哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

『舞-HiME』

2006-05-10 | アニメ
 今更ながら『舞-HiME』を最後まで見た。うーむ、圧巻。よくここまでやったなと素直に感心する。
 さて、『舞-HiME』はサンライズ初の萌えアニメと銘打たれている。が、しかし、最後まで観た視聴者は、みんなこの自称に突っ込みを入れるだろう。確かに、女の子がたくさん出るが、ほとんど戦闘がメインで、後半を過ぎたあたりから鬱展開どころか、修羅場ばかりが続く。というか、これだけ修羅場を描いたアニメはまずない。萌えアニメなのに、メインヒロインの舞衣が怖い。命と本気で対立したときなど、製作者は舞衣のキャラクターを捨てたと本気で思った。後半では、ヒロインはみんな多かれ少なかれ狂っていて、その表情がまさにキている。動画スタッフの渾身の画と声優のやはり渾身の演技がものすごい迫力だ。全体を通せば萌えもなくはないのだが、狂気のほうがずっと多いアニメだったと思う。が、そんなぎりぎりの状況だからこそ、最終第二話の舞衣となつきの友情などは、ほろりとさせる良い場面だった。その他、この作品は女の子同士の友情がなかなかよく描かれていて、その点にはかなり好感がもてる。
 そして、この作品を支えたのは、数ある名演技のなかでもやはり舞衣役の中原麻衣だろう。この人は『symphonic rain』や『ひぐらしの鳴く頃に』(アニメ版)の中でも、狂気のある役を見事に演じている。にもかかわらず、その声の優しさと繊細な演技で、キャラクターの可愛らしさを逃していない。ひょっとしたら、ヘタに中原以外の声優が舞衣を演じていたら、作品内での舞衣の求心力がなくなって、作品自体が空中分解してしまっていたのではないかとさえ思う。そのほか、この作品のキャスティングは、なつき役千葉妙子、静留役進藤尚美など、『神』である。
 さて、この次の作品として、三月に終わった『舞-乙HiME』が作られたのだが、『舞-HiME』と比べると、明らかに印象が弱い。もっといえば、『舞-HiME』の二次創作くさくさえある。こちらも、それなりにおもしろかったのだが、『舞-HiME』の修羅場ばかりの展開というオリジナリティーと比べると、いかにも弱いのだ。現在製作されているOVAでは『舞-HiME』と『舞-乙HiME』の関係をもっと描かれればうれしい。
 『舞-HiME』は、私的には、殿堂入りの作品だが、最終回は…さすがに殺しっぱなしはまずいし、ああするしか作品の体裁(萌えアニメ)を保てなかったとはいえ…やはりぬるい。かといって、あやふやに終わってしまうのも、やはりよくない。私的には、最終第二話のあの熱さと引き返せなさがこの作品のベスト!これから『舞-HiME』を観る人には、胃袋のキリキリいうような展開をぜひ楽しんでほしい。
 …今度CIRCUSから、アドベンチャーゲーム版『舞-HiME』の完全版がでるらしいから、買ってみようか。

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