玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

趣意

2021-01-30 12:44:48 | はじめに

2021年1月1日

玉川上水みどりといきもの会議 の設立趣意

 

玉川上水は東京都を流れる細いながら連続した緑地であり、その貴重さは多くの都民に共有されている。昭和時代の高度成長期に全長43キロメートルのうち、下流の13キロメートルほどは暗渠化されたが、上流の30キロメートルは辛うじて残された。そして戦後75年以上を経過して、樹木が育つ一方、周辺の雑木林や草地が失われる中で、野草などのレヒュージア(避難所)となり、稀少な野草も生育している。玉川上水といっても場所ごとに多様であり、羽村の取水堰から小平市までは豊富な水流があり、下草の管理が行われているが、小平市ではコナラなどの落葉広葉樹が多く、緑陰を形作っている。小金井市は桜並木を尊重した植生管理をし、自然木は抑制されている。井の頭地区では井の頭公園の一部を形成する形で状態の良い林も残されている。

 玉川上水は昭和時代の高度成長期には通水を停止して荒廃した時期もあったが、住民の希望を受けて昭和61年(1986年)に清流が復活した。そして東京に残された数少ない緑地としての評価が高まったが、平成20年(2008年)頃からは史跡として水路、法面、小金井桜の保存に力点が置かれるようになった。そして平成23年(2011年)くらいまでは数百本であった樹木伐採が、平成28年(2016年)には4000本に急増し、令和(2019年)に入ると年間1000本程度が伐採されている。

 都市緑地の宿命として、住民の安全性が優先される必要があり、危険と判断される樹木が伐採または剪定されることは必要不可欠なことである。しかし同時に玉川上水の樹林が多くの住民に緑陰を提供し、親しまれていることも事実であり、その機能を損なうような樹木の伐採には慎重であるべきであろう。こうした樹林は森林に生育する野草に適した環境を提供し、そこに生息する昆虫、鳥類などの動物にとっても貴重な生息地となっている。そしてそのような生物多様性の豊富な自然が残されていることを住民は高く評価している。過去1、2年ほどで玉川上水の植物を調査している「玉川上水花マップネットワーク」が行ったシンポジウムや「小金井玉川上水の自然を守る会」が主催したシンポジウムに定員を大きく上回る住民が参加したことは、その関心の高さを示している。

 現在進められている年間1000本もの樹木伐採が今後も続けられれば、戦後を生き延びた樹林が早晩失われることになるだろう。「史跡玉川上水保存管理計画書」(平成19年、2007年)は、玉川上水の評価として、江戸時代に構築された土木施設・遺構としての価値とともに、地域と共存してきた水と緑の空間としての価値を認めている。そのことからすれば、現行の伐採はその精神が反映されているとは言いがたい。我々はそのことを憂慮するとともに、現行の伐採が何を基準に選定され、その伐採事業に住民の声がいかに反映されているかに多くの疑問を持つに至った。

 そのため、玉川上水の自然に関心を持つ個人や団体の意志を結集し、関係組織に住民の声を伝えることにより、玉川上水の今後の植生管理、特に樹木伐採のよりよいあり方に貢献したいと考えている。活動としては住民の意識を反映し、また玉川上水の自然の素晴らしさや価値を共有するためにシンポジウムを開催したり、生物多様性の維持、回復のための要望書を関係組織に提出したりする。必要に応じて、玉川上水の生物多様性に関わる調査を行い、科学的な情報に基づく情報を得ることで、客観的な提言を行う。また状況に応じてマスコミに協力を依頼することも必要であろう。

 これまで先人の英断により残されてきた玉川上水は史跡としての価値も、また都市に残された緑地としての価値も大きい。玉川上水に親しみを感じ、今後も良い状態で続いて欲しいと願う住民は多く、そのために活動している個人、団体も少なくない。しかし、現状を鑑みれば、そのような多くの思いを結集し、大きな声にする必要がある。それにより、玉川上水をよい形で次世代に引き継ぎたい。


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1 コメント

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Unknown (井出勝夫)
2021-09-26 12:34:10
武蔵野台地の唯一残された自然がある。コンクリートの河川にしないために,皆様方の活動に協賛します。
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