Anteeksi.

すみません、ちょっといいですか。フィンランド留学の見聞録。

ライプツィヒ

2009-12-30 | 東ドイツの旅
ヘルシンキから1時間45分。ドイツの首都、ベルリン到着。
空港からバスで中央駅へ向かう間、車窓から見る風景の第一印象は、なんだか地味な街。曇り空のせいもあるかも。

この旅の最初の目的地は、ライプツィヒ。ベルリン中央駅から、すぐさまICEに乗り込み、一時間あまりで到着。

今年は、ベルリンの壁崩壊20周年。ライプツィヒは、この冷戦の終結を世界に印象づけた出来事の発端となった地でもある。
この街でもひと際目立つニコライ教会。この教会での定例集会が、旧東ドイツの民主化要求の市民デモへと発展、当初は武力鎮圧されたものの、最終的には、軍隊や警察もこの動きを黙認することとなる。社会主義政権末期の疲弊の現れかもしれないが、つまり、取り締まる側の彼らも、結局は同じことを望んでいたということなのかもしれない。今でこそ観光客向け商店街のようになっているこの辺りも、その時には、我々こそが国民だ…!と訴える人々で埋め尽くされたそうだ。凄まじいエネルギーであったに違いない。
今回は、東ドイツを中心に回る予定だけれど、この辺りの歴史を肌で感じることも一つのテーマとしてみたい。

 

そんな足で出かけてみた、現代史博物館。第二次大戦~現在の歴史に関して(特に旧東ドイツのこと)、たくさんの資料とともに紹介してある。パネル表示がドイツ語しかないので細部まで理解できないものの、十分にインパクトのある内容。勉強になった。
年代順の展示構成になっている。戦後のベルリンの壁にまつわるあれこれやら社会主義政権下での人々の暮らしやらを見た後に、1989年のベルリンの壁崩壊の様子がムービーで流れている部屋に来る。大勢の人々がベルリンの壁によじ上り、歓喜しているこの様子は、子供の頃から何度かニュース等でも目にしているお馴染みのものだけど、なんでだか、ここでそれを見ると、ものすごく感極まって、ほとんど泣きそうになってしまった。ベルリンの壁てのは、こういうものだったんだな、と。今更だけど、ようやく、少し意味が分かった。
この一年の間に、いわゆる旧東側の国をいくつか訪れる機会があったけど(チェコ、ポーランド、エストニア)、そのいずれの国においても、多かれ少なかれ、これと同じような、究極的には人間の浅はかさと崇高さの奇妙な共存とでも言うような、そんな感覚を抱いた。これらがつい最近の出来事だというのだから(自分が生まれた後のこと)、なおさらだ。(写真は、戦後すぐ、連合国により四分割されたドイツの地図)



話題を変えて、ライプツィヒと言えば、バッハゆかりの地。彼は、この街にあるトーマス教会というところで、オルガニスト兼合唱の指揮者として、そしてもちろん作曲家として、長いこと活躍した。
この教会の前には、立派な彼の銅像があり、そして、教会の中には、彼の眠るお墓がある。この一年、音楽家のお墓参りもいくつかしてきたけれど、やっぱりバッハは、特別な存在、ちょっと感覚が違う。神様、仏様、バッハ様、チェロが上達しますように…ぱんぱん、と手を合わせてきました。

 

楽器博物館というところにも寄ってみた。世界最大級の古楽器博物館らしい。
こういうものたちを見ると、今ある楽器というのは、(当たり前だけど)最初から完成されたものとしてあったわけではなく、幾多の試行錯誤の中で、ほとんどのものは淘汰され、優れたもの、目的にかなうものだけが今に残っているのだということがよく分かる。それと、面白いと思ったのは、バッハは、与えられた楽器編成で曲を作るのみならず、自らの音楽表現の追求のために、色んな新しい楽器を、職人さんたちと一緒に考えていたということ。

そして、ものすごく楽しみにしていた、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の第九演奏会。

Gewandhausorchester
Chor der Oper Leipzig, Gewandhaus Chor, GewandhausKinderchor
Riccardo Chailly

Maria Bengtsson, Sopran
Christa Mayer, Alt
Johannes Chum, Tenor
Günther Groissböck, Bass

Ludwig van Beethoven - 9. Sinfonie d-Moll op. 125 mit dem Schlusschor über Schillers „Ode an die Freude“

なんかもう、チューニングの音からしてきれいで、そして演奏はさらに美しく、しかもさっき見てきたベルリンの壁の色々なんかも頭をよぎったりして(当時のこのオケの指揮者は、市民デモの中心人物でもあった)、その音楽が第九ときたもんだから、こんなに感動的な音楽を聴くのは初めて、と言っても大げさでないほど感動せずにいられなかった。うむ。
なんか、自分は細かく指摘できるほど詳しくはないが、色々と随所に小技を効かせた演奏だったように思う。ほう!みたいな箇所がいくつもあって面白かった。結局、全体を通して、すごくオケとしての主張が伝わってきて、それがとても良かった。ソリストも良かった(特にテノールとバリトン)。
いやぁ、よかったよかった。

 

気分的に、黒ビールを飲んでみた。
スーパーなどものぞいてみたけど、物価安い。フィンランドの三分の二~半分くらいか。ドイツでも、東と西では、まだ数倍の経済格差があると言われているから、西に行けばもう少し物が高くなるのだろうか、どうなんでしょう。何にせよ、旅行しやすいのはありがたいことです。