社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

(無題)

2020-04-26 19:18:00 | ノンジャンル
吉村大阪府知事、休業要請に従わないパチンコ店舗名を公表(続き)
―法の手続きは守られていたのかー

昨日のブログについて、知人からメールで次のような質問が届けられた。そこで、今回は、この質問に答える形でのブログにしよう。
以下に質問を貼り付ける。

インフルエンザ特措法45条3項は以下のようになっています。
施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。
ということは施設管理者の主張に正当な理由がないかどうかが指示することの鍵だと私は思っています。それを前提に2つの質問をします。

質問1 大阪府知事は施設管理者であるパチンコ店がどのような理由で大阪府の要請を断ったのか示さずに45条4項を適用して店名を公表しても良いのか?
  (注)大阪府の『新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく施設の使用停止(休業)の要請について 』 を見ると45条2項を適用条文にしているが、45条2項の要請の後、45条3項の指示をしたかどうか不明。

質問2 大阪府知事が施設管理者であるパチンコ店がどのような理由で要請を断ったのか示していないので仮定の話になるが、「利用制限の要請をするならばそれに見あった補償をしろ。それが明らかになるまでは自粛の要請に協力できない」と回答したとして、このパチンコ店の主張は正当な理由として認められる余地があるか?

 まず、質問1について。
 これは、公表に際しての要件の問題だと思う。
 法45条2項は、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」に「施設の使用の制限若しくは停止」を要請することができると定めている。ここには、当該施設についての規定はなく、要件があれば、要請できるとされているだけである。
 また、45条4項は、「第二項の規定による要請又は前項の規定による指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない」と定めているので、2項の要請をした場合には、速やかに公表することが本部長である知事に求められている。ここには、当該対象施設の事情は、一切考慮されていない。
 大阪府では、まだ、「指示」には至っていないようだ。「指示」を出す場合には、もっと厳格な要件が必要であり、それをクリアしなければならない。
 45条2項の要請に至る段階においては、吉村知事のツイッターによれば、「府内のパチンコ店約700店、休業要請後に府民から苦情があった店舗117店、電話等で休業に応じてもらえず最後文書通告が11店(手続中28店)、通告後公表前休業が5店、公表後休業が2店、公表後も営業が4店。ここで感染が広がっても、医療従事者や行政は命を救う為に活動する」と書かれており、まず電話で連絡した後、文書通告をしているようである。
 ただ、昨日も触れたが、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」という要件については、それなりの判断が求められている。単に、大阪府の説明のような「感染拡大のリスクが高い3密になりやすい」というだけで足りず、内閣府のガイドラインが要求するレベルの危険性が必要である。ガイドラインでは、「クラスターが発生するリスクが高い」ことが要求されている。
 このように見れば、今回の大阪府の要請は法の精神を超えたものであり、それに基づいて実行されたパチンコ店舗名の公表は、違法と言わざるを得ない。

 次の質問2について。
 たぶん、パチンコ店は、要請を断るという作業はしていないと思われる。現に、店舗の営業を継続するだけで足りる話である。
 しかし、問題は、当事者に、このような不利益を及ぼす処分については、その言い分を聞かなければならない。つまり、弁明の機会を与えなければならない。
 これについては、内閣府のガイドラインでも、「行政手続法第13条第1項第2号の規定により弁明の機会の付与を行わなければならないが、同条第2項の規定により、公益上、緊急に不利益処分を行う必要がある場合には、弁明の機会の付与を行う必要はない」とされているが、施設名の公表が不利益処分だとすれば、弁明の機会を与えなければならず、また、弁明の機会を与えなくても済む「緊急に不利益処分を行う必要がある場合」に該当するか否かは、当局の判断なのであり、その立証責任は、大阪府が負うことになる。
 通常は、そのような場合を想定し、落ち度のない説明を行うものである。しかし、今回の大阪府の説明は不十分なもので、問題の本質を何も解決していないように思われる。
 「急がば、まわれ」の格言をよくかみしめよう。大阪府や吉村知事は、ことを急いて、やるべきことが何もできなかったという結論にならないよう、慎重に事を進めてもらいたい。