車輪を再発見する人のブログ

反左翼系リベラルのブログ

池田信夫氏の桜チャンネルの議論を振り返って

2009年02月19日 | 論理

せからしか@blogを読んでいたら昔紹介した池田信夫氏と司会者との桜チャンネルでの議論についてまた考えたのでここで少し書いてみる。(以前の記事)まずこのブログの記事を少し紹介すると

解雇規制撤廃には、正社員の保護ではなく「過保護」と生産性に見合わない「高配当」という既得権を奪い、その「重石」を取り除くことで労働市場の硬直化を取り除き、企業の生産性も向上させる。
企業にしてみてもメリットは多いはずで、ノーワーキングリッチ、食い逃げ世代、色々呼び方はあるが、ある意味で無理の利く若い世代から搾取する側の賃金を是正し限られた賃金原資を有効に使える。
桜チャンネルの物わかりの悪いメガネの坊主に分かり易く説明してやると、年収1000万の働かないノーワーキングリッチを1人を切って年収500万の働く2人を雇う。
簡単な足し算の論理だ。

ということで、まさにその通りなのだが頭の悪い人がこのような議論を理解できない理由として、正しいことが証明されないと納得できないというのがある。この議論でもそうなのだが、解雇規制を撤廃したら経営者が得するだけだという論理で反論してくる。新たに人を雇おうとしないとか、賃金だけ圧縮しようとするとか、必ずしも解雇規制撤廃が労働者のメリットになるとは限らない、だから、解雇規制の撤廃に反対だというのだ。このように解雇規制の撤廃があらゆる状態において完全に労働者にメリットをもたらすことを証明することを要求されたら議論のしようがない。完全に正しいことを証明するのは難しいからである。

ここで重要なのは、完全に正しいかどうか以前に、正規労働者を過剰に保護する解雇規制が正規労働者と非正規労働者との間の格差をもたらし、不平等と低生産性をもたらしているかが問題になっているということだ。つまり、まず第一に解雇規制が不平等をもたらしているかどうかが問題なのであり、結果として解雇規制を今撤廃することが正しいかどうかはとりあえず別の問題ともいえるのである。このように、二つのステップがあるにも拘わらずそれを無視するからわかりにくくなる。解雇規制の今すぐの撤廃が正しい間違っているに拘わらず、解雇規制が不平等をもたらしているのならばそれは問題であり、労働形態間の格差・不均衡が解消されたほうが良いに決まっているのである。

それを完全な形で解雇規制の撤廃という政策が労働者を利することが証明されない限り、明らかに解雇規制によって不平等が発生しているという事実を認めないために議論がかみ合わないのだ。そして、挙句の果てには派遣労働者にも責任があると言う意味不明な論理につながってくる。解雇規制の撤廃という政策の正しさが証明されない限り、解雇規制が格差と不平等をもたらしているということを理解できないために、本来正規と非正規との格差が明確に存在しそれが問題の根本なのにそれを非正規社員に責任をなすり付けているのである。

結局のところ、A(解雇規制の撤廃)が正しいかどうかということと、Aがすべてを解決するかどうかという二つのことは違うということに過ぎない。当然、解雇規制を撤廃したとしてもすべてが完全に即座に解決するとは限らない、しかしそれはAが正しいかどうかとは別次元の問題であり、どこまで行ってもAが正しいということは変わらないのである。

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2 コメント

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TBどうもです (せからしか@blog)
2009-02-28 23:15:45
先日はトラックバック頂いてありがとうございました。
派遣の自己責任に至るまでの分析、興味深く読ませていただいました。
メディアの切り取り方にもよりますが、世間的に自己責任論が盛り上がったときはちょっと意外な感じがしていました。
こういうときのメディアの報じ方はある意味で悪趣味な扇動になりがちなので、そこを見透かす受け手側の目が必要なのですが、海外メディアの政治経済主流のニュースとは違い、社会部的な事件事故と言った「手軽で絵になりやすい」メディアにあてられて育った人々のリテラシーの低さに唖然とします。
自分の所にも何度か書いていますが桜チャンネルはその良い例で、本質を探ろうともせずに議論が進まない様は、世論の縮図のようでもありましたね。
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いらっしゃいませ (管理人(車輪工場))
2009-03-01 00:02:10
そもそもこのような問題は、利害関係が絡んでくるので正しい間違っているに関わりなく、自分達にとって都合が良いかどうかで議論が進みがちです。これは諸外国でも同じで何が正しいかではなく、メディアに出てくるような知識人層にとって何が都合がいいかに流されます。労働組合、植民地、中東問題等どれを取ってもいえることだと思います。

日本の場合はマスコミが正社員保護によって最大限恩恵を受けている層そのものなので、偏見もろだしの報道になるのは当然でしょう。一方的な偏った情報を与えられると間違った判断を下してしまうのは当然ですが、今回の事例でも多面的な背景がネットなどを通じて広まるに付けて一般の人の反応は変わっていったと思います。

お約束の、都合のいい特殊な事例に直情的にしか反応できないマスコミ・評論家と、賢明な大衆との対比が出たと思います。犯罪報道などもそうですがマスコミは一部の特殊な事例に過剰反応し、その事件を繰り返し伝え、そこから想像を膨らまして都合のいい事実を勝手に作り出してしまいます。それに対して、大衆は様々な要因に単純に反応する分、偏った情報が与えられると間違うこともありますが、概ね優れた反応をしているのではないでしょうか。

わざわざコメントありがとうございます。
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