都知事、新型コロナ対策条例を専決処分で制定
1 東京都新型コロナ対策条例
4月7日、小池東京都知事は、「東京都新型コロナウイルス感染症対策条例」を専決処分で制定し、即日施行した。この条例は、全9条からなり、1条で目的、2条で定義規定を置き、3条では「都の責務」を「新型コロナウイルス感染症対策を的確かつ迅速に実施し、及び都の区域において関係機関が実施する新型コロナウイルス感染症に係る措置を総合的に推進する(1項)」とし、4条では「都民及び事業者の責務」を、1項で「新型コロナウイルス感染症の予防に努めるとともに、都の新型コロナウイルス感染症対策に協力するよう努めなければならない。」2項では「事業者は、新型コロナウイルス感染症のまん延により生ずる影響を考慮し、その事業の実施に関し、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。」3項では「新型コロナウイルス感染症に関連する者に対して、り患していること又はり患しているおそれがあることを理由として、不当な差別的取扱いをしてはならない。」としている。5条では審議会の意見聴取を定め、6条では「東京都新型コロナウイルス感染症対策審議会」、7条では「都民及び事業者への支援」を定め、9条では、必要な事項についての規則への委任を定めている。
これについて、今日の産経新聞は、「東京都は7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、新たに条例を制定したと発表した。議会の議決を経ない専決処分とし、即日施行。都は必要な対策を素早く的確に講じるほか、関係機関の措置を総合的に推進し、都民や事業者は感染症の予防に努めて都の対策に協力するよう求めた。
感染症の関係者に対しては不当な差別的扱いを禁止。対策を総合的に進めるため、専門家の意見を聞く審議会を設置し、必要に応じて助言を求めることも定めた。」と報道したが、その内容を十分には理解せず、問題点の指摘もされていない。
条例の8条では基本的人権の尊重を定め、「都民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するため必要最小限の者でなければならない」と規定し、対策を実施する場合には、自由と権利の制限を容認している。この規定は、個人の自由や権利の制限を認めていない新型コロナ特措法の規定による緊急事態宣言の内容を超えたものであり、違法であり、無効である。
2 専決処分とは?
この条例は、知事の専決処分で制定された。
地方自治法179条は、おもに議会が機能しない事態への対処を目的として、知事に専決処分を認めている。法が認める具体的な事例は、次の場合である。
① 普通地方公共団体の議会が成立しないとき
② 第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき(113条但書は、定足数を満たさなくても開会できる場合である)
③ 普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき
④ 議会において議決すべき事件を議決しないとき
このような緊急性のない場合には、知事の専決処分は認められていない。
3 今回の専決処分は違法である。
これら四つのうち、どの緊急性が当てはまるのであろうか。①②④には該当しないことは明らかである。したがって、③の「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」に該当していたのであろうか。
常日頃、緊急事態の宣言を主張していた小池知事ならば、緊急事態宣言が出されたときに取るべき対応策は検討されていたであろう。この条例もその一つのはずである。
また、公共交通は遮断されておらず、議員はいつでも議場に参加できたはずである。臨時議会を招集せずに行った今回の緊急条例は、制定に瑕疵があり、無効であると断言できる。
一歩譲って、議会を開催するいとまがなかったとした場合であったとしても、この条例は無効である。
新型コロナ特措法で認められている本部長(首相)による緊急事態宣言が出された場合に、都道府県知事が取りうる対策としては、基本的には、「要請」であり、それを拒んだ場合に「指示」することができるだけである。まして、その対策は、個人の自由や権利に制限を設けることは絶対的にできない。
それに対して、この条例は、8条で、「都民の自由と権利に制限を加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するために必要最小限の者でなければならない。」と規定し、都民の自由や権利を制限することを当然の前提としている。
4 本条例は、違法・無効である。
以上みてきたように、この条例は、制定面からも、また内容面からも、違法・無効なものであり、小池都知事は、直ちに本条例を廃止するか、又は議会を開催し、議会での承認を求めるべきである。
緊急時だとはいえ、法を無視したこのような制定方法は、断固として糾弾されなければならない。逆に言えば、このような緊急権限の賦与こそが、小池都知事の目的とするところではないだろうか。
良識ある都民の皆さん!このような、小池都知事の暴挙に対し、立ち上がり、抗議の声を出そうではないか。
1 東京都新型コロナ対策条例
4月7日、小池東京都知事は、「東京都新型コロナウイルス感染症対策条例」を専決処分で制定し、即日施行した。この条例は、全9条からなり、1条で目的、2条で定義規定を置き、3条では「都の責務」を「新型コロナウイルス感染症対策を的確かつ迅速に実施し、及び都の区域において関係機関が実施する新型コロナウイルス感染症に係る措置を総合的に推進する(1項)」とし、4条では「都民及び事業者の責務」を、1項で「新型コロナウイルス感染症の予防に努めるとともに、都の新型コロナウイルス感染症対策に協力するよう努めなければならない。」2項では「事業者は、新型コロナウイルス感染症のまん延により生ずる影響を考慮し、その事業の実施に関し、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。」3項では「新型コロナウイルス感染症に関連する者に対して、り患していること又はり患しているおそれがあることを理由として、不当な差別的取扱いをしてはならない。」としている。5条では審議会の意見聴取を定め、6条では「東京都新型コロナウイルス感染症対策審議会」、7条では「都民及び事業者への支援」を定め、9条では、必要な事項についての規則への委任を定めている。
これについて、今日の産経新聞は、「東京都は7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、新たに条例を制定したと発表した。議会の議決を経ない専決処分とし、即日施行。都は必要な対策を素早く的確に講じるほか、関係機関の措置を総合的に推進し、都民や事業者は感染症の予防に努めて都の対策に協力するよう求めた。
感染症の関係者に対しては不当な差別的扱いを禁止。対策を総合的に進めるため、専門家の意見を聞く審議会を設置し、必要に応じて助言を求めることも定めた。」と報道したが、その内容を十分には理解せず、問題点の指摘もされていない。
条例の8条では基本的人権の尊重を定め、「都民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するため必要最小限の者でなければならない」と規定し、対策を実施する場合には、自由と権利の制限を容認している。この規定は、個人の自由や権利の制限を認めていない新型コロナ特措法の規定による緊急事態宣言の内容を超えたものであり、違法であり、無効である。
2 専決処分とは?
この条例は、知事の専決処分で制定された。
地方自治法179条は、おもに議会が機能しない事態への対処を目的として、知事に専決処分を認めている。法が認める具体的な事例は、次の場合である。
① 普通地方公共団体の議会が成立しないとき
② 第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき(113条但書は、定足数を満たさなくても開会できる場合である)
③ 普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき
④ 議会において議決すべき事件を議決しないとき
このような緊急性のない場合には、知事の専決処分は認められていない。
3 今回の専決処分は違法である。
これら四つのうち、どの緊急性が当てはまるのであろうか。①②④には該当しないことは明らかである。したがって、③の「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」に該当していたのであろうか。
常日頃、緊急事態の宣言を主張していた小池知事ならば、緊急事態宣言が出されたときに取るべき対応策は検討されていたであろう。この条例もその一つのはずである。
また、公共交通は遮断されておらず、議員はいつでも議場に参加できたはずである。臨時議会を招集せずに行った今回の緊急条例は、制定に瑕疵があり、無効であると断言できる。
一歩譲って、議会を開催するいとまがなかったとした場合であったとしても、この条例は無効である。
新型コロナ特措法で認められている本部長(首相)による緊急事態宣言が出された場合に、都道府県知事が取りうる対策としては、基本的には、「要請」であり、それを拒んだ場合に「指示」することができるだけである。まして、その対策は、個人の自由や権利に制限を設けることは絶対的にできない。
それに対して、この条例は、8条で、「都民の自由と権利に制限を加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するために必要最小限の者でなければならない。」と規定し、都民の自由や権利を制限することを当然の前提としている。
4 本条例は、違法・無効である。
以上みてきたように、この条例は、制定面からも、また内容面からも、違法・無効なものであり、小池都知事は、直ちに本条例を廃止するか、又は議会を開催し、議会での承認を求めるべきである。
緊急時だとはいえ、法を無視したこのような制定方法は、断固として糾弾されなければならない。逆に言えば、このような緊急権限の賦与こそが、小池都知事の目的とするところではないだろうか。
良識ある都民の皆さん!このような、小池都知事の暴挙に対し、立ち上がり、抗議の声を出そうではないか。