JTDの小窓

川崎市幸区下平間の鍼灸・手技療法『潤天堂』院長のあれこれなつぶやき

2023年訴えの多かったもの総括

2024-01-30 | 臨床・治療
新規の患者さんからの訴え(主訴)だけでなく、定期ケア・メンテナンスで通院中のリピート患者さんからの副訴も含めた訴えのまとめ(多かったもの)と潤天堂での施術ポイント

〇殿部、下肢の痛み・シビレ感

股関節周りの殿筋の施術で改善した方、腰にポイントを置いた施術で改善に向かった方、おなか側・鼡径部(腸腰筋)に加療して改善した方、足背の施術で改善した方など、改善に向かうポイントは人によって違うことが多々あった。要点はその人の日々の暮らし方・過ごし方にどういった姿勢が多いか、それによって負担のかかる部位はどこかなど推理・推察して施術ポイントを探ることが大事になる


〇腰痛

腰の治療点も、人によってそれぞれ違うことが多く、(広い範囲で)腰に直接施術点を求めてよくなるケースもあれば、殿部に求めてよくなる人、大腿部(外側・後側など)でよくなる人、足関節・足背の反応点でよくなる人さまざまだった。また、臥位での刺鍼ではあまり変化が出ず、坐位で刺鍼して初めて軽減した例もいくつかあった。施術姿勢は大事であると再認識したが、坐位での施術は脳貧血を誘発することがあるので十分注意しながら行う必要がある


〇頭痛・めまい・首肩こり

この3つは施術ポイントがカブることが多いので一緒に。
頭のどこが痛むのか、「頭頂部」なのか「前頭部」なのか「側頭部」なのかによって重きを置く刺鍼点が変わる。後頭下筋群はもちろん大事。刺鍼の深さも大事なことが多い。単刺なのか置鍼なのかも大事。
2023年に受けためまいの訴えはグルグル回転はなく、ほぼフワフワめまいだった。これも耳に近い側の頚部刺鍼点が良く効いた。首肩こりは仰臥位(あおむけ)・伏臥位(うつぶせ)だけでなく側臥位での側頚部刺鍼も加えた方が効果が長続きすることがよくみられた


〇眼に効かす・鼻に効かす・ノドに効かす

後頭部から首の付け根にかけてそれぞれ効かせる高さがあったりする。鍼で効くことが多いが、症状によっては多壮灸して初めて変化がみられることもあった


〇手関節痛(親指側・小指側※TFCC損傷のような)

割と局所だけの治療だけでも改善することが多かったが、その局所も「ピンポイントの反応点」を探すことが大事だった。うちではちょっとした小道具を使ってピンポイントで探している。
患側を下にした上肢内側への圧迫手根圧を加えてから腱鞘炎のような痛みが改善した場合も多々ある。


〇指の痛み

指直接の施術よりも、手背骨間筋の反応点を探って施術すると好転することが多かった


〇肘痛

今までもテニス肘などのような外側上顆の痛みや、内側部の痛みに対し圧痛点だけでなく前腕にもポイントを置いた施術を行なっていたが、これもまた手背骨間筋の反応を見て丁寧に行うことで加速した改善が見られた例が多かった


〇肩痛・五十肩など

(拘縮に至っていない)痛みによる可動域制限などに対し、腱板部や三角筋、肩甲骨周りの筋肉に対する施術も大事だが、母指球の圧痛を探って刺鍼・施灸したり、手背骨間反応点に施術して初めて好転した例がいくつもあった。

※上記の3つは、指を使う作業が多いことによる現場の疲労が、上(肘や肩)や下(指)に広がっていることもある感じがする


〇ひざ痛

お皿(膝蓋骨)周りの鍼灸も大事だが、膝の理学テストではほとんど所見が取れないことも多かった。遠隔となる中・小殿筋や梨状筋など股関節周りや、鼡径部にポイントがあることもあった。また、内側の痛みがある方で「側臥位で寝て膝を合わせると痛い」などの訴えがあるときは伏在神経絞扼障害(ハンター管症候群)も視野に入れた施術ポイントを入れると改善に向かうことが何度かあった


ここ数年は施術手段として「鍼」だけでなく「灸」を併用することによって、鍼だけの時よりもむくみが早く改善したり、痛みが早く引くようになる方が増えた。また、刺鍼後の違和感や鈍痛感なども刺鍼点に灸を行なっておくことで出にくくなることも多々あった


〇不妊・子宝鍼灸について

3カ月以上育卵鍼灸で通院・加療されている方で体外受精に進んでいる方の妊娠報告や出産報告をいただいたことについては毎年と比べて大きな差はありませんでしたが、2023年は人工授精で結果が出た方はいらっしゃいませんでした。その代わり20代・30代の方でタイミング法で妊娠を継続されている方が複数人いることが嬉しい。
不妊・子宝鍼灸では卵巣や子宮の血流を促す施術を行うが、それだけではなく、からだ全体の底上げをするべく全身総合的な施術も行うので、その人が今まで抱えていた症状が改善されてくることがよく見受けられます(PMSや冷え症の改善など)。
肩こりや目の疲れ、腰痛・腰重などは、お仕事内容(PC・坐業)や日常生活における作業姿勢・酷使から起こることが多いので、週1回の通院の中でこれらの緊張を解くような施術も加え、からだリセットをこまめにかけられることも利点となります

施術中にリラックスできてからだが軽くなることで、ストレスの軽減につなげていただけたという声もお聞きすることができました

※美容鍼についてはお問い合わせも多いので、あらためて記事を投稿いたします


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お灸談

2024-01-03 | 臨床・治療

昨年、鍼灸施術希望のほとんどの方にお灸も入れるようにしました。

「どのような炷(す)え方をするのか」「どんな感覚があるか」「ヤケドはしない炷え方であること」をお話しした上で、多くの場合鍼を一通り終えた後に灸を施していきました※症状によっては灸の方が効果を出しやすいものもあるので先に灸を行うこともあります。

「チクンという熱感の連続性が気持ちがいい」と言ってくださる方がほとんどで、あとは「(柔らかい炷え方なので)熱感はあまり感じず、テンポよくあちこちのツボに指をそっと添えられる感じが癒し的で気持ちよくて眠くなった」という方もいらっしゃいます。

お灸をして「もういやです」とか「つらいです・怖いです」という意見はほとんど聞くことがなく受けていただいています(指先に行うような場合は少し熱いかも)。


炷え方としては施灸点に紫雲膏を薄く塗り、そこに

(1)米粒の縦半分くらいの大きさの艾(モグサ)をのせ、艾の頂点に線香で点火し、上半分くらい燃えたところでそっと指でつまんで消す方法

(2)半分くらい燃えたところで「竹筒」を被せて酸素を遮断して消火する方法

(3)お灸好きの方で、しっかり炷えて欲しいというリクエストの方はヤケドに気をつけながら小さい艾を重ねながら何壮も炷えていきます。


「鍼灸治療」といっても、今はまだ「鍼」の方が効果の高そうに見えたり、施術内容的に高級そうなイメージを持たれる方も多いかと思いますが、実際はそんなことはありません。もちろん鍼には鍼ならではの良さがありますが、お灸の皮膚熱感刺激の方が治癒機転をスムーズに促すことができるものも沢山あります。それぞれ単独で効果を出せるものもありますが、当院では抜けのないよう両方を取り入れていくようにいたしました。

お灸は現代において間違いなく見直される治療法だと思います。


私自身、体調の管理(運動後のからだのあちこちの痛み・だるさ・重みなど)あると鍼灸で素早くケアしていますが、鍼ではいまいち効果が出にくかった症状(例えば重痛いだるさなど)は「お灸」を加えた方が間違いなく改善が早くなります。

自宅でできる「セルフケア・セルフメディケーション」として温灸製品も受付で販売しております。煙やニオイが出にくいものを扱っていますので、同居の方がいらしたり、賃貸で「部屋にニオイが…」と心配されている方も気軽に行いやすくなっています。ぜひお試しください


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薄毛治療とマイクロスコープ

2020-09-01 | 臨床・治療

薄毛治療のご依頼で施術するにあたり、客観的に毛根部の変化を見ていただくためにマイクロスコープを導入。


wifiで簡単にスマホと連動できて画像もきれい。

写真も撮れてとても便利。

これで3000円はお安いと思う。









  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

肩こりを考える

2019-05-24 | 臨床・治療

肩こりを感じさせる要因ていったいなんなんだろうか。
つらい肩こり「感」を、治療後楽にしてあげることはできる。問題はいかに継続的に肩こりを感じさせないようにしてあげられるか。

再発の原因は、解剖学的に「ここを緩めてあげられていないから表面的に緩めてもまた引き起こされる」だけなのだろうか。

長年この業界に身を置いて、この症状を訴える人に多数出会い臨床を通して感じることは、つらいと感じとるセンサー「閾値」の低下が関与しているようにも思える。

肩に触れてみて「硬いなぁ」と思った方でも肩こり感を感じていない人もいるし、肩が柔らかいのに強い肩こり感を感じている人もいる。

単純に「肩こり=僧帽筋の緊張」と言われることが多いようだが、解剖学的にみてもそれだけではないとは思う。後頚部や肩甲骨周りの浅層・深層、大胸筋や小胸筋、前鋸筋など胸郭につく筋、鎖骨、烏口突起周り、場合によっては顔面部や頭部、股関節周囲、下肢・上肢をやらないと改善しない場合もある。

その方が日頃どういう姿勢でいることが多く、どこを酷使し緊張を強いられているのか、またそこから連動して遠隔部に症状を引き起こしているのではと考えて介入していかねばならないことも多い。

でも、筋・筋膜を実際に緩めてその場で楽になっても、日頃の誘発原因をつきとめてそこから改善するようにしなければ、また緊張を起こし戻る。

私はほとんど肩こりを感じたことがない。
運動ができていない今でも感じない。
枕があろうがなかろうが、敷きマットが固かろうが柔らろうが、極端な話板の間に寝ても、起床時に肩こりを感じることはまずない。肩こりのつらさを感じたのは、記憶の中では一度だけ(これも不思議な体験で長くなるので、後日別に記事にします)。

なんでなのかなと考えると(あくまでも私の場合)、

①大学時代に取り組んでいた空手(当時は稽古中に際しては軍隊のような行動・精神)により自律神経のバランス(スイッチング)の取り方が鍛えられたのではないかと思うこと

②よく笑うこと

③泣く、笑う、感動するなど、感受性を豊かに育ててもらえたこと

この3つが特に大きく寄与しているように思える。

「緊張と緩和」の時間を意識的に持つことが大事だと、自分の身体を通して感じられる。

よく笑うことが大事なのは、たびたび院のブログにも書いているが、笑うことが閾値を上げることに大きく寄与しているように思える。

感動することも大事。
何かしてもらうことを当たり前と思わず、嬉しく感謝の気持ちを持つことは自分の感情を豊かにさせてくれる。
そして、素晴らしいと思える方に出会えることはとても大切。50年生きてきて、さまざまなシーンで心から尊敬できる方に出会えてきたことは心の宝物になっている。

余談が長くなってしまいましたが、閾値を上げるために何が必要なのか、ここからも考えていきたいと思っている。

閾値は複合的な要素を含むと思うので、単一要因で考えられないかもしれないが、個々のデータを取れたらなぁと思う。

例えば①に関しては自衛隊の方々の肩こり率。
規律正しい生活を送っている自衛隊の方々がどのくらいの率で肩こり感を感じているのか。
※思うに、精神的緊張を強いられた環境下で、身体も鍛えている方々は、その緊張下においてもふと力を抜くコツが経験上身についてくるように思える(空手の合宿中に学んだ経験から)。

②は、面白いことに天才的な「お笑い芸人さんでデータを」と思ったが、複合する要素が大きすぎて参考にするにはむずかしいかなと思える。

③の要素を持つ方を選出するのはむずかしい…

何か良い方法はないだろうか。

玉川病院東洋医学科に在籍していた時は、「胃腸を整え、消化・吸収機能を良くして筋肉の質をよくし、凝らない筋肉をつくる」ことがコリを作らない根本治療だと考えていた。

もちろんこれは基本的な大事な事だが、肩がこる方で胃腸系は問題ないと言われる方も多い。

それ以外にも要因を考えていかなければならない。

単に姿勢の問題なのか(同一姿勢を長時間続けない注意や、負担のかかる姿位をとらない)、自分でよくストレッチをすればよい問題なのか。

同じような考えを持つ方がいたら、是非集まってお話しする時間を設けていきたいと思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ひとこと評価表

2019-05-13 | 臨床・治療

おつらいところがあって受診され、施術を受け
られたあと、症状の強さによっては間隔をあまり
おかずに再訪して頂きたいことがありますが、
ご都合で間があいてしまうことがあります。

そのような時は、お帰りの際「ひとこと評価表」
をお渡しいたします
ので、ご面倒ですが
毎日状態を「ひとこと」ずつ記入していただき、
次回来院時にご持参いただけると、
施術を受けてからどのような経過を辿っているか
が細かくわかり、次の治療の指標になり大変参考
になります。



〇変化はみられない

〇しばらく良かったがまた出てきた

〇症状は消失した


などなど、「ひとこと」だけで結構ですので
ご記入いただきお持ちください。


このような用紙をお渡しいたします


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

母の左母指CM関節症のような痛みの治療

2019-05-11 | 臨床・治療

5/9、朝出勤して2階の実家に上がると、

母がちょうど起きてきて夜中からの

左の母指の付け根の痛みを訴えてきた。

手首あたりに湿布をぐるりと3枚貼っている。

圧痛場所を調べてみると、右の魚際のあたり

の痛みがいちばん強い。

①合谷のあたりからCM関節に向けての深鍼
②魚際付近圧痛点への直接直刺
③太淵付近からCM関節に向けての横刺
④前腕伸筋群への単刺
⑤魚際、陽谿、合谷へのせんねん灸+直接灸
⑥天宗含む肩甲下窩への丁寧な鍼と
肩貞、臑兪の鍼

を行っておいた(計20分ほど)

夜、仕事を終えて2階に上り痛みの程度を聞くと、

痛みは無くなり普通に動かせるようになっていた。

5/11の朝、確認してみるときちんと動かせて

痛みもないとのことだった。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

催便

2019-01-11 | 臨床・治療
朝、バイクに乗って出勤すると必ずといっていいほど到着する頃に便意を催す。
バイク(125ccの前傾姿勢にならないスクーター型)の乗車時間は5分ほど。
逆に休みの日でバイクに乗らない日は便秘することが多い。
バイクに乗った時に便意を催すのはなぜか。
自分の中では「臀部への振動刺激」が影響しているのではないかと思える(肛門から直腸への直接的な刺激なのか、振動刺激が陰部神経への刺激となり肛門から直腸付近への刺激として伝わっている?)。

受診時、便秘が継続していると訴える方で合谷や澤田流神門が奏功しない方に、臀部陰部神経鍼刺激も使えるのではないかと考えてみたりする。


陰部神経〜チームラボボディより〜


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

急性腰痛(ギックリ腰)について

2018-11-15 | 臨床・治療
このところ急性腰痛を訴える方からのご連絡がぽつぽつと入ってきます。

主には「立ち上がろうとした瞬間にピキッとなり、そのまま動けなくなったり背中を伸ばせなくなったりするもの」が多いようです。

また、数日・数週間前から腰に重さを感じていて、ある日コップの水がいっぱいになってついに流れ出たかのように、突然寝返りや起き上がり・立ち上がりが不自由になるものもあります。

突然ピキッとなるものも、実は自分で気づいていなかっただけで、その前から相当に腰に疲労を溜め、筋・筋膜間の滑らかな動きが出来なくなり、結果、負担を重ねて発症してくるものがほとんどのように思います。

当院では、腰痛を訴えていても「殿部や股関節周囲の筋・筋膜」に重点をおいて施術することが多々あります。

ここに負担がかかっていると腰の方に痛みを放散して感じていることが多いからです。

急性腰痛は「動けるくらいの軽いもの」から「立ち上がり不能、寝返り不能、横になっているのもつらい」というような重度なものまで広範囲に渡ります。

いずれにしても、経験上「痛み」を感じた時は「寝て治るのを待つ」よりも、早めに施術しておいた方が改善は早くなることが多いです。

「そのうち治るだろう」と痛みを我慢して動きまくってしまうと、知らず知らず痛みをかばう姿勢の時間が長くなり、筋肉の使われ方のバランスを欠いて傷める部位が広範囲に及んでしまうことがあります。

発症から受診までが早ければ1回~3回くらいでほぼ鎮静することが多く、腰痛を起こす要因が下肢などにもあれば(立位で大腿部や下腿を触るとカチンコチンなど)はここまでしっかりやらかくしてあげることが再発予防につながります。

悪い芽は小さいうちに摘んでおきましょう。






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ポイントで温ねつ灸

2016-10-27 | 臨床・治療
鍼や医療品を注文している業者のひとつでポイントがたまったので電気の「温ねつ灸」と交換した。

施設などに往診に行くときは火を使うお灸・温灸できないことが多いので電気の温灸は重宝する。

今までは全医療器の「shouki」を使っていたが、もっと簡易なものとしてこれも使えそうだ。

結構気持ち良い。








こちらがshouki

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遠隔穴での改善の思い出

2016-09-04 | 臨床・治療
15年くらい前の話。
雨の中125ccのスクーターで走行中、交差点の左折時にマンホールの蓋で前輪が滑り激しく転倒。左肩を強打した。その時は「すぐに起きなきゃ」という思いと恥ずかしさからすぐに立ち上がり、バイクを起こして道路わきまで移動させたが、アドレナリンがでていたせいかその時肩は少し痛む程度しか感じなかった。幸いバイクは動いたので乗車してそのまま帰宅した。
翌朝、肩の激痛で目が覚めた。おそらく寝返り。起き上がって腕を動かそうとすると、激痛で可動域が制限されている。腕を(前にも横にも後ろにも)体幹から離せないような状況のまま仕事をこなし、時間が空くと自分の右手で左肩や肘に鍼をしたり灸をする日々が続いた(状態としては重症の五十肩のような動きしかできないような感じ)。
1カ月くらい自分で治療を続け、90度くらいまでは前と横には上がるようになった。
その頃、月一回神奈川県鍼灸師会の保険部のレセプトチェックのお手伝いをしていて、当時の事務所になっていた伊藤昌芳先生の治療院に伺った際、肩痛の経緯を話したところ

「そんなの俺が治してやるよ〜」

と言われ、

正直なところ「いやいや、外傷性のマジなやつなので、炎症の鎮静も待たないといけないだろうから即効性を期待するよりはこまめに治療して消炎作業をするしかないと思う。なによりも、気を使って『効いたような気がします』と言うのも苦手な性格」なので、困って「いや大丈夫です、大丈夫です!」と言って断ろうとしたが

「大丈夫だよ、やってやるよ〜」

と言っていただき、結局治療してもらう事になった。

「僕、嘘つけないので変化がなかったら『変わりません』ってはっきり言います」と、かなり失礼なことを申し上げたうえではじめていただいた(失礼なことを言ってすみませんでした)。

最初に動きのチェックをし、治療はMP鍼?のようなものを患側の手背部や手首の後面に貼り付けて(わずか2〜3ヶ所。刺したかな…?刺さないでテープで貼り付けただけのような気がします)、

「はい、じゃあ動かしてみて」

といわれた。

「え? これで?」

(いやむりむり…ちょっと数カ所触った程度の刺激でこの1ヶ月の苦痛に変化を起こせるとは思えないよ…)と内心思いつつ、こわごわ上肢をを前方に挙げていくと…


「あららららら…」

180度まで全く問題なくスムーズにあげることができました(外転は145度くらいまで改善)。これには本当にびっくりしました。
この伊藤先生の神業については今でも臨床仲間や患者さんによく話しています。

これを機に、可動域制限を有する肩関節周囲炎に対し「局所で対応できるもの」「遠隔穴で対応できるもの」「両方必要なもの」に加えて「鍼だけで対応できるもの」「お灸も入れたほうがよいもの」いろいろ検討しながら診るようになりました。

最近、遠隔穴を使った興味深い症例があり(まだ経過観察中)、はっきりと治療効果に繋がっていくようなら許可を得て報告していきたいと思っています(痛みの度合いから考えてそんなに簡単に問題解決するか難しいところですが、考え方や診方としてみても少し参考になると思いますので)。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家族の治療

2016-05-19 | 臨床・治療
うちの院は店舗を備えた実家の建物の1階にあり、もともと母親が珠算塾をやっていたスペースを借りて改装し診療しています。
なので2階には親(+犬♂)が住んでいます。
親とは休診日以外ほぼ毎日顔を合わせるのでコンスタントに健康状態を把握できるし、緊急事態の際にはすぐに対応できるよい環境にあります。

ただ、親の体調がよくないと聞いてもすぐに対応してあげられないこともあったりします。
外部から受ける患者さんからの予約をどうしても優先するようになるので、親の治療はどうしても「空き時間に」ということになってしまうのです。

日中の空き時間に治療しようとすると外出していることも多く、十分にみてあげられていないのが現状。なので朝早く起きてもらって治療するときもあるし、診療が終わった夜遅くから開始するようになります。

最近は忙しくて、「調子がよくない」と聞きながらも、なかなかその日に診てあげることができない事が続いていました。

親も高齢になり、目に見えて老いを感じます。

母親は元気に見えて結構いろいろ抱えています。緑内障(長い年月をかけてゆっくりと視野狭窄が進行)に両肩痛、腰椎すべり症、難聴も始まり、最近では重い鉄板プレートを左母趾に落として複雑骨折というアクシデントも抱えています(近所にとてもよい整形の先生がいて、その先生のおかげでなんとか保てている状態。ありがたい)。また、非回転性めまいのようなふらつきも出はじめたので、一度も受けたことがないという脳の画像診断を念のため受けるよう勧めつつ、体調管理的な治療をこれからはしっかりしてあげないと…と感じました。

父親もまた糖尿、難聴、前立腺肥大(ope済)その他いろいろ病を抱え、この短期間の間でも2回手術をおこなってからめっきり元気がなくなってしまいました。食欲は落ち、声に力がなくなり、体重は太っていたときから比べたら10キロくらい減りました。今週になってめずらしく父親から「治療してくれないかな」と声をかけられたとき、これもいよいよしっかり診てあげないとと思いました。

いつまで元気でいられるかわからない親。何かあったとき自分が後悔しないよう、自分ができることで喜んでもらえる親孝行をしていこうと思います。

これからは定期的に時間をつくって鍼やマッサージをしていきます。









  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

深谷灸法の遠隔取穴

2016-01-30 | 臨床・治療
深谷灸法とは、昭和の名灸師 深谷伊三郎先生が古典や名著と呼ばれる医籍や先賢の諸説を臨床にあてはめてその効を確認し築かれた灸治療法。
深谷灸法には「基本十項」というものがあり、全部の紹介は次回以降に譲るが「そこが悪いからとそこへすえても効果はない」という項がある。


「灸穴というものは、上部の病気には下部の穴を用い、下部の病気には上部の穴を使うと治効が現れるという妙味がある。これは経絡現象を認める場合に、経絡の妙味がそこだと言わざるを得ない。そして病んでいるところから隔ったところ、遠く離れているところに病気や異和の反応が現れている。その部位を捉えて施灸すると奇効を奏するものである」

「(疾病は)遠隔部の体表のどこかへか過敏な圧痛や硬結となって現れる。治療を施すときは、そこを捉えそこを探し求めてそこへ治術を施すとそこから悪いところへ流れ込むように飛び込んでいくように響いて苦痛が軽減したり、異常感がなくなってくるものだ。治療の要点は、そういうところを捉えることにあるといわなければならない」

※入江靖二先生編書「図説深谷灸法~臨床の真髄と新技術~(緑書房)」のP18『遠隔取穴』より引用

わかりやすい例でいうと、腱鞘炎や弾発指などに対し肩甲間部に圧痛を求めている(肺兪や心兪、膈兪などに多壮灸)。


まさにTP(トリガーポイント)や筋・筋膜網(アナトミートレイン)を掴んだ効果を出すときと似ているように思える。
鍼でTPにアプローチするときは目的部まで針先を届けるわけだが、灸のような体表への熱刺激(熱痛刺激)でも同じ効果を出せていることになる。患部自体に直接届かなくても、熱痛刺激により刺激された体表受容器が、何らかの機序により目的深部まで刺激が届き治癒機転に結びついていると思われる。仮説の域だが考えると面白い。深谷灸で用いられる症状と経穴を検証していきたい。

ちなみに鍼灸学生のとき、入江靖二先生に「深谷灸法で用いる灸熱緩和器を使ったすえ方」を体感したくて浅草の治療院に伺ったことがありました。そのときおみやげにと灸熱緩和器(竹筒)をいっぱいくださいました。自分でも作っていたのですが、白衣の胸ポケットにしまえるようにと勝手にコンパクトサイズに作っていたので、我流をだしてはいかんなと反省したことを覚えています。













  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

技術の見直し

2015-08-24 | 臨床・治療
私たち臨床家の多くは、臨床技術を向上するためにいろいろな講習会・勉強会に参加して新しい理論やテクニックを学び日々の臨床に取り入れます。
私の場合、新しいものを取り入れたことでそちらに時間を費やすために、今までやっていたことをしなくなることもあります。しかし今回「テクニックを定期的に見直すことは必要だなぁ」と思うことがありました。

先日夏休みをいただき、奥さんの田舎に行ってきました(奥さんと娘は先に帰省)。その数日前より臨床中や普段の生活の中で時折腰の重みを感じていましたが、さほどひどくもなかったので治療しないまま片道4時間近くのドライブに出発しました。道がすいていたため途中の休憩をとらず、気分よく一気に目的地まで向かってしまいました。これもよくなかった(患者さんには「ドライブに行く際はこまめに休憩をとって『ぱなし状態(座りっぱなし)』は極力避けてくださいね」などと話すのに)。
夜に到着し、翌朝から腰に異変。立位の時、ふと向きをかえたときに腰が抜ける感じが起こる(「痛みが走る」というのではなく、「一瞬、腰の力が抜けて膝折れして崩れおちそうになる」感じ)。1日半それで過ごしましたが、川崎に戻る日、そのまままた4時間近く運転して帰るのが不安になり、義父が通っている近所の整体院を紹介してもらって施術していただきました。そこの先生はとても上手で、仙腸関節部の違和感を訴えたらとても気持ちよくPSIS部付近をほぐしてくれました。と同時に中殿筋や大腿外側部(大腿筋膜張筋~腸脛靭帯)の張りに対し、痛みを感じさせない圧テクニックでほぐしてくれました。あとは全体的に流すように整えてくださいました。そのおかげで腰の脱力はなくなり、帰りも休憩なしで一気に帰ってきました(学習力0)が、その後も症状はでていません。
仙腸関節の施術ももちろん功を奏したと思いますが、自分的には(受け手側の観点から)大腿外側の施術が非常に効いたように感じました。普段立位姿勢が多く、しかもやや前屈状態を維持して立っていたりするので脚や尻の筋にかなりの負担をかけていることに加え、今回、休憩をとらずに座りっぱなしの姿勢で長時間いたことも腰だけでなくハムストリングスをはじめとする下肢筋に負担をかけたと推測しました。思えば以前は私ももっとここに時間をかけて施術していたことがあったのに、違うテクニックを学び取り入れたことで最近は軽ろんじていたなと反省し、最近ではまた必要に応じて加えるようになりました。

自分の治療が「完成する」ということはないんだと実感します。
「もっと効率よく効果的に」「できるだけ患者さんに負担をかけずに」などを考えていけば、理論・技術を『更新していく』ことはあっても『完成』はないし、してもいけないと思っています。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久しぶりの腰痛 2

2015-04-21 | 臨床・治療
先日は腰方形筋の鍼を行なって寛解した自己体験例を書きました。
が、ここ数日になってまた腰痛がぶり返してきました。今回は腰方形筋の鍼をしてもピンときません。横向きに寝てPSIS(上後腸骨棘)部に検出される気持ちの良い圧痛や、殿部に触れる過緊張筋に対し筋膜刺激の気持ちの良い鍼をしたところ、立ち上がりの痛みは改善するも今ひとつスッキリしませんでした。痛む部位は仙腸関節部の奥に感じるようでもあり、またお腹の方に感じるようでもあり。ということは今回は大腰筋か。

原因を考える。ここ数日この浮き輪のようにぐるりとついたお腹のお肉をなんとかしなければと、ひきしめを求めて夜に腹筋を続けていたことからの由来と推測。仰向けでの脚の上げ下げを久しぶりにもかかわらず頑張って数をこなしてしまった。

本日、昼間の診療時間中にどうにも痛くなってきてしまい、前屈での姿勢もきついし椅子に座って診療録を記入している時も上記部位がつらくなってきてしまった。

坐位のまま右の外大腸兪から大腰筋目指して3寸の鍼を挿入。ゆっくり送り込んでいくと大腰筋停止部の小転子のあたりにビクンと響きあり。ゆっくり抜いてみると右の痛みは軽くなった。まだ左のお腹に通ずる部分の痛みあり。今度は左の外大腸兪から大腰筋に向けて刺鍼。小転子への響きはなかったが、腰の痛む部分にギュワーンとする響きあり。抜鍼後お腹の痛みは軽減。軽い雀啄刺でこれだけ軽減すれば御の字とした。

現在、動作については問題なく動けるようになった。が、ここまでつらくなるとやっぱり人の施術を受けに行きたいなと思いました。自分で苦痛を軽減させられることはそれはそれでいいのだけれど、しっかり時間をかけて人に楽にしてもらいたい気持ちもある。

この近くで大腰筋刺鍼をやってくれるのは、「北京堂鍼灸横浜」の馬場先生。前に一度受診し、大腰筋刺鍼をしていただきました。浅野先生のお弟子さんなのでさすがに上手でした。またやってほしい。。
ホームページを見たら平日21時までやっててくれている。…でも間に合わない(涙)。

ゴールデンウイークも診療しているようなので、是非予約して行ってみたいと思っています。





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

土踏まず(アーチ部)の痛み

2015-04-10 | 臨床・治療
すみません、また自己治療記録です。
腰痛が引いたと思ったら、また追いかけてくるかのように左の土踏まず(経穴でいうと「公孫」とか「然谷」のあたり)の痛みが出てきた。
歩行時も気になるし、しゃがんだり膝をついて足指をたてる姿勢をとると痛みが増強する。腰痛を庇った姿勢からきた下肢下腿への負担によるものと推測。
こういうとき、痛む現場(公孫・然谷)を直接押すとはっきりとそこが痛いので「ここが現場」として鍼や灸をここに行なってもなかなか早期には改善しないことを経験します。ポイントは下腿の脾経(特に漏谷から三陰交にかけて)。押し探ると心地よく痛む部分を拾うことができます。また、太谿や復溜などの腎経ラインにも圧痛を検出できます。
ここに鍼。気持ち良い。気持ちが良いのでいっぱい刺激してしまう。結果、腰の時と同じように鍼響感が残る。脚が重い(土踏まずは楽になったけど下腿全体が重い)。
※ちなみに患者さんにはここまでしません。ご心配なきよう。重くなってもその重さを「快」として捉える自分だからやってしまうだけです。

施術したのが9日の23時くらい。帰宅して就寝するまで重さ感有り。
10日起床時、立ち上がってみると重さ消失。痛みも消失したまま。終了。

ひとこと。痛くなったら早めにお手入れ。長引かさないコツです。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする