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葉たばこの等級審査

2009-11-27 | 貧困の起源
葉たばこ収納価格は専売公社の等級審査で決定された。
前夜、審査官を旅館から料理屋に連れ出し、酒を飲み、多少のカネを渡した。
効果テキメンで、ともに飲み食いした者の葉たばこは1等か2等。
しかし、審査官がクルマで審査当日に来る時代になると、4等5等の捨て値ばかり。
葉たばこ栽培から酪農に、一斉転換が進んだ。



葉たばこは日本専売公社(現在のJT)の完全統制品であった。
契約農家にだけ種子が渡され、栽培途中で抜き打ち検査があった。農家は葉数の増えるたびに、栽培本数と葉数を数え、畑の端に表示しておかなくてはならなかった。
12月~2月の指定日に、葉たばこ全部を専売公社に収納したが、この時の等級審査により、葉たばこ農家の現金収入が大きく変化した。
葉たばこ農家は、葉たばこ耕作組合に加入していた。等級審査時の贈収賄工作は組合総ぐるみとして露見した場合、大事件になり、もみ消しは困難であった。そのため、いくつかの有力農家が、毎年、審査官に金品を送った。
しかし、実は審査官は受け取った金品を、葉たばこ耕作組合あてに返していた。組合幹部がそれを農家には返さず、横取りした例が多かった。噂になっても、証拠の残ることではなかった。

1949年の日本専売公社の設立時から、60年代の葉たばこ耕作組合に疑惑の目が向けられたものだが、政治家-葉たばこ耕作組合-専売公社の結びつきは強固であり、1985年の日本専売公社の民営化まで続いた。
特に1960年代は、葉たばこ農家の収納価格の不明朗な問題、政治家の圧力による葉たばこ農家の増加と生産過剰など、信じたくない話がどこからも聞こえてきた。

松川葉とか東山葉は、キセル(煙管)たばこ煙管たばこ「ききょう」の原料として、葉を密着して切り刻むことができるように、収納直前には一枚一枚の葉を、手でのして、しわを完全になくさなくてはならなかった。早朝から深夜まで、家族総出の単純な、重労働であった。手の指からは指紋も掌紋も消え、葉たばこのヤニが染みこんだ。
たばこ製造工程で切り刻んでしまうのに、葉一枚ずつをのすことを強制し、しかも、のし具合を等級審査基準とする、専売公社の姿勢に批判が強まった。
1979年、専売公社は煙管たばこ「ききょう」の製造販売をやめ、中国からの輸入販売に変更した。しかし、中国産煙管たばこは「ききょう」の香りと味の良さには及ばなかった。
1985年に「ききょう」の後継たばことして「小粋(こいき」の製造販売を開始した。「小粋」用の松川種・だるま種などの栽培農家には機械化を支援したり、等級間の価格格差を縮小したりした。民営化とともに、栽培農家への高圧的姿勢は消えた。

たばこ1箱300円を500円に値上げするらしい。2兆円の増税となる。たばこ購入者が減ると、2兆円の税収増とはならない。
たばこの需要が減ると、葉たばこ生産農家が、JTから栽培契約の打ち切りか、購入価格の引き下げを要求されると、政府から葉たばこ栽培農家に補償金が支払われることになるだろう。

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昭和57年度 日本専売公社検査結果(会計検査院)

結論:国内産葉たばこについて過剰在庫386,925t(昭和57年度末)の解消

日本専売公社における国内産葉たばこの在庫量は、標準在庫量24箇月分に対して37箇月分となっていて13箇月分過剰になっており、このため年間に固定することとなる資金を計算すると約2840億円となる。 そして、在庫量の中には品質の劣っているものが多量に含まれている。
日本専売公社では、国内産葉たばこの過剰在庫の解消を図るため、廃減作による生産調整を行うこととしたが期待どおりの進展をみせず、また、品質の劣っている葉たばこについてまで買入れを余儀なくされているため原料の効率的な使用を妨げる要因となっている。
このような事態は、日本専売公社の資金を固定するばかりでなく多額の経費を負担することとなるので、過剰在庫を解消すべく各般の対策を講ずる要がある。
過剰在庫の問題に関し、昭和58年11月29日、日本専売公社総裁に対して意見を表示した。その全文は以下のとおりである。


国内産葉たばこの在庫量について
貴公社では、製造たばこの主要原料である国内産葉たばこについては、たばこ専売法(昭和24年法律第111号)の規定により、貴公社の許可を受けた耕作者から、廃棄するものを除き、収穫したすべての葉たばこを収納することとなっているが、その在庫量は昭和57年度末において使用量の37箇月分に当たる386,925tとなっている。
しかして、貴公社では葉たばこが原料として使用されるまでに要する2年間程度の熟成期間等を考慮してその標準在庫量を24箇月分と定めているが、52年度末における国内産葉たばこの在庫量がこれを上回る30箇月分となっていたことなどから、昭和52年度決算検査報告において特に掲記を要すると認めた事項として掲記したところであり、これに対して、貴公社においては、過剰在庫の解消策として葉たばこの生産調整等を図ってきているほか、葉たばこの品質向上を図るため各種の措置を実施してきているが、その後の生産調整等の実施状況について調査したところ、次のような事態が見受けられた。

1 生産調整について
貴公社では、国内産葉たばこの過剰在庫の解消を図るため、その基本的手段として極力廃減作による生産調整を行うこととしたが、たばこ耕作農家に対する配慮等から急激な対策を採り得ないまま、53年から56年までの間に5,530haの自然廃減作による生産調整を行うにとどまり、その結果、耕作面積は64,550haら59,020haになっていた。
57年においては、生産調整を更に促進するため、廃減作するたばこ耕作者43,027名に対し、1a当たり15,000円の臨時葉たばこ生産調整奨励金72億円(交付対象面積4,799ha)を交付するなどして4,943haの廃減作を行い、耕作面積を54,077haとした。しかし、この面積では年間の葉たばこ使用量に見合った生産量となるにとどまり、過剰在庫の減少には寄与しないものとなっている。 しかも、この面積は59年まで固定させることになっているため、この間、自然廃減作が生じてもその分を他の耕作者に増反させることとしており、過剰在庫の解消のための生産調整が期待できない状況となっている。

2 用途区分葉について
貴公社では、耕作者が収穫した葉たばこを、品質等級にかかわりなく、使用不能と判断したもの以外は全量買い入れることになっている。この中には、品質の特に劣ったもの(用途区分葉)が含まれている。
製造たばこの高級化、多様化の傾向が強まってきているため、用途区分葉は、使用することに制約がある。それにもかかわらず、正常葉として買い入れている。用途区分葉は、その使用量を上回る収納量になって、52年度末在庫量の16,980t、57年度末においては105,576t、つまり国内産葉たばこ在庫量の27%を占めるる。
用途区区分葉の在庫量は58年度の使用計画からは、40箇月分の在庫が生じる。このような事態により、貴公社の葉たばこ全部の57年度末在庫量は386,925tで、標準在庫量24箇月分を13箇月分上回り、37箇月分となっている。552年度に比べ過剰在庫の事態は依然として解消されず、。むしろ増える状況となっている。さらに用途区分葉も、毎年増加している状況である。
葉たばこ全部の過剰在庫となっている分は約2840億円相等であり、また、保管寄託料相当額は約30億円と多額に上っている。
このような事態を生じているのは、たばこ耕作農家の経営に与える影響を考慮して積極的な生産調整を講じなかったこと、用途区分葉の発生の抑制が十分でなかったこと、製造たばこの輸出についての努力が十分でなかったことなどによるものである。
ついては、製造たばこの売行きの停滞や、たばこの喫味上外国産葉たばこをある程度使用せざるを得ないことなど種々の困難な事情はあるにしても、過剰在庫を解消すべく各般の対策を講ずる要があると認められる。

会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。






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