社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

休業要請という名の生活干渉

2020-04-12 15:33:00 | ノンジャンル
権力による歯止めなき生活干渉

 4月10日、小池東京都知事は、休業の対象範囲をめぐる国との調整が終わり、休業要請を発表した。
 そもそも、この問題は、緊急事態宣言に伴う対応措置の範囲をめぐる都と国の対立が根底にある。4月11日の朝日新聞によれば、小池都知事は6日に休業要請の対象施設案をまとめ、都議会に提出し、その案に対し、7日、国は東京都がまとめた休業要請の施設案に難色を示したという。
 「社会の混乱を避けたいとして対象の範囲を絞ろうとする国と、『命ファースト』を掲げて対象を広げようとする都」という対立構造があったと、朝日新聞は指摘する。

 4月7日、安倍首相が新型コロナ特措法に基づく緊急事態を宣言し、翌8日の午前0時から効力を持つようになった。
 この宣言を受け、早々とデパートは自主規制をはじめ、食料品以外の階を休館とした。このような動きは、飲食店でも見られている。
 緊急事態宣言を受け、小池都知事は、マスクの着用と不要不急な外出の自粛を要請した。またその一方で、「爆発的増加」とか「ロックダウン」などといい、市民に「新型コロナの危険をあおる発言」を繰り返していた。
 このような緊急事態宣言に伴う都の措置と10日に発表された休業要請とはどこかに異なることがあるのだろうか。結論的を先に述べれば、法的には何も異なってはいないといえる。
 
 3月26日、国が「新型コロナウイルス感染症対策本部」を立ち上げたことに伴い、東京都は、「東京都新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置した。同名の組織はすでに1月31日に設置されていたが、この「東京都新型コロナウイルス感染症対策本部」は、新型コロナ特措法22条1項を根拠に設置されたものであり、法的根拠を持つものである。
 この感染症対策本部が設置されたことにより、本部長である都知事は、24条で定められた措置をとることができるようになった。この24条の規定は、緊急事態宣言が出されたか否かにかかわらない。
 その24条9項は、「都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。」と定め、必要な協力の要請を行うことができるようになった。
 その一方で、緊急事態宣言が出された以降については、まん延防止のための措置をとることができる。すなわち、45条は、新型コロナの「まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため」「住民に対し、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型コロナ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる(1項)」とし、「学校、社会福祉施設、興行場その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる(2項)」と定めている。

 都知事自らが認めているように、10日に発表された休業要請は、45条を根拠にしたものではない。あくまでも、従来通りの24条9項を根拠にしている。
 このように、その根拠に変化がないにもかかわらず、都や国は、市民に対する要請を強め、それに従わなければおかしいともいえるような言動をとっている。
 このような個人の生活に及ぶような要請を強く主張することは、任意にできるものではない。それなりの法的根拠がなければならない。市民の任意性に任せるのであれば、その判断を尊重すべきなのである。新型コロナのまん延から市民の生命・健康を守るというのであれば、単にその危険性を強調し、自粛要請をしてればよいというものではない。法的根拠を明らかにしたうえでの措置をとることが求められている。