社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

緊急事態宣言と警察活動

2020-04-10 16:13:00 | ノンジャンル
緊急事態宣言下での警察

 4月7日に行われた緊急事態宣言を受け、デパート等が自主休業を始めたことにより、繁華街からは人影がまばらとなり、夜の居酒屋からも、人の姿がほとんど消えてしまった。これは、宣言に伴う外出自粛の結果であると思われる。なぜこんなに素直に知事の要請を受け入れるのだろうか。要請は強制力を伴わない。すべてが、市民の自発的行動の結果であるといわれている。
 小池都知事は、宣言前から、都民に外出自粛を要請していたが、それとともに、強い危機感の下で、感染者の爆発的増加を指摘し、早急な管理を主張していた。
 宣言前後で異なっているのは、宣言前はその法的根拠がなく、知事の独自のものであったが、宣言後のものは、新型コロナ特措法を根拠にしていることである。しかし、自粛の要請は変わっていない。本部長である首相が緊急事態を宣言したことにより、日本国民の国民性が顔を出し、「お上思想」が前面に出てきたのであろう。
 このような変化を利用とした動きは止まらない。
 10日、岐阜県が非常事態宣言を、愛知県が緊急事態宣言を行った。これは、法的根拠を持たないものであり、かつての北海道や東京都と同じものである。このような事態において、それぞれの県民は意義の声を上げないのであろうか。なぜ県議会は、議会での審議を求めないのであろうか。県民や市民の日常生活に深くかかわるものであり、議会での議論とともに、県民・市民の意見を聞く場を設けることも必要である。

 安倍総理は、緊急事態宣言を行った後での記者会見で、外出自粛要請に関して警察に何らかの協力を要請する可能性に言及した。「取り締まりの対象には、罰則有りませんから、取り締まりの対象ということでは、警察が取り締まることはありません。ただ、ご協力は要請させていただくということはあるかもしれません」と述べた。これは、「外出自粛要請に関連して、職務質問を活発化することなどを警察に要請することはありうるか」という質問に対してだが、何らかの協力を要請する可能性を認めたのである。
 これに対して、菅官房長官は6日の定例会見で「緊急事態宣言がなされた場合、警察においては混乱など不測の事態の防止を図るために、警戒活動を実施するなどの対応をとるとしている。同時に、引き続き空港、医療機関などにおけるトラブル防止のために、警戒警備や混乱に乗じた各種犯罪の抑止、取り締まりを徹底する」と言及し、警察活動を容認する姿勢を示していた。
 一方、警視庁は7日、政府の緊急事態宣言を受け、斉藤実警視総監を本部長とする「警視庁新型コロナウイルス感染症緊急対策本部」を設置した。同庁によると、今後、外出自粛傾向のさらなる強まりや経済不況に伴い、ドメスティックバイオレンスや詐欺電話といった犯罪が増加する懸念があるといい、警戒を強める(産経新聞4月8日)としている。警視庁や警察庁のホームぺージには、この緊急対策本部についての記述はなく、どのような組織かは不透明である。
 警察庁は、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態における警察の対応に係る留意事項等について(通達)」を各都道府県に発出した。そこには、次のようなことが求められている。

緊急事態宣言を受けた警察の取組及び留意事項
 行動計画においては、警察の取組として、水際対策の支援、医療活動の支援、社会秩序の維持、緊急事態措置に対する支援、重点的感染防止策の支援等が予定されているところであるが、これらについて現時点で留意すべき事項は以下のとおりである。
(1) 警戒警備の実施
 検疫強化に伴う空港、指定待機場所等における警戒を引き続き行うとともに、医療施設(臨時の医療施設を含む。)等におけるトラブル等の防止のため、自主警備の強化を要請するなどの管理者対策を行うとともに、必要に応じて警戒警備を行うこと。
 また、知事部局が行う外出自粛、施設の利用制限等の要請等に際して、トラブル等が予想される場合には、必要に応じて警戒警備を行うこと。
(2) 社会秩序の維持
 感染拡大に伴う混乱等に乗じた各種犯罪を防止するため、犯罪情報の集約、各種媒体を活用した広報啓発活動を進めるとともに、悪質な事犯に対する取締りを徹底すること。
 また、国内の感染拡大や外出自粛等の措置に伴い、社会的混乱が発生するおそれがある場合に備えて、相談対応を通じた住民等の不安の軽減に努めるとともに、各種警察活動における機動隊の多角的運用を含め、組織の総合力を発揮して治安の維持確保を推進すること。

 ここで注目すべきことは、「知事部局が行う外出自粛、施設の利用制限等の要請等に際して、トラブル等が予想される場合には、必要に応じて警戒警備を行うこと。」という警戒警備活動の実施であり、「社会的混乱が発生するおそれがある場合に備えて、各種警察活動における機動隊の多角的運用を含め、組織の総合力を発揮して治安の維持確保を推進すること。」として、緊急宣言後における社会秩序の維持を目的とした警察活動を容認したのである。
 3月23日の記者会見で、小池都知事が述べた「今後の推移によりましては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります」ということは、社会的秩序の維持を目的とした警察活動を容認する姿勢が裏に表れている。

都道府県対策本部長の権限
 新型コロナ特措法23条2項は、都道府県対策本部の構成員を「副知事、都道府県教育委員会の教育長、警視総監又は道府県警察本部長、特別区の消防長、前各号に掲げる者のほか、都道府県知事が当該都道府県の職員のうちから任命する者」規定し、警視総監が含まれている。
 また、対策本部長の権限の中に、「都道府県対策本部長は、当該都道府県警察及び当該都道府県の教育委員会に対し、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を実施するため必要な限度において、必要な措置を講ずるよう求めることができる。」ことを定めている(24条7項)。
 これらのことを総合して考えれば、「必要な限度」「必要な措置」という判断を加えることを前提とした警察活動を容認しているように読める。
 しかし、警察活動の基本は、警察官職務執行法に定められており、警察活動はそれを限度として行うことができるものだから、いくら「緊急事態宣言」下であろうが、この警職法の範囲を超えての警察活動は絶対に容認されない。
 これは、法治国家の基本であり、たとえ首相であろうが、都知事であろうが、その原則を無視することはできない。
 私たちは、この緊急事態下において、警察はどのような動きをするのかを注意深く監視する必要があるだろう。


東京都新型コロナ対策条例は無効である!!

2020-04-08 13:04:00 | ノンジャンル
都知事、新型コロナ対策条例を専決処分で制定

1 東京都新型コロナ対策条例
 4月7日、小池東京都知事は、「東京都新型コロナウイルス感染症対策条例」を専決処分で制定し、即日施行した。この条例は、全9条からなり、1条で目的、2条で定義規定を置き、3条では「都の責務」を「新型コロナウイルス感染症対策を的確かつ迅速に実施し、及び都の区域において関係機関が実施する新型コロナウイルス感染症に係る措置を総合的に推進する(1項)」とし、4条では「都民及び事業者の責務」を、1項で「新型コロナウイルス感染症の予防に努めるとともに、都の新型コロナウイルス感染症対策に協力するよう努めなければならない。」2項では「事業者は、新型コロナウイルス感染症のまん延により生ずる影響を考慮し、その事業の実施に関し、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。」3項では「新型コロナウイルス感染症に関連する者に対して、り患していること又はり患しているおそれがあることを理由として、不当な差別的取扱いをしてはならない。」としている。5条では審議会の意見聴取を定め、6条では「東京都新型コロナウイルス感染症対策審議会」、7条では「都民及び事業者への支援」を定め、9条では、必要な事項についての規則への委任を定めている。
 これについて、今日の産経新聞は、「東京都は7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、新たに条例を制定したと発表した。議会の議決を経ない専決処分とし、即日施行。都は必要な対策を素早く的確に講じるほか、関係機関の措置を総合的に推進し、都民や事業者は感染症の予防に努めて都の対策に協力するよう求めた。
 感染症の関係者に対しては不当な差別的扱いを禁止。対策を総合的に進めるため、専門家の意見を聞く審議会を設置し、必要に応じて助言を求めることも定めた。」と報道したが、その内容を十分には理解せず、問題点の指摘もされていない。
 条例の8条では基本的人権の尊重を定め、「都民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するため必要最小限の者でなければならない」と規定し、対策を実施する場合には、自由と権利の制限を容認している。この規定は、個人の自由や権利の制限を認めていない新型コロナ特措法の規定による緊急事態宣言の内容を超えたものであり、違法であり、無効である。

2 専決処分とは?
 この条例は、知事の専決処分で制定された。
 地方自治法179条は、おもに議会が機能しない事態への対処を目的として、知事に専決処分を認めている。法が認める具体的な事例は、次の場合である。
① 普通地方公共団体の議会が成立しないとき
② 第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき(113条但書は、定足数を満たさなくても開会できる場合である)
③ 普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき
④ 議会において議決すべき事件を議決しないとき
 このような緊急性のない場合には、知事の専決処分は認められていない。

3 今回の専決処分は違法である。
 これら四つのうち、どの緊急性が当てはまるのであろうか。①②④には該当しないことは明らかである。したがって、③の「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」に該当していたのであろうか。
 常日頃、緊急事態の宣言を主張していた小池知事ならば、緊急事態宣言が出されたときに取るべき対応策は検討されていたであろう。この条例もその一つのはずである。
 また、公共交通は遮断されておらず、議員はいつでも議場に参加できたはずである。臨時議会を招集せずに行った今回の緊急条例は、制定に瑕疵があり、無効であると断言できる。
 一歩譲って、議会を開催するいとまがなかったとした場合であったとしても、この条例は無効である。
 新型コロナ特措法で認められている本部長(首相)による緊急事態宣言が出された場合に、都道府県知事が取りうる対策としては、基本的には、「要請」であり、それを拒んだ場合に「指示」することができるだけである。まして、その対策は、個人の自由や権利に制限を設けることは絶対的にできない。
 それに対して、この条例は、8条で、「都民の自由と権利に制限を加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するために必要最小限の者でなければならない。」と規定し、都民の自由や権利を制限することを当然の前提としている。

4 本条例は、違法・無効である。
 以上みてきたように、この条例は、制定面からも、また内容面からも、違法・無効なものであり、小池都知事は、直ちに本条例を廃止するか、又は議会を開催し、議会での承認を求めるべきである。
 緊急時だとはいえ、法を無視したこのような制定方法は、断固として糾弾されなければならない。逆に言えば、このような緊急権限の賦与こそが、小池都知事の目的とするところではないだろうか。
 良識ある都民の皆さん!このような、小池都知事の暴挙に対し、立ち上がり、抗議の声を出そうではないか。


緊急事態宣言発令

2020-04-07 18:38:00 | ノンジャンル
緊急事態宣言とマスコミ報道

 今日の午後5時45分ごろ、安倍首相は、新型コロナ特措法に基づき、緊急事態を宣言した。
この宣言を受け、マスコミはその詳細を報道したが、その際に感じた違和感について報告する。
 この緊急事態宣言を受け、具体的な措置を決定するのは、各都道府県知事である。それについては、首相には何の権限もない。
 ところが、この緊急事態宣言を受けたマスコミは、いろいろな業種での取り組みを紹介した。デパート、スーパー、鉄道各社、郵便、宅配業者等々である。
 対象地域とされた都府県では、これから具体的な対策が発表される。まだ発表されない段階で全国的規模であり、市民生活に欠かせない領域について、その営業実態を報道していた。
 鉄道は運休しない、宅配便は通常通り、郵便業務は通常通り、デパートはほとんどが休み等々である。
 これらの報道は、「緊急事態」ということのみを強調し、その持つ意味を理解していないものである。
 緊急事態宣言は、市民の健康を守り、命を守るために発令されたものであり、それを限度として適用されるものである。その視点からの緊急性のないものについては、もともと対象とされていない。にもかかわらず、マスコミは、「緊急性」のみを伝え、市民への不安をあおっているように見受けられる。
 もしこれを読むことができた人たちは、ぜひこのようなマスコミ報道にあおわれないでいただきたい。
 自分の命を守り、健康を守るのは、自分自身である。変な情報に流されず、冷静な対応こそが求められているのではないか。

緊急事態宣言と知事の対応

2020-04-07 17:36:00 | ノンジャンル
緊急事態宣言―できることとできないこと-

 ついに緊急事態宣言が発せられ、翌8日の午前0時から施行され、効力を持つようになる。
 この緊急事態宣言において、小池都知事は、勝手に都市封鎖に言及した。その後、都市封鎖はできないことを理解したのか、知事は、都市封鎖に言及することをやめた。
 ここで、この宣言により、どのようなことが可能になるのかを見ておこう。

 緊急事態宣言が出された場合に取られることが可能な主な措置としては、以下のものが存在する。
A検疫のための停留施設の使用、航空機等の運航の制限の要請【法第29条、第30条】
1 停留施設の使用等
2 航空機等の運航の制限の要請
B感染を防止するための協力要請等について【法第45条】
新型インフルエンザ等緊急事態において、感染拡大をできるだけ抑制し、社会混乱を回避するため、 以下のような措置を講じる。
1 不要不急の外出の自粛等の要請
○ 都道府県知事は、緊急事態において、住民に対し、期間と区域を定めて(※)、生活の維持に必要 な場合を除きみだりに外出しないことを含め、感染防止に必要な協力を要請することができる。
(※)潜伏期間、治癒までの期間及び発生状況を考慮して定めることとなるが、具体的な運用については、政 府対策本部の基本的対処方針で統一的な方針を示す予定。期間については、発生初期などに1~2週 間程度を目安に実施することを想定。区域については、患者の発生状況や地域の社会経済的なつながり 等を勘案して都道府県知事が判断(都道府県内のブロック単位等)。
2 学校、興行場等の使用等制限等の要請等
○ 都道府県知事は、緊急事態において、期間を定めて、学校、社会福祉施設、興行場等多数の者 が利用する施設(注1)の管理者又はそれらの施設を使用して催物を開催する者に対し、施設の使 用の制限等の措置(注2)を講ずるよう要請することができる。
(※)具体的な運用については、政府対策本部の基本的対処方針で統一的な方針を示す予定。
注1 「施設」の具体的内容は、今後政令で規定。人の接触状況(利用人数、施設の大きさ)等を考慮。 注2 「措置」の具体的内容は、今後政令で規定。施設の使用制限・停止のみならず、マスク着用、咳エチケット等の基本的な感染予防策の実施の協力を含む。
○ 上記の場合において、正当な理由がないのに要請に応じないときは、要請を行った都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延防止等のために特に必要があると認める場合に限り、施設の使用の制限等を指示することができる。(罰則なし)
○ 要請・指示を行ったときは、その旨を公表する。
C特定接種及び住民に対する予防接種について【法第28条、46条】
D医療関係者による協力を確保するための枠組みについて①
1 医療機関に係る措置(指定(地方)公共機関、登録事業者)
2 医薬品等製造販売業者等に係る措置
3 医療関係者への医療等の実施の要請等
4 臨時の医療施設における医療の提供等
E緊急物資の運送、特定物資の売渡し要請等について【法第54条、第55条】
1 緊急物資の運送等(法第54条)
2 特定物資の売渡しの要請等(法第55条)
F申請期限等の延長等、物資の価格安定及び政策金融について【法第57~第61条】
1 行政・民事上の申請期限・履行期限の延長等(法第57条、第58条)
2 生活関連物資等の価格の安定(法第59条)
3 政策金融の実施等(法第60条、第61条)

 これらは、すべて知事の権限である。その主なものは、「要請」である。従来、北海道知事や都知事が行ってきた「要請」とは異なり、緊急事態宣言を受けたものである点において、法的裏付けを持った行為である。しかし、この「要請」に従うか否かは、個人の判断に任され、強制力を有するものではない。一般的には、新型コロナの蔓延を防ぎ、正常な社会生活を取り戻すために、自主規制は行われるであろう。
 しかし、場合によっては、強制力を持つときもある。
① 学校や娯楽施設については、知事は利用の制限を「要請」するが、従わない場合には、さらに「指示」を出すことができる(法45条3項)。
② 緊急物資や医薬品などの運送についても、「要請」のほか「指示」を行うことができる。
③ 知事は、臨時の医療施設を建設する際、土地などを強制使用できるほか、医薬品やマスクなどの売り渡し要請に企業などが応じない場合、強制収用することができる。場合によっては、30万円位が罰金に処せられる。
④ 知事は、特定物資の生産や集荷、販売、輸送などを行う企業などに対し、保管を命ずることができる。この命令に従わず、隠匿や廃棄等をした場合は6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられ、また保管状況の立ち入り検査を拒んだり、虚偽の報告をしたりした場合は30万円以下の罰金に処せられる。

特に注目すべきことは、鉄道への影響である。今朝の産経新聞は、「首都圏などの対象区域で鉄道各社に対する減便を要請」と報じている。それは、知事ではなく、政府の意向だという。鉄道の便数を減らせば、車内は混雑し、三密の排除という要請に反している。さらに、政府にこのような権限が存在するのであろうか。基本的には、緊急事態宣言を受けた具体的措置を講ずるのは知事であり、政府ではない。これを許してしまえば、もはや法治国家ではなくなってしまう。


緊急事態宣言

2020-04-07 16:37:00 | ノンジャンル
緊急事態宣言―できることとできないこと

 ついに緊急事態宣言が発せられ、翌8日の午前0時から施行され、効力を持つようになる。
 この緊急事態宣言において、小池都知事は、勝手に都市封鎖に言及した。その後、都市封鎖はできないことを理解したのか、知事は、都市封鎖に言及することをやめた。
 ここで、この宣言により、どのようなことが可能になるのかを見ておこう。

 緊急事態宣言が出された場合に取られることが可能な主な措置としては、以下のものが存在する。
A検疫のための停留施設の使用、航空機等の運航の制限の要請【法第29条、第30条】
1 停留施設の使用等
2 航空機等の運航の制限の要請
B感染を防止するための協力要請等について【法第45条】
新型インフルエンザ等緊急事態において、感染拡大をできるだけ抑制し、社会混乱を回避するため、 以下のような措置を講じる。
1 不要不急の外出の自粛等の要請
○ 都道府県知事は、緊急事態において、住民に対し、期間と区域を定めて(※)、生活の維持に必要 な場合を除きみだりに外出しないことを含め、感染防止に必要な協力を要請することができる。
(※)潜伏期間、治癒までの期間及び発生状況を考慮して定めることとなるが、具体的な運用については、政 府対策本部の基本的対処方針で統一的な方針を示す予定。期間については、発生初期などに1~2週 間程度を目安に実施することを想定。区域については、患者の発生状況や地域の社会経済的なつながり 等を勘案して都道府県知事が判断(都道府県内のブロック単位等)。
2 学校、興行場等の使用等制限等の要請等
○ 都道府県知事は、緊急事態において、期間を定めて、学校、社会福祉施設、興行場等多数の者 が利用する施設(注1)の管理者又はそれらの施設を使用して催物を開催する者に対し、施設の使 用の制限等の措置(注2)を講ずるよう要請することができる。
(※)具体的な運用については、政府対策本部の基本的対処方針で統一的な方針を示す予定。
注1 「施設」の具体的内容は、今後政令で規定。人の接触状況(利用人数、施設の大きさ)等を考慮。 注2 「措置」の具体的内容は、今後政令で規定。施設の使用制限・停止のみならず、マスク着用、咳エチケット等の基本的な感染予防策の実施の協力を含む。
○ 上記の場合において、正当な理由がないのに要請に応じないときは、要請を行った都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延防止等のために特に必要があると認める場合に限り、施設の使用の制限等を指示することができる。(罰則なし)
○ 要請・指示を行ったときは、その旨を公表する。
C特定接種及び住民に対する予防接種について【法第28条、46条】
D医療関係者による協力を確保するための枠組みについて①
1 医療機関に係る措置(指定(地方)公共機関、登録事業者)
2 医薬品等製造販売業者等に係る措置
3 医療関係者への医療等の実施の要請等
4 臨時の医療施設における医療の提供等
E緊急物資の運送、特定物資の売渡し要請等について【法第54条、第55条】
1 緊急物資の運送等(法第54条)
2 特定物資の売渡しの要請等(法第55条)
F申請期限等の延長等、物資の価格安定及び政策金融について【法第57~第61条】
1 行政・民事上の申請期限・履行期限の延長等(法第57条、第58条)
2 生活関連物資等の価格の安定(法第59条)
3 政策金融の実施等(法第60条、第61条)

 これらは、すべて知事の権限である。その主なものは、「要請」である。従来、北海道知事や都知事が行ってきた「要請」とは異なり、緊急事態宣言を受けたものである点において、法的裏付けを持った行為である。しかし、この「要請」に従うか否かは、個人の判断に任され、強制力を有するものではない。一般的には、新型コロナの蔓延を防ぎ、正常な社会生活を取り戻すために、自主規制は行われるであろう。
 しかし、場合によっては、強制力を持つときもある。
① 学校や娯楽施設については、知事は利用の制限を「要請」するが、従わない場合には、さらに「指示」を出すことができる(法45条3項)。
② 緊急物資や医薬品などの運送についても、「要請」のほか「指示」を行うことができる。
③ 知事は、臨時の医療施設を建設する際、土地などを強制使用できるほか、医薬品やマスクなどの売り渡し要請に企業などが応じない場合、強制収用することができる。場合によっては、30万円位が罰金に処せられる。
④ 知事は、特定物資の生産や集荷、販売、輸送などを行う企業などに対し、保管を命ずることができる。この命令に従わず、隠匿や廃棄等をした場合は6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられ、また保管状況の立ち入り検査を拒んだり、虚偽の報告をしたりした場合は30万円以下の罰金に処せられる。

特に注目すべきことは、鉄道への影響である。今朝の産経新聞は、「首都圏などの対象区域で鉄道各社に対する減便を要請」と報じている。それは、知事ではなく、政府の意向だという。鉄道の便数を減らせば、車内は混雑し、三密の排除という要請に反している。さらに、政府にこのような権限が存在するのであろうか。基本的には、緊急事態宣言を受けた具体的措置を講ずるのは知事であり、政府ではない。これを許してしまえば、もはや法治国家ではなくなってしまう。