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種まく人から人々へと・ 命の器(いのちのうつわ)

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原風景は、英語の virgin(primeval)landscape、ドイツ語の Urlandschaft となるか・・・

2018-12-10 00:01:17 | 地域情報
最近、地域の「原風景を生かしたまちづくりを考えるシンポジウム」に参加し、原風景という用語が外国語に置き換え難いという言葉が頭に残り調べてみますと、「神戸の原風景」というタイトルで 小森 星児(復興塾塾長)の記述が大変参考になりましたので、
復興塾通信⬇︎から転載させていただきました。

http://www.kobe-machiken.org/bulletin/t201102.pdf

「日本の原風景」という表現が目につく。TV 番組 でも、旅行社のパンフレットでも、棚田や茅葺屋根の 写真を添えて、懐かしい心の故郷へと人びとを誘って いる。また、自治体が策定している景観計画でも、し ばしば保全に値する景観の例示に用いられている。実 際、紙と色鉛筆を与えて被験者に原風景を描かせてみ ると、小川にかかる橋とか、土手を走る蒸気機関車な どが画材に選ばれることが多いといわれる。
しかし、こうした人間の手が加わった景観は、原風 景といえるのだろうか。原野、原生林、原産地、原状 復帰などの用例を待つまでもなく、原とは元のままの という意味なので、人間の営みは含まれていないと思 われる。英語の virgin(primeval)landscape、ドイ ツ語の Urlandschaft がそれに当たる。
しかし、現在では「幼い頃、心に刻まれた懐かしい 心象風景」という意味が定着している。この用法の初 出は、奥野健男『文学における原風景』(1972)だと されるので、比較的近年のことである。都市空間論の 新しい地平を開拓した著者は、ここで文学者の作品を 支える自己形成空間の重要性を初めて指摘した。
余談であるが、奥野さんは私とおなじ東京山の手の 育ち、私の同級生の兄であり、お父さんは八海事件無 罪判決で有名な最高裁判事、ご本人はトランジスター の開発で特許庁長官賞などを受賞した技術者から文 芸評論家に転じた変わり種である。したがって棚田も 茅葺農家も縁がない。田舎の思い出といえば、申し訳 ないが汲み取り便所とか未舗装道路が先に立つ。美し い農村の原風景を守ろうと訴える CM では、記憶の浄 化作用にかこつけて都合の悪い要素は蓋されている。
それはさておき、原風景とは、幼少期に、教えられ たのではなく体験によって植えつけられたイメージ を指す心理学の用語「原体験」formative experiences の類推だと思われる。だれもが持っていることは確か であるが、きわめて主観的・個人的なもので、他人と 共有するものではなさそうである。(ただし、ユング 派の心理学では歴史的に蓄積された民族特有の集合 的無意識を認めているが、験証は不可能である)。
それでは「兎追いしかの山」や「わたしの城下町」、 「トトロの森」が引き起こすノスタルジックな感動は どこからくるのか。おそらく近代化の過程で向都離村 した大都市生活者がもつ失われたコミュニティの紐 帯を懐かむ故郷観に合わせて、意図的・商業的に大量 生産されたものであろう。面白いことに、啄木、犀星、 佐藤春夫など故郷を偲ぶ名歌は男性に多い。イエの軛 を捨て出奔した女性には、帰りたい故郷はなかったの だろうか。
さて、標題に掲げたのは神戸の原風景である。この 風景は子どものころに見覚えがあると感じたのは、震 災の翌日、あちこちに小火が残る長田の焼け野原を横 切ったときである。東灘で罹災し、身の回りの品を積 み込んで当時の勤務先の姫路に向う途中、消防隊に足 止めされて駒ヶ林の近くで不安な一夜を明かしたが、 翌朝目にした風景は昭和 20 年 8 月 15 日に目撃した焼 跡と同じであった。
戦争終結の日、私は山陽線岩国駅の駅前を横切って いた。新聞記者という職業柄、敗戦を予知した父は家 族を連れて上海から日本に戻ったが、すでに東京は危 険なので親戚を頼って岩国に疎開していた。ここには 海軍の飛行場があり、すでに何回も空爆があったが、 8 月 14 日の空襲では駅前の住宅地に 3000 発の爆弾が 投下され、街は灰塵に帰した。面積当たり投下量とし ては過去最大で、第 2 次大戦最後の大空襲であったと いわれる。ポツダム宣言受諾のニュースは流れていた はずで、無意味な殺戮であったといまだに怒りを禁じ えない。
ちょうど半世紀後、焦土と化した神戸の街は終戦の 日の岩国の街と二重写しのように感じられた。岩国は 広島の西 40 キロに当たり、私自身原爆の閃光ときの こ雲を目撃したが、原風景を挙げろといわれると、や はり焼跡しか思い浮かばない。
なにもかも新しく嘘っぽい復興した街に育った子 どもたちの原風景は、いったいどんな形をとるのであ ろうか。

以上、原風景のイメージと、さらに最期の【なにもかも新しく嘘っぽい復興した街に育った子 どもたちの原風景は、いったいどんな形をとるのであろうか。】が心に響きました!

「すべての利害関係者が話し合って決めたことが規範。
法はこの民主的な吸い上げプロセスが無いと、長持ちしない」
ユルゲン・ハーバーマス

参考資料
木岡 伸夫
原風景とは何か
http://publications.nichibun.ac.jp/region/d/NSH/series/niso/2007-08-30/s001/s006/pdf/article.pdf

https://nichibun.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=5225&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1&page_id=41&block_id=63

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