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野村克也著「巨人軍論」(角川oneテーマ21)

2006-08-04 | 世界地理
パリーグの断トツのビリ、東北楽天イーグルズの名将、野村克也の巨人軍論。
なぜ楽天と巨人が弱いのか、よくわかる。
楽天は野球を知らずにプロの世界で戦ってきたベテラン集団。
野球の本質をもう一度考え直さなくては、楽天は勝てない。
巨人がなぜ勝てないのか。
楽天のベテラン選手の意識と、巨人の選手・監督の意識が同じである。
楽天同様、巨人も勝つまでには、今後、長い時間がかかる。

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私(野村)は、「精神野球」が嫌いである。
すなわち「体力、知力、気力」のうち、気力だけを重視する野球が嫌いである。気力などというものは、プロである以上、常に持っていて当然。気力を問題視しなけらばならないようでは、プロ意識が欠如しているというしかない。ファンに喜んでもらうことで生活しているわれわれは、いわば「見せ物」であるから、そんな低次元の「商品」を提供するわけにはいかないのである。いやしくもプロであるならば、気力に頼るなどということは恥であると認識しろといいたい。

現在では各チームが積極的に最新の情報やデータを取り入れ、選手の気力や能力だけに頼らない科学的な野球を志向してしている。その中にあって、巨人だけが10年も20年も前の能力優先の「精神野球」をいまだにやっている。「ベストを尽くせ」「何が何でも抑えろ」「気合いで打て」と気力だけで勝とうとしている。
そのいい例が清原である。彼はどう考えても親からもらった天性で野球をやっているとしか思えない。清原クラスの打者に対して、ピンチの場面でストレート勝負を挑む投手などいない。ストレートを見せ球に使いながら変化球で勝負するのがセオリーである。にもかかわらず、彼はいつでもストレートを待っている。それで変化球で攻められて三振することが多い。
まだ記憶に新しいことだが、2005年のシーズンでこんなことがあった。10対2と阪神がリードして迎えた7回二死満塁で、清原に打席が回った。ピッチャーは藤川球児である。ツー・スリーとなって、藤川の投じたのはフォークボール。空振り三振に終わった清原は、藤川に向かって怒鳴った。
「まっすぐ投げてこんかい!チンチンついてんのかあ!」
私には、清原がプロとしての「力対力」の勝負を、もっといえば「男らしさ」を勘違いしているとしか思えない。相手もプロであり、それで飯を食っているのであり、打たれるわけにはいかない。そのためには体力、気力、知力のすべてを使って勝負する。それが本当の「力対力」なのであり、「男らしさ」なのである。変化球で勝負した藤川を卑怯者とはいえない。

私は、技術だけで勝負して凡退してきた選手に対しては「何を考えているんだ!」と厳しく叱るようにしている。天性で野球をできたのは長嶋だけである。
かつての黄金時代の巨人なら、清原の態度を許さなかっただろう。それを黙って見過ごすばかりか、同調するムードがチーム内に感じられる。監督・コーチは、何を考えているのだろう。
プロは、見える能力プラス見えない能力を高いレベルで兼ね備えている者のことである。


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巨人が川上、藤田のようなすぐれたリーダーにいた時は、常勝巨人軍といわれた。
今の楽天の姿が、近未来の巨人の姿である。
野球を知らずに、野球をする巨人軍の選手の未来が見える。