6時半起床。朝食は摂らずに弘前駅に向かう。先日と同じ弘前発の快速列車で青森に向かう。先だっては大雪で列車が大幅に遅れたが、今日は時間通りに青森に到着した。駅のホームで立ち食いそばを食べて、特急「白鳥93号」を待つ。こちらも定刻通りに青森駅にやってきた。
暖かい車内に眠くなり、青函トンネルの通過もよく覚えていない。気がつけば北海道に入っている。先ほどよりも雲が多くなってきた。
しばらく走ると函館山が見えてくる。晴れた日に眺めるのはもちろんいいが、こうして少し曇った日に見る姿もなかなかである。
今日はちゃんと函館まで行き、ここから「スーパー北斗7号」に乗り継ぐ。
進行方向向かって右側の席を取った。こちらのほうが海が見えて、車窓の風景も変化に富んでいる。駒ヶ岳もよく見えた。
再び眠りに落ちる。今日は時間の心配をすることもなく、快適に過ごした。札幌駅に降り立つ。やっぱり寒い。さすがは北海道である。お腹が空いていたが、そのままホテルまで行くことにした。地下鉄で大通まで行き、地上に上がって狸小路商店街を歩く。
「チロリン村」というスパゲティ屋さんに入る。いろいろメニュー豊富で楽しい。そのなかでもオススメとなっている、イクラちゃんもいるサザエさんのスパゲティというのを注文した。なるほど、確かに一家(一族?)が勢揃いしている。パスタにしては実に豪勢である。大変おいしくいただいた。
早めにホテルにチェックインする。しばらく横になって休む。旅の最中は快適だったが、着いてみたら何だか疲れが出たようだ。
狸小路にある市民映画館シアターキノで、「海炭市叙景」という映画を観る。函館出身の作家、佐藤泰志の短編集を映画化したものだ。
海炭市は架空の街ではあるが、明らかに函館がモデルになっていて、ロケも当地で行われている。夜景に朝市、五稜郭といった観光都市ではなく、不況によって基幹産業である造船所が縮小し、往時の輝きが急速に翳っていく街が舞台である。
作品は5つの物語から構成されている。造船所を解雇され、明日への不安を抱えたまま新年を迎える兄妹、再開発が進むなかで、ただ一人立ち退きを拒む老婆、プラネタリウムの職員と、距離を開いて行くままの妻、父のガス会社を継いだものの、私生活の破綻を目の前にする若い経営者、路面電車を運転する父と、東京に住み、一時帰郷した息子、これらの人びとの「日常」が描かれていく。彼ら彼女らには、相識関係はない。それでも海炭市のどこかですれ違う。
全体のトーンは、重く、暗い。そして幸せな結末など、見えてこない。それでも暗いなかだからこそ、ほの見える光のようなものを感じさせる。そもそも結末などはありはしないのだ。なぜなら人びとの生は、引き続いていくものだからである。
劇場を出た後にも、重たいものが残ったままの作品である。キャスト一人一人の好演も光っている。とくに谷村美月と竹原ピストルの兄妹、加瀬亮演じるガス屋の若社長がいい。
狸小路にある、北海道の名物料理が食べられる店で豚丼を食べた。しばらく待たされたが、アツアツの豚丼はうまかった。
狸小路は僕好みの商店街だ。○丁目ごとに個性があるのがいい。なかでも一番端っこの7丁目がいい。昭和の風情残るアーケードは、文化財級だと思っている。