないが、一時金として50日分の「短期雇用特例特例被保険者特例一時金」を支給される。半年間、1日1万円の出稼ぎをしていれば、50万円を手にできるのである。つまり、6か月の出稼ぎで、8か月の賃金を得るシステムである。
しかし、失業保険法時代のように、6か月の出稼ぎで12か月の賃金を得る制度と比較すると、法的には合理的になったとしても、明らかに出稼ぎ労働者いじめである。

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日本の農業政策の基本は、文字通り「農業基本法」(1961)にある。法律そのものは変更・廃止されたが、その基本は生きている。
出稼ぎあるいは兼業に依存する小規模農業をやめ、アメリカ型の大規模専業農家による農業への転換である。
出稼ぎで農家の生計が成り立つのは、産業としての農業ではない。そんな農業は盆栽や市民農園レベルの、趣味の農業なのである。

政策的に農業を保護するのであれば、かつてのEUのように、農業を環境保護の手段と位置づけ、農家には環境保護費用を支出する以外はないであろう。
農業生産者の組織化は人民公社のような、生産力低下につながるであろう。
法人の農業進出は、利益の最大になる農業のみに特化し、農業の多様性は失われるであろう。
農業を自立させるのであれば、かつての食糧管理制度のような、農産物の高価格維持政策による、農家の所得保障も考えられる。しかし、食糧管理特別会計の再現など、財政難の政府ではできない。

出稼ぎ(期間工)は月収30万円の時代から、20万円の時代になっている。
10万円の経費節減は、1千人の出稼ぎ労働者を使う工場では年間120億円の人件費の節減になる。
さらに、本社・地方の営業正社員を呼び集めて、出稼ぎ労働者の単純労働をさせる具体的計画が、どの大企業でも進行している。
給料分を稼げない営業マンの、一方通行の転勤がすぐ目前にせまっている。
農業労働者の「出稼ぎ」という労働形態は、消滅寸前である。



大根の有機栽培農業

2009-11-25 | 貧困の起源
農村後継者有志が有機農業組合を結成、大根の有機栽培を始めた。
無肥料・無農薬の有機栽培では、長さ20cmの奇形大根ばかり。当然、全く売れなかった。
肥料・農薬を使っても「有機栽培」であると、組合を解散してから知らされた。




有機農産物の日本農林規格(平成12年制定。平成21年最終改正)

有機農産物の定義(第2条)
(1)農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用した圃場において生産すること。
(2)採取場において、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取すること。


有機農産物に使用禁止にならない肥料・農薬など(第3条。別表1、別表2)

別表1(使用できる肥料及び土壌改良資材。一部省略)
植物及びその残渣由来の資材
発酵、乾燥または焼成した排泄物由来の資材
食品工場及び繊維工場からの農畜産物由来の資材(化学的処理を行わない資材)
屠畜場または水産加工場からの動物性産品由来の資材
発酵した食品廃棄物由来の資材
バーク堆肥
グアノ
乾燥藻およびその粉末
草木灰(天然物質に由来し、化学的処理を行わない資材)
炭酸カルシウム
塩化カリ
硫酸カリ
塩化ナトリウム
食酢
乳酸

別表2(使用できる農薬。一部省略)
除虫菊乳剤(除虫菊抽出のピレトリン乳剤も可)
なたね乳化剤
マシン油
澱粉水和剤
脂肪酸グリセリド乳剤
硫黄燻煙剤
水和硫黄剤
石灰硫黄合剤
シイタケ菌糸体抽出物液剤
炭酸水素ナトリウム水溶液(重曹炭酸水素ナトリウム・銅水和剤も可)
硫酸銅(ボルドー剤調整用に限る)
生石灰(ボルドー剤調整用に限る)
天敵生物農薬性フェロモン剤
クロレラ抽出物液剤
ワックス水和剤
食酢
炭酸水素カリウム水溶液

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野菜は収穫時期が全国ほぼ同一だから、出荷量が増えると、価格が暴落する。主産地が台風に襲われ、収穫業が激減しない限り、野菜は価格が暴落することは宿命である。
有機栽培のダイコンも、市場流通外であっても、値下がりする。無肥料・無農薬の本格的有機栽培の野菜は、ダイコンの形・色・大きさなど、外見が悪く、さらに値下がりする。
本当の有機ダイコンを安定的に出荷することは、非常に困難である。有機農業に成功した農業グループは、日本農業大賞や朝日農業賞をもらっても、数年後には消滅しているのが現実である。
次は数年前の新聞記事だが、今でもくり返される話。
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大根1万トンを出荷制限

農林水産省は2006年10月21日、ダイコンの市場流通量が増加し、卸売価格が下落しているため、需給調整として東北、関東、近畿、九州の産地で計11,605トンを処分すると発表した。
好天で生育が進み出荷量が集中しているほか、気温が高めで推移し、鍋物などの需要が低迷していることが安値の原因とみている。さらに、11月下旬には茨城県でハクサイを8830トン、千葉、熊本、青森、福島、山口、兵庫の各県でダイコンを計2775トン処分し、出荷量を制限する。

東京都中央卸売市場の2006年10月20日の卸売価格は、ハクサイが1kg当たり29円で、平年(最近5年間の11月の平均)と比べ約37%安、ダイコンは42円と約41%安だった。8800トンのハクサイの処分を決めた全国農業協同組合連合会(全農)茨城県本部では、
「適度な価格で安定供給していくためのやむを得ない措置。価格浮揚につながってほしい」
と話している。なお需給調整を実施した農家には、交付金が支払われる。

(四国新聞 2006/11/21)


りんごの高級品指向

2009-11-24 | 貧困の起源
高級りんご「ふじ」の小売価格が暴落、1個100円。りんご農家は赤字。
収穫しても損だから放置して出稼ぎに行くが、りんご農園は荒廃。




りんごの消毒(生産コストのうちで農薬経費が10%以上を占め、トップ)

3月
  マシン油乳剤   トップジンM水和剤   石灰硫黄合剤
4月
  ハマキムシ防除剤   スポットサイド水和剤
5月 
  バロックフロアブル   サンスクリット水和剤   バイカルティ
  石灰硫黄合剤     マラトン乳剤      ベルクートフロアブル  
  ダントツ水溶剤     ダイアジノン水和剤
6月 
  炭酸カルシウム水和剤  有機銅剤
7月 
  ピレスロイド剤      有機銅剤  アリエッティC水和剤
8月 
  ストッポール液剤(落果防止剤) ダーズバン水和剤
9月 
  ファイブスター顆粒水和剤

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りんごの小売価格安値
1個の小売価格200円以上を想定し、りんごの高級化が進められてきた。
しかし、生産過剰に陥り、激しい産地間競争、産地内ではりんご農家間の安売り競争が展開されている。日本のデフレそのものである。




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りんご価格低迷で出荷調整 長野・青森など6県   

りんごの価格が不景気による消費者の買い控えで低迷し、長野県農協グループは2009年11月28日、市場を通して生食用に販売するリンゴの出荷調整を始める。
青森県など全国の主要産地5県の農協と協力する仕組みを初めて活用する。
全国で1,330トン、うち長野県は計900トンを対象に調整する。

調整するのは、全国で12月7日までの10日間に出荷が計画されていた量の1割程度である。全農長野県本部によると、長野県内では農家が生食向けに出荷施設へ持ち込んだリンゴのうち、小さかったり形が悪かったりするものを対象とする。計800トンをジュース向けとし、計100トンを一時保管や加工に回す。出荷施設での廃棄処分はない。

現在は長野県の主力「サンふじ」の出荷最盛期で、予定の4~5割を出荷した段階。同本部果実課は
「まだ折り返しの時点で需給調整をするのは痛いが、価格を浮上させるためには市場流通を制限するしかない」
と強調する。

2008年産のりんご価格は、全国で前年産よりも2割の下落である。ことしは台風などの自然災害で昨年より生産量が減る見込みだが、不景気による需要の落ち込みが激しく、さらに価格が低迷している。
農水省生産流通振興課によると、11月中旬の三大都市圏の平均市場価格は1kg当たり前年産より5円低い209円。ここ6年間の平均価格を2割下回り、最低となっている。
りんご専業農家では、夏場の天候不順でりんごは小玉傾向であり、しかも収穫最盛期の出荷調整で、二重の痛手となった。

(信濃毎日 2009/11/29)


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りんご価格安定政策の失敗  
2008年11月長野県議会より

議員の質問
リンゴの価格保障についてお聞きします。今、りんごの主力「ふじ」の最盛期を迎えています。しかし、りんご農家の皆さんからは「資材価格が高騰しているのに、りんごの値が下がってこのままでは年が越せない」と切実な声を寄せられます。
青森県産との競合や景気悪化による消費の落ち込みなどが重なり合って、市場の出荷価格は1キロ80円まで値を下げて、ただ同然、出荷するほど赤字になる事態です。
一方で、肥料・農薬・出荷資材など生産コストは昨年から相次いで値上がりしてダブルパンチです。自然災害は局所的なものですが、今年のりんご価格暴落は生産農家全体を直撃しています。1年間の苦労が報われない、売上から費用を引いたら生活費が残らない深刻な事態に対して、緊急に支援を講じて欲しいと思いますがいかがですか。
果樹王国長野県でありながら、果樹の価格暴落に備えて支える制度はありません。県として価格保障制度を検討すべきではないですか、農政部長にお聞きします。


長野県農政部長答弁
本県産のリンゴの状況につきましては、景気後退等の影響から、市場価格の低迷がございます。また肥料費等の農業資材が高騰しておりまして、農家経営は極めて厳しい状況にあると認識しております。
当面の経営支援対策としては、国が緊急に創設いたしました、肥料費の増加分の7割を助成致します「肥料・燃油高騰対策緊急対策事業」の活用とともに、運転資金の融資要望にたいしましては、「農林漁業セーフティーネット資金」によりまして対応してまいります。さらに恒久的な対策と致しましては、市場競争力の高い品目・品種の改植・わい化栽培への転換等を助成致します果樹経営支援対策と強い園芸産地育成事業などを活用致しまして、収益性の高いリンゴ経営への転換を進めるとともに、生産コストの軽減対策と県産リンゴの需要拡大をすすめ、農家の生産意欲の高揚に努めてまいる所存でございます。
リンゴの価格保障制度につきましては、平成13年度から、6年間国の制度として果樹経営安定対策が実施されましたけれども、品質の劣る果実の出荷が増加致しまして、全体の市場価格の低下を招いたことから、平成18年度をもって廃止されました。
この様な経過を踏まえますと、果実類については、今後新たな価格保障の制度の創設は困難であるというふうに考えております。