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福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

表現力や語彙力を高めて、気持ちや意見を言葉で表現しよう

2017年09月16日 | 人財育成
”忖度”という言葉が一時期流行りましたね。
”忖度”とは、「他人の気持ちをおしはかること」という意味で、「他人の気持ちを察する」とか、「気持ちを汲んで、配慮する」といった表現に置き換えることも出来ます。
このように日本語には多くの同義語が存在します。

例えば、英語では「Tomorrow」と一語ですが、日本語では明日(あす、あした、みょうにち)や翌日などと表現できます。
最近、書店にも「語彙力」や「日本語」について取り上げた書籍も多く積まれています。
日々のケース記録では利用者の様子や状態を的確な表現で多職種と共有しなければなりません。
また、会議などの情報共有や討議の場では、相手に伝えるために様々な言葉のやり取りをしなければなりません。
そのためにも、きちんと語彙力を養っていくことで、より具体的で、読み手や聞き手にも内容を分かりやすく伝えられることでしょう(っと書いている、私の文章は全然参考になりませんが…)。
以前、「相手あってのコミュニケーションとなっていますか」では「言葉で伝える」ことを取り上げましたが、今日は「言葉で気持ちや意見を表現する」ということにクローズアップしたいと思います。

大変失礼な表現になりますが、福祉現場で働く、特に若年層の職員さんは「言葉で気持ちや意見を表現する」ということが苦手な方が多いように感じます。
研修などで職員さん自身の意見を求めても、相手の目すら見ず、抽象的な表現で、当たり障りのない意見を言葉で表現されることもしか返してもしばしばです。
そのような言葉の表現になる理由は、自分自身の答えや伝え方に自信がないことだと考えています。
研修で個人ワーク、グループワークを行っても、より正しい回答を導き出そうと一生懸命考えている職員さんが多くいます。
私としては、1つの正解を用意しているわけでもなく、職員一人ひとりからもっと自由で、多様な発言を期待し、グループメンバーと共有し、自身の考え方や視野を広げてもらいたいのです。
ただし、「他のメンバーと考え方や意見が違っていたらどうしよう」「講師からよく見られたい(講師が望んでいる回答を導き出さなくてはならない)」という心理が働くのでしょうか?
特に階層別研修の若年層(勤続年数1〜3年)の発表を聞いていても、「もっと自身の気持ちや意見を自身の言葉で、表現で伝えてくれたらいいのに」と感じることが少なくありません(だからこの層の研修が一番難しいと感じています)。

知識や経験に裏付けされた回答を求められてしまったらしょうがありませんが、「言葉で表現する(書く、話す、伝える)」ということが苦手なため、それを隠したり、繕ったりするために抽象的で、当たり障りのない表現となり、自身の思う意見を言わない(言えない)という状況を生み出してしまうのではないかと思います(よって、自分自身から発言する職員が少なくなっているように感じます)。

対人援助サービスを提供する職員が、コミュニケーションが苦手では困りものです。
発言しやすい環境づくり(人間関係づくり)に注力している法人・事業所もあります。
しかし、自分の気持ちや考えを的確に表現する(的確ではなくても、伝わるように表現することを諦めない)ためにも、自己研鑽として表現力や語彙力というスキルはきちんと身につけておく必要があります。
また、ケース記録などの文章表現においても同様です(「特変なし」ばかりの職員は要注意)。

SNSやLineでは、絵文字やスタンプといった視覚的に気持ちや考えを表現するツールが盛り込まれており、読者の皆さんの中には多用しているのではないでしょうか。
確かに笑っている表情のスタンプを送った方が、「メールを読んで大爆笑しました(笑)」と返すより、相手の感情にまで訴えかける返答になるかもしれません。

ただし、これは間接的なコミュニケーションであれば成立しますが、対面で会話する直接的なコミュニケーションでは成立しません(朱肉付きのスタンプを押すわけにはいかないのです)。
若年層の職員さんの多くはSNSやLine世代ですので、いきなり「言葉で表現する」ということを強く求めても暖簾に腕押しのようなもの。

表現力や語彙力を高めるためには、本や新聞などの活字を読んで(インプットして)、「言葉で表現する(アウトプットする)」を繰り返していくことしか方法はありません。
コミュニケーションの絶対量が不足していますので、SNSやLineではない直接的コミュニケーションの機会を多く取ることをオススメします。

そうすることで、自分の心理状況や考えなどをきちんと伝えたいという気持ちになり、一つ一つの言葉を大事にするようになります。
それには「忖度」というような難しい言葉が必要かもしれませんが、たいていの場合、本や新聞の表現レベル(要するに、誰が聞いても理解できる表現)です。
是非とも絵文字やスタンプで簡単に意思疎通ができてしまうような単純なコミュニケーションではなく、じっくり言葉を交わしながら、自身の考えや気持ちを伝えるコミュニケーション上手になりたいものです。

管理人



研修テーマの偏りを解消するための要素化

2017年09月10日 | 人財育成
当ブログでも何度か”事業計画書”について取り上げています。
”事業計画書”が法人・事業所をはじめとする組織の成長戦略という位置付けであれば、職員の成長戦略を描くためには”人材育成計画”が必要です。
今回は”人材育成計画”の中でも、特に”研修計画”にフォーカスを当てたいと思います。

年間の”研修計画”を”事業計画書”に盛り込んでいる法人・事業所も少なくないのではないでしょうか。
よくある”研修計画”として、4月の新人研修から始まり、夏場の熱中症予防、冬場の感染症予防などはメジャーで、そのほかにも虐待防止や身体拘束廃止、腰痛予防の介助技術、看取り、リスクマネジメント(事故防止)など、部署や各種委員会を中心に多岐にわたる研修テーマを計画し、できるだけ多くの職員が参加できるような配慮をしつつ、自己研鑽に励まれていることと思います。

ただし、皆さんの法人や施設の研修計画のテーマをよく見てみてください。
計画されているテーマのほとんどが、現場業務に直結する内容ばかりではないでしょうか。
座学だけではなく、デモンストレーションやロールプレイなど、より実践に近い体験型の研修を企画し、職員の理解をより深められる工夫をされていますが、繰り返します、現場業務に直結する内容ばかりではないでしょうか。

そのような研修テーマを「サービス」というカテゴリーでまとめます。
一方、当ブログで取り上げているような経理理念や事業計画書、フレームワークなどの研修テーマを「組織マネジメント」というカテゴリーでまとめると、福祉施設では圧倒的に後者の「組織マネジメント」に関する研修が不足しています。

確かに、現場業務に長けたスペシャリストを育成するという主目的は果たせるかもしれませんが、経営理念をきちんと理解していないのに、「なぜ虐待をしてはいけないか?」「なぜ感染症を予防するための処置を施さなければならないのか?」「なぜ施設で看取り介護(終末期ケア)をしなくてはいけないのか?」という学びが本当に生きてくるとは思えません。
「虐待はしてはいけない(当たり前だ)」「インフルエンザが蔓延しないように(自分がかかったら嫌だし)」といった次元での理解に止まっているのではないかと推察されます。

「組織マネジメント」と「サービス」は車(法人・事業所)の両輪と例えられます。
片方だけ高性能なタイヤを履いた車輪でも、もう片方が溝もないタイヤを履いた車輪では、うまく走れなかったり、途中でパンクしてしまうかもしれません。
では、皆様の研修計画の両輪がきちんと回転するためには、まずは研修テーマを整理することから始めましょう。

具体的には、研修テーマによって、「組織マネジメント」と「サービス」に分類します。
さらに、「(利用者に対して)間接的」と「(利用者に対して)直接的」で分類します。
「間接的」とは、利用者に直接手を触れないが、利用者の生活を間接的に脅かすリスクマネジメンなどの内容を含んでいます。
また、「直接的」とは、利用者に直接手を触れ、利用者が安心・安全に生活を送れるようにする介護技術やコミュニケーション技術などの内容を含んでいます。
これらの4つの要素ごとポイント化し、レーダーチャート化したのが下記のグラフです。
このようにすることで、研修テーマの要素化が図れ、どういった要素の研修を多くしているか(偏り)の可視化が出来ます。
今回は上記の4要素で分類しましたが、皆様の法人・事業所でもっと良い分類軸があれば、4要素だけではなく、独自にカスタマイズしてみてください。



例えば、「理念研修」は「組織マネジメント」「サービス」「間接的」の要素のポイントが高く、それを踏まえて「直接的」なサービス提供につなげるという位置付けのため若干低く設定しています。
一方、「虐待防止」は「組織マネジメント」「サービス」「直接的」の要素のポイントが高く、それを踏まえて「間接的」なリスクマネジメンの意識づけを図るという位置付けのため若干低く設定しています。

あくまでも事例としてみていただきたいのですが、このように「◯◯研修を受講すると、積極性や責任性につながる」といったように、人事考課の情意考課の要素と連動させて研修テーマの要素化を図るのも良いでしょう。
研修計画は法人や事業所単位の計画でもありますが、個人別の育成計画に位置付けられる研修計画にも通じる部分があります。
研修の効果測定という概念がある通り、職員の能力を高次化させる要素または改善を有する要素に必要な研修は何かが可視化されていますので、逆引き的に必要な研修を職員一人ひとりに当てはめることも可能です。

是非、経営理念の実現に向けた人材育成を進める上で偏った研修テーマとなっているのであれば、研修一つひとつにどういった趣旨や身につけてもらいたい要素が含まれているかを伝えるためにも「研修テーマの要素化」に取り組んではいかがでしょうか。

管理人

施設から介護福祉士が消えたなら

2017年08月21日 | 人財育成
こんなタイトルの映画が昔ありましたね。

さて、今日は福祉業界でますます深刻化する人材不足の話です。
5月の日経新聞に、「保育士資格、介護士ら取得しやすく 一部試験免除 」という記事がありました。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の有資格者は、保育士資格を取得する際、保育士の試験科目が一部免除になるという仕組みづくりに着手するという内容です。

この記事だけみれば、保育士不足の解消に向けた、現場を知らない議員による”とんでもない政策”にしか映りません。
例えば、高齢福祉、障害福祉、児童・保育の複合的なサービス提供実践者(ソーシャルワーカーの社会福祉士等と区別するため)を育成するために、職員のキャリアアップやキャリア形成を推し進められるよう、高齢福祉と児童・保育との垣根を下げるために、資格取得を促す特例的な位置付けであれば話は変わってきます。
しかし記事を読み進めればお分かりの通り、待機児童問題を解消するために、保育園を拡充する量的施策の方向性が、ついに人材不足の解消策としても向けられたかというのが、私の最初の印象でした。

しかし、人材不足は保育士に限ったことだけではありません。
高齢福祉業界においても、介護人材不足が発生しており、新規開設の特養などでは、人員配置基準を満たせず、利用者を受け入れず、ユニットを閉鎖している施設などは珍しくない状況があります。
直接雇用の職員は数名で、残りは派遣職員といった有料老人ホームなどもあるという話を聞きますので、需要と供給(ここでは供給したいが、提供できないという状況)のアンバランスが今後ますます深刻化するでしょう。

高齢福祉業界では、介護人材、特に介護福祉士有資格者の存在が、施設経営を左右する重要なファクター(要因)となっています。
具体的には、介護福祉士の有資格者の在籍率が、加算要件になっているということです。
特養では日常生活継続支援加算、デイなどではサービス提供体制強化加算に介護福祉士の在籍率が設定されており、単位数についても毎日算定することが出来る加算なので、増益につながる大きな加算といえます。

例えば、100名定員の特養が日常生活継続支援加算(ユニット型であれば46単位)を1年間取得した場合、
100名×365日×46単位×地域係数10=16,790,000円の増益につながります。

また、30名定員のデイがサービス提供体制強化加算(Ⅰイであれば18単位)を1年間取得した場合、
30名×365日×18単位×地域係数10=1,971,000円の増益につながります。

しかし、経験年数の長い介護福祉士の有資格者の退職、それを補うための未経験の中途採用者の採用を繰り返していくと、おのずと有資格者の在籍率の低下を引き起こし、ひいては加算要件を満たせず減収という最悪のシナリオに片足を突っ込んでいるような施設もあるのではないでしょうか。

この記事は「人財育成」のカテゴリーで書いていますので、その視点で論じようと思います。
大事なのは「なぜ介護福祉士の資格を取得したか」ということが職員一人ひとりのキャリアアップやキャリア形成の中にきちんと目的化されているかどうかが重要です。
「経験年数を重ねて、何となく受験資格を満たせたから」「資格手当が上がるから」といった職員では、どこの組織でもやっていけないでしょう。

大事なのは、「介護福祉士の資格をとったら、こういったキャリ形成の可能性や役割を期待している」ということをキャリアパスできちんと示しながら、組織的に人財育成をバックアップ(試験対策の勉強会の実施や資格取得支援補助金の支給、受験日の公休・出勤扱いなど)することが、結果的に組織への帰属意識を高めることにつながっています。
また、資格を取得することをきっかけとした業務範囲が広がり、向上力を高めながら、組織力やサービスの高次化を図るための個々の目標設定が促され、衛生・動機付け要因で取り上げた「達成」「承認」を繰り返すことで、職員のやりがいやモチベーションが高められる好循環を生み出します。

さらに言えば、介護福祉士有資格のA職員がいることで、「特養では日常生活継続支援加算を取得できているため1,700万円近い増益につながっており、法人経営に携わっているんだよ」ということを経営層がきちんと表出する(言葉で伝える)ことが重要です。
何かを達成したからといって、賃金を上げて欲しいのではなく、経営層から労いの言葉をかけてもらえることを職員はただただ待っているのです。

冒頭の話に戻ると、上記のような職員の動機があって保育士を目指すということがない限り、資格を持っているだけの潜在保育士をただ増やすだけになってしまうということがお分かりいただけたと思います。

資格取得はゴールではなく、あくまでも通過点であることを職員に伝えていかなければ、あなたの法人で仕事をして時間が、ただ受験資格を満たすためだけの3年間で終わってしまいます。

もしも、「施設から介護福祉士が消えたなら」…。

そうならないためにしっかりと現実と向き合いながら、無期転換ルールの活用ナレッジ・マネジメントを用いた組織力やサービスの質の向上を通して、これからの人材問題に太刀打ちしていきましょう。

管理人


組織レベルでナレッジ・マネジメントを機能させるために②

2017年08月16日 | 人財育成
前回の続きで、今日は「ナレッジ・マネジメント」を組織レベルで機能させるためのポイントを紹介します。

前回の記事では、マニュアルは暗黙知から形式知にしたツールと紹介しました。
しかし、ツールで終わってしまっていては「ナレッジ」の蓄積ではありますが、「マネジメント」として機能しているとは言えません。
マニュアルを活用して、業務の標準化や高次化をすることが、経営理念の実現につながる、また利用者満足の向上につながるといったことを職員一人ひとりに浸透させていかなければ、ナレッジが個人レベルから組織レベルで管理できる組織風土や体制にはなりません。

前回の記事で、「皆さんの組織ではマニュアルをなぜ作っていますか、会議をなぜ行っているのでしょうか。」と投げかけ、答え(理由)を考えておいてくださいと書きました。
いかがですか。
経営理念やビジョンから紐解いた目標や目的、ありたい姿に向けた組織力の向上やサービスの質の向上といったキーワードが含まれていますか。

「マニュアルは必要だからなんとなく作っている(見直しをしている)」「情報共有のため報告会として会議を位置付けている」といった答えではないことと思います。

職員による自己満足のサービス提供から脱却するためには、経営理念やビジョンから紐解いた目標や目的、ありたい姿を組織がきちんと示すことで、「もっとこうなったらいいなぁ(向上力)」ということを育むことにつながります。
そうすることで、職員一人ひとりが有するナレッジをどのように生かしていかなければならないか、ということがおのずと定まってきます。
「もっとこうなったらいいなぁ。こういうことが出来ないだろうか?」と思う職員が増えることで、組織のナレッジを探し始め、共感者が集まり、組織的に改善活動が始まるきっかけとなります(イノベーションの原動力を生み出します)。

組織の中には職員の数だけナレッジの原石が転がっています。
知らず知らずの内に「ナレッジ・マネジメント」を実践しているのに十分に機能していないと悩んでいる法人・施設の方々は、是非その原石を磨き、輝かせるためには何をしなければならないか、記事を参考に取り組んでみてください。

管理人

組織レベルでナレッジ・マネジメントを機能させるために①

2017年08月10日 | 人財育成
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
昨日は東京都心でも37度の猛暑日を記録し、夜は蝉も鳴き続けているぐらいの熱帯夜…。
私は一足先に一週間ばかり夏休みを取らせていただき、リフレッシュした気持ちでこの暑さを乗り越えようと思います。

さて、更新が滞ってしまいましたが、今日は先日講師を務めた「ナレッジ・マネジメント」について少しご紹介します。
「ナレッジ・マネジメント」という言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、一言で言うと、「暗黙知から形式知に変換し、組織力の向上やサービスの質の向上を図り、高次化するシステム」のことです。
暗黙知とは、文字や図示されていない「明文化」されていない経験値やノウハウ、情報(=ナレッジ)などを指します。
要するに、自身の内に秘めたるナレッジということです。
一方、形式知とは、この暗黙知を他者と共有できるよう文字や図示したナレッジを指します。
この一連の流れを「ナレッジ・マネジメント・サイクル(SECIモデル)」と呼んでいます。


(野中郁次郎他「知識経営のすすめ」参照)

現場における「ナレッジ・マネジメント」の例として、マニュアルや会議など挙げられます。
マニュアルは職員一人ひとりの内に秘めたるナレッジ(暗黙知)を共有できるよう文字や図示したものです(形式知)。
会議も一つの議題について、より良い成果(結論)を導き出せるよう職員一人ひとりの内に秘めたるナレッジ(暗黙知)を言葉や資料にまとめて討議していることでしょう(形式知)。
「ナレッジ・マネジメント・サイクル」でいうと、共同化→表出化→統合化のプロセスを経ているといえます。 

しかし、多くの福祉施設では「ナレッジ・マネジメントが十分に機能していない」といった課題の一つとして認識しているのが実態ではないでしょうか。
マニュアルや会議を通して、知らず知らずの内に「ナレッジ・マネジメント」を実践しているにも関わらず、十分に機能していない(充足されていない)と感じる理由は何でしょうか。

それは、職員一人ひとりの内に秘めたるナレッジ(暗黙知)を、何に、どのように、どのくらい活用するのかというが組織的に明確に示されておらず、ナレッジを個人レベルで管理していても問題ない、という意識が要因と考えられます。

具体的にいうと、対人サービスである多くの福祉サービスでは、経験値やノウハウなどは、そのほとんとが対応した職員に付いています(個人レベルでナレッジが管理されている状態)。
しかし、そのような状態が続けば、その職員が退職してしまったことで、これまでと同様の内容、水準のサービス提供が出来なくなってしまうことがしばしば起こります(こういった状況を繰り返しているから、「ナレッジ・マネジメント」が十分に機能していないと感じるのです)。
法人や組織が求めるサービス水準ではなく、サービスを提供する職員個人の自己満足によるサービス内容や水準で、果たして良いですか。

ナレッジを組織レベルで管理するためには、逆説的に「個人レベルでナレッジを管理していてはだめだ」「他者とナレッジを共有し、よりレベルの高い(高次化)状態にしなくてはならない」という意識改革を行う必要があります。

意識改革を図るためには、「個人レベルでナレッジを管理していてはだめだ」という状態をいかに作り出せば良いでしょうか。
例えば、皆さんの組織ではマニュアルをなぜ作っていますか、会議をなぜ行っているのでしょうか。
次回までに答え(理由)を考えておいてください。

次回に続く。

管理人


福祉業界らしい働き方改革の波を作ろう

2017年07月25日 | 人財育成
7月24日は"テレワーク・デイ"でした。
皆さんご存知でしたか?
私は新聞を見るまで知りませんでした。

そもそも"テレワーク・デイ"の目的ですが、ホームページから抜粋すると、

『<実施の背景と目的>

2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会では、交通混雑によりロンドン市内での通勤に支障が生じるとの予測から、市交通局がテレワーク等の活用を呼び掛け、これにロンドン商工会議所をはじめとする企業や市民が賛同する形で、たくさんの企業がテレワークを導入しました。

結果として会期中の交通混雑を回避できたことに加え、テレワークを導入した企業では、事業継続体制の確立、生産性や従業員満足の向上、ワークライフバランスの改善等の成果が得られたと報告されています。

2020年の東京競技大会でも、国内外から大勢の観光客が集まり、大会会場周辺で大変な交通混雑となることが予想されるため、ロンドン大会の成功にならい、2017年から2020年までの毎年、開会式に相当する7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけて、テレワーク一斉実施の予行演習を呼び掛けて参ります。
オリンピック・パラリンピックを契機として、全国的にテレワークの普及が進み、働き方改革のレガシーとなることを目指します。』

ということです。




国の働き方改革の動きが活発になるなか、東京都は通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす働き方改革のひとつとして、"時差Biz"をスタートさせました。
取組み例として、時差出勤、フレックスタイム制、"テレワーク"などを挙げています。
私鉄各社が有料座席指定車の導入を進めている背景に、"痛勤ラッシュ"からの脱却があります。

ここでもキーワードとして挙がっている、"テレワーク"。
言葉の意味としては、「ICTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」を指します。
要するに、パソコンとインターネット環境、そして携帯電話があれば、いつでも、どこでも仕事が出来てしまう働き方といえます。
ですので、製造業や対人サービスである福祉サービス従事者の皆様にとっては、"テレワーク"のような働き方はほぼ不可能です。

しかし、現状に甘んじることなく、生産性を高め、効率化を図るためには、"テレワーク"をはじめとした働き方を見直す良いチャンスといえます。
裏を返すと、働き方を積極的に見直さない(見直せない)組織は、求職者からも選ばれず、今後、淘汰される可能性も大いにありえます。
現に福祉業界は給与面や待遇面でも他産業に比べ見劣りする状態ですから、働き方改革の波に乗れるかどうかはなおさらといえるでしょう。

ただし、我々のようなコンサルタントであれば、"テレワーク"を導入することで生産性を高めることができ、結果的に限られた日数や時間でどれだけのパフォーマンスを発揮できたか(会社に貢献できたか)を評価することが出来ます。
しかし福祉サービスでは、「利用者10名を1時間で入浴終わらせました」と言われても、経営層は素直に喜ぶことはできないでしょう。
時間単価という概念がそもそも馴染まないのです。

では、福祉業界においては、どのように働き方改革の波に乗ることが望ましいでしょうか。
一事例としてですが、これまで紙で行ってきたことをデジタル化(ICT化)する。
デジタル化したことで、手書きで行っていた作業時間を大幅に削減することが出来る。
さらにデジタル化したことにより、さまざまな情報がデータ化されたことによる利用者の体調変化や食形態の見直しなどの活用が可能となりました。
その結果、根拠(エビデンス)を持ってサービス提供につなげることができ、体調不良や誤嚥性肺炎予防の取り組みを充実させ、入院者を未然に防ぐことにつながり、高い水準で利用率を維持することが出来ています。

また、ある法人では、テレビ会議を導入し、情報共有や意思決定のスピードを高めています。
"テレワーク"は難しいですが、ICT化することにより、現場の業務や働き方そのものに大きな変革を起こすことは可能です(ただし初期投資が必要です)。

始まったばかりの働き方改革や"テレワーク・デイ"ですが、いつかスローガン(キャッチコピー)で終わるのではなく、当たり前に我々の社会に浸透する時代が早かれ遅かれくることでしょうから、今の内から抜け目のないように。

管理人

中途採用者やパート職員(非常勤職員)の活用戦略の重要性

2017年07月16日 | 人財育成
仕事柄、特養における介護職員の賃金データを取り扱うケースがあります。

勤続年数別に年齢、性別、基本給、手当の構成(夜勤手当、残業手当、介護職員処遇改善加算)、一時金(賞与)などの賃金データです。

集計、分析するための前段階として、不備確認(誤回答の修正)をしていて気づいたのですが、勤続年数と年齢が極端に比例しなくなっているということです。
具体的にいうと、勤続年数別に1年の対象者が、専門学校・大卒者である20歳や22歳ではなく、40歳代や50歳代の方のデータが散見されるということです。

しかも、前者のいわゆる生え抜き職員の基本給と、後者の方との基本給がほぼ変わらない、または逆転現象もみられる状態です。
新卒採用で毎年昇給していればそれなりに基本給が上がりますが、中途採用、特に家計を支える子育て世代でもある40歳代、50歳代と20歳代の給与水準が同じということが、今の産業としての福祉分野の弱さと指摘せざるおえません。

福祉の担い手不足がますます深刻化する中、中途採用者やパート職員(非常勤職員)をいかに組織的に取り込んでいくかということが求められます。
中途採用者、特に他産業経験のある職員を採用することは、井の中の蛙状態の福祉の組織に新たな風を取り入れる絶好の機会となります。
組織やサービス内容の改革や業務の効率化など、生え抜き職員でも経験したことのない改革を進めるには即戦力となるケースが少なくありません。
そうした人材のこれまでの経験やノウハウをきちんと評価し、前歴換算で基本給や役職などに反映させていくことが、中途採用戦略の大きなポイントとなるでしょう。

また、職員構成の大半を占めるパート職員(非常勤職員)については、いかに主体的に有する能力を建設的に発揮してもらえるかが重要です。
パート職員(非常勤職員)は正規職員と比べて、能力が低いというわけではありません。
雇用期間が無期か有期か、常勤換算職員数で1人かそれ以下か(週40時間×4週=160時間職務に従事できるか否か)といった線引きでしかありません。
ある施設では、ユニットリーダーを子育て中の時短職員が担っており、他の職員がサポートしているケースもあります。
「正規職員=有能」という方程式だけではもう成立しない、多様な働き方を受け入れ、展開していく時代です。

皆さんもご承知の通り、ディズニーランドの職員の9割はバイト職員です。
そのバイト職員が経営理念をしっかり自分ごとととして捉え、主体的に来園者にサービスを提供し、楽しいひと時を提供しています。
福祉のパート職員(非常勤職員)をいかに組織の一員として、役割を担ってもらえるか(担わせるか)は働き方改革にも通ずる信念とも言えます(パート職員(非常勤職員)を生かせている組織が、正規職員ばりに経営成果や組織改変に成功している書籍もありますね)。

来年度から対象者が出てくる有期契約者の”無期転換ルール”。
労働契約法の改正により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
”無期転換ルール”に関するご相談の多くは「人件費の増加」です。



しかし、そこだけに目を向けていては何も始まりません。
人手不足による企業倒産が増加する中、”無期転換ルール”を逆手にとった中途採用者やパート職員(非常勤職員)の活用戦略をきちんと描くことが必要です。

個人面談などを通して、権利を認める代わりに、組織の中の義務をきちんと果たす必要があることを伝え、帰属意識を高めていき、組織の永続発展の基礎固めを進めましょう。

管理人

相手あってのコミュニケーションとなっていますか

2017年06月20日 | 人財育成
毎年研修講師を務めている法人から、今年度の希望する研修テーマを提出していただきました。

法人で一番大切な概念としての「経営理念」や人材育成のための「被考課者研修(自己評価)」などが挙げられていました。
その中で気になったのが「コミュニケーション・接遇」というテーマが毎年のように挙がっていることでした。

社内の会議では、「なぜ、この法人職員はこれほどまでに「コミュニケーション・接遇」というテーマを挙げてくるのか?」「毎年研修を行っているのにも関わらず、充足されない理由は何か?」と問題提起がなされました。
議論の末、「もしかすると、日々のコミュニケーションが相手への興味・関心が欠如した形式的なコミュニケーションになっているのではないか?」という結論に至りました。
そして、今年はコミュニケーションの本質ともいえる相手への興味・関心を持つための「コミュニケーション・接遇」に関する研修を提案することとなりました。

上記法人のように、皆様の法人・施設でも職員のコミュニケーションに課題を抱えてはいないでしょうか。
お客様先からは「伝えているが、理解されない」「相手の考えていることがよく分からない」といった声をよく聞きます。
「コミュニケーション」の言葉の意味としては、「言葉などを通じて、相手に伝えること」と訳されます。
要するに「コミュニケーション」とは相手あっての意思疎通のための手段といえます。

相手に伝える、意思疎通を行うためには、相手の立場に立って行うことが重要です。
すなわち、伝える側(発信者)の都合だけでコミュニケーションを行ってもうまくいきません。
受け手側(受信者)にとって受け取りやすいような事前情報(土壌づくり)を提供し、齟齬が生じないように伝えることが必要ということです。

また、上司が部下に伝えたにも関わらず、「聞いていません」「知りませんでした」という返事が返ってくることがままあるというのが現場レベルの話です。
上司に方々がいかに部下の方々を思いやりながら伝えているかということの表れといえます。

ただし、受け手側(受信者)に問題があるケースもあります。
それは部下が上司の発言や組織に対して興味・関心を持っているかどうかです。
上司がなぜこのようなことを伝えているのか、組織がなぜこのような決定をしたのか、興味・関心を持っていないと「聞いていません」「知りませんでした」となってしまいます。
理念やビジョンを伝えながら、職員一人ひとりが何をしなければならないかを考えて、行動できる(考動力)ことは、まさに自分事として認識できている職員の証といえます。

今一度、相手あってのコミュニケーションとなっているか、振り返ってみてください。
組織内コミュニケーションや職員同士の関係性がぐっと良くなるのではないでしょうか。

管理人

考えて、行動できる人財を育てるためには、「イメージ力」を鍛えよう

2017年06月08日 | 人財育成
今年度業務が本格化する中、今年度も職員研修の講師を務める機会を多くいただいています。

あるお客様から希望する研修テーマとして、「イメージ力」というキーワードをいただきました。
「イメージ力」で検索すると、書籍を始め、いわゆる「イメトレ(イメージトレーニング)」的な内容のサイトが多くヒットします(興味がある方は、覗いてみてください)。
今日は、福祉サービスを提供する上で重要な「イメージ力」とは何かについて、考えてみようと思います。

今日取り上げる「イメージ力」とは、いわゆる「イメトレ」的な視点が強いですが、「想像力、発想力、仮説力」をひっくるめて「イメージ力」と定義付けてみましょう。
「想像力」を駆使することで、「イメトレ」的なことを行うことができます。
例えば、翌日入所される新規利用者のフェイスシートや事前面談シートの情報を基に受け入れ準備を行うなどは、まさに「想像力」と言えます。

また、同じような意味合いで「発想力」があります。
「発想力」の方がよりアイディアを持ち、クリエイティブな意味合いが強いように思いますが、「想像して、新たな発想につながる」といったように、一心同体のような関係と言えます。

この「想像力」と「発想力」を鍛えるワークとして、ケース討議があります。
例えば、「〇〇といった場面では、どういった判断をすることが望ましいか考えなさい」といったように、職員一人ひとりが考え、発言し、一つの解を導き出すワークを想像してみてください。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、「インバスケット」に近い内容でも良いと思います。
ただし、出来るだけ具体的な現場のある場面が望ましいと思います。
なぜならば、現場職員がイメージしやすいものだからです(インバスケットのように、全く関係ない他業種のケース討議をしても、望ましい解が導き出せない可能性すら想定されます)。

そして今回の「イメージ力」の中で最も重要な視点が「仮説力」です。
私のようなコンサルタントは、お客様訪問の前に開示されている情報をチェックし、どういう法人・施設であるかをイメージします(すなわち「想像して、組織の抱える課題について仮説を立てる」プロセスです)。
そして、実際にお客様との会話の中から仮説を検証し、実際の組織の抱える課題を整理していきます。
仮説を立てるということは、イメージ(目標や望まれる姿)と現実のギャップを埋める作業の入り口となり、いわば現状分析といっても過言ではありません。

この仮説を立てることは「なぜ(Why?」思考から出発します。
例えば、A施設の利用率が低い理由はなぜか?
(仮説:この地域の待機者がいないのか?入院者が多いのか?職員が確保できず、受け入れられないのか?)

また、Bさんの転倒リスクが高まってきているのはなぜか?
(仮説:福祉用具が適切なものを使用できていないからか?日中活動やリハビリが十分ではないのか?)

前回取り上げたフレームワークなどを用いて、課題を細分化し、仮説を詳細に立てながら、その関連性を分析していくことも有効です。
サービス提供を行う上では、日々のケース記録や関わりの中で利用者の変化をつぶさに察知し、仮説を立てながら、ケアプランをどのように見直していくべきか検討されているでしょう。
また、経営的な視点で言えば、上記の事例のように、「なぜ(Why?)」思考で課題を細分化、事業計画などに落とし込み、実践することが必要です。

ある書籍で、現代人はイメージする機会が減ったといったような内容が書かれていました(『叱られる力 聞く力2』だったかな?)。
何かわからないことがあれば、今はすぐにスマホを取り出し、検索して、正しい解を導き出してしまう。
昔の人は、あーでもないこーでもないとたわいもない話が延々と出来たが、今は会話が続かない、といった内容でした。

また、「イメージ力」を鍛える書籍として、先日久しぶりに読み返した『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』がオススメです。
「イメージ力」を鍛えることは、結果として、考えて、行動できる人財育成につながります。
なぜならば、ちょっと困難な場面に直面しても、どう乗り越えれば良いか想像して、解決方法を発想して、目標を見定めながら(仮説を立てて)実行するということが出来るからです。
ちょっと困難な場面に直面しても、「イメージ力」という抗体を持っていない職員にとっては、ただ「大変だ(嫌だ)」で終わってしまい、いつまでたっても踏ん張りがきかない職員のままとなるでしょう。
内部研修のワークでケース討議などを組み入れ、「イメージ力」を鍛えてみてはいかがでしょうか。

管理人

福祉系以外の人財にも魅力ある職場・育成制度の確立が人財確保戦略につながる

2017年05月27日 | 人財育成
ある法人様のご支援をさせていただいているのですが、そのご支援の一つに「生活相談員クラスの育成」があります。
生活相談員クラスといえば、施設長の次に施設経営を担う立場・役割を有する存在といっても過言ではありません。

そんな生活相談員のある方から、「自分たちがやりたい介護を出来なくなってきた」という発言が出ました。
それを聞いて、「どうしてですか?」と尋ねてみました。

すると、「利用者と毎日楽しく接していたのに、利用率や事業計画とかいわれて、現場に出る機会が少なくなってきた」といった趣旨の理由でした。
皆さんの施設ではこのような発言をする生活相談員がいた時に、どうのような返答をされますか。

私はコンサルタントという立場もありますので、「皆さんの役割が大きく変わってきたからです」と即答しました。
次世代の施設経営を担う存在にもかかわらず、「自分たちがやりたい介護=利用者と接すること」という視野では、一介護職員の域から脱していません。
生活相談員としての資質を理解していないか、そもそも欠如しているのか…、先方の担当者もがっかりしてしまいました。
そのような意識の職員が多いからこそ、「生活相談員クラスの育成」が必要という法人判断に至ったのです。

私もコンサルタントになるまでは、在宅介護事業所の介護職をしておりました。
正直、上記のような生活相談員のようなことを平気で口にしていたと記憶しています。
しかし、コンサルタントになり、介護事業はビジネスであること、経営理念や事業計画、人財育成が組織の成長を促進させるためには必要不可欠であることを学びました。
介護事業がきちんとしたビジネスであり、経営理念や事業計画などの必要性を早い段階(入社時のオリエンテーションなど)で職員に理解させ、組織の一員としての役割や責任を意識づけさせることが重要となります。
上記の生活相談員も結果的に「生活相談員」という立場になりましたが、組織の中の役割や責任という点では、さらなる成長が必要といえます。

多くの法人・施設での人財採用は福祉系専門学校・大学の卒業生ではないでしょうか。
介護人財不足がますます深刻化する中、限られた人財のパイでは、まさに取り合いが生じてしまいます。
また介護職の多くは、介護技術のレベルは高いですが、介護をビジネスではなくボランタリーとしての意識が強く、マネジメント感覚というのが弱いというのが、多くのお客様からの声として挙がっています(一般企業で当たり前のことが、介護業界では受け入れられないといったことはままあります)。
現場からの福祉経営に関するカリキュラムの充実・強化の声は、養成校として生き残るためにも、参考にしてもらいたいと思います。

今後、人財確保のための戦略として、いかに福祉系ではない卒業生にも魅力を感じてもらえるような職場・育成制度を有する法人・事業所となるかが重要と言えます。
要するに、介護事業がきちんと他の産業同様ビジネス体系化され、職員がやりがいや成長を感じられ、キャリアアップ(キャリア形成)ができる職場にしていかなければ、いつまでたっても介護事業が他産業に比べ下にみられてしまう状況から脱することはないと考えられます。

「積極性」や「自主性」の要素に重きを置いた人事考課制度を実施し、法人・施設の変革(業務改善や人財育成)に貢献している職員のモチベーションを好転させる工夫や、フィードバック面接をしっかり行い、キャリアアップ(キャリア形成)を組織としてバックアップするなど、評価にメリハリをつけることで、職員自身の成長を促していきましょう。

「職員が不足していて、それどころではない」というかもしれませんが、「人材の育成なくして、充足なし」です。
せっかく採用しても、定着を促す育成がなければ、結局は退職につながり、職員が充足することはありません。
「卵が先か、ひよこが先か」、人財問題に関して、負のスパイラルに陥らないよう注意してください。

お客様の中にも経済学部卒業でMBAを持っている施設長や商学部卒業でコミュニケーション能力が高い職員などが増えてきています。
様々な価値観を持った職員を採用することができれば、組織をさらに活性化することにつながるでしょう。

管理人

アウトカム思考で目的意識を共有し、成果を上げる組織へ

2017年05月01日 | 人財育成
介護サービスの効率化・合理化を進め、さらなる成果報酬体系を促進させるために、アウトカムを設けるという意見が出ています。

昨年度の給付費分科会においても、「介護報酬でのサービスの質の評価の 導入に関する取組について」という資料の中で、アウトカムについて取り上げられています。
アウトカム(outcome)は「成果」と訳され、「サービスによりもたらされた利用者の状態変化(在宅復帰等)
」がその成果の一例として挙げられています。

似たような言葉に、「インプット(input)」「アウトプット(output)」という言葉があります。
皆様もご存知の通り、「インプット=入力」、「アウトプット=出力」という意味です。
ビジネスでは、インプットは知識などを身につけ、アウトプットで実践するといった意味で使用することがあります。
アウトカムは、インプット、アウトプットの先にある、「成果」という位置づけと言えます。

一例にあった「サービスによりもたらされた利用者の状態変化(在宅復帰等)」とは、個別ケアについてのインプットを行い、日々のケアや生活支援でアウトプットする、というところまでは想像がつきやすいでしょう。
そこから具体的に利用者の状態変化や在宅復帰等までに結びつけるには、職員がアウトカム(成果)の目的意識を共有し、一丸となって注力して取組むことが必要ですし、また家族との連携も必要になります。
さらにアウトカム(成果)を上げるためには、インプット、アウトプットを通した活用(応用)なくして、実現しません。

インプット、アウトプットだけであれば、そう難しくはありません。
なぜならば、アウトカム(成果)を求められないからです。
例えば、研修に参加して学ぶ(=インプット)、研修報告書を作成する(=アウトプット)、といったことが往々にして行われていると思います。
しかし、これではせっかくの研修で学んだことが人についてしまい、組織としてのアウトカム(成果)には繋がりません。
研修報告書に「研修受講を踏まえ実践すること」「3ヶ月の成果」「6ヶ月の成果」などの項目を追加して、現場で実践し、定期的な進捗管理を行うことで、初めてアウトカム(成果)が組織にどの程度浸透したか測ることができます。

アウトカム(成果)という概念は、上記のようなことだけではありません。
例えば、ケアマネジメントを行う上でのアセスメントやモニタリングなどのケアプラン(個別支援計画など)の取組みは、ただ計画を立てているだけではなく、利用者の個別課題を解決するという目的があります。
それを達成することはまさにアウトカム(成果)と言えます(だからこそ、ケアプラン内容の個別化・具体化が求められています)。

インプット→アウトプット→アウトカムを意識して、サービスの質の向上しかり、自身の成長を促していきましょう。

管理人


貴法人で働く動機付けは「達成」「承認」「仕事そのもの」

2017年03月29日 | 人財育成
人事制度の構築・見直しをする際に、現状分析としてアンケートや職員へのヒアリングを行うと、必ずといって良いほど、組織に対する不満の声が挙がります。
その多くは給与に関する内容と頑張っているのに評価されないに大分することができるほどです。



ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、今回はハーズバーグの「衛生・動機付け要因」をご紹介します。
衛生要因とは、不足すると不満が高まるが、充足してもそれ以上にはならない要素を指します。
図では、「会社の方針と管理(理念やビジョンのズレ)」「給与」「監督者との関係、同僚との関係性(人間関係)」が多くを占めており、離職者に多い理由と近い傾向があります。
給与の不満が多く挙がりますが、給与を高くしても、いつの間にか当たり前になってしまい、仕事を頑張るというやる気(モチベーション)には繋がりません。

一方、動機付け要因とは、不足しても不満にならず、充足するとやる気(モチベーション)アップにつながる要素を指します。
図では、「達成」「承認」「仕事そのもの」といったやりがい、「昇進」「成長」といった育成の要素が多くを占めています。

前回までキャリアパスや処遇改善加算について取り上げてきましたが、この衛生・動機付け要因の両要素を含んでおり、だからこそインセンティブとして活用してください、とお伝えしました。

また、冒頭取り上げたように、「給与」と「評価」についての不満が多いと書きましたが、これも衛生・動機付け要因の両要素を含んでいます。
特に「評価」とは、イコール「承認(認める、褒める)」といったことを指しますから、日頃から職員に対して「承認」していなければ、「頑張っているのに評価されず、給与も低い→(だから)退職する」といった負の方程式が成り立ってしまいます。
「頑張っているから評価された→(でも)給与が低くてもやりがいがある」と思ってもらえれば、法人・施設を選んで働きがいを感じながら仕事をしてもらうことが出来ます。

職員が給与が低いと感じる要因として、業務量・負荷との見合いから、不満を引き起こします(モラルサーベイの傾向より)。
大変な利用者を受け入れたからといって、その方の利用料が倍になるわけではないので、結果的に「大変」という気持ちしか残りません。
しかし、施設長やリーダー層から、「大変だったけど、よく対応してくれたね。ご家族も喜んでいたよ、ありがとう。君がいてくれたおかげだよ。明日はゆっくり休んで、また頼むな」なんて言ってもらえれば、一つ階段を登った気持ちになりますし、自身の帰属意識も高まるというものです。

皆さんは日頃から職員にこのような言葉かけをされていますか?
職員の動機付けを促すためにも、「達成」「承認(認める、褒める)」を行いながら、「仕事そのもの」にやりがいを感じられるよう職員と向き合っていきましょう。

管理人

資質向上やキャリア形成のインセンティブとして処遇改善加算を活用する

2017年03月18日 | 人財育成
前回の記事で取り上げた介護職員処遇改善加算について、もう少し深掘りします。

前回の記事でも、「介護職員処遇改善加算のことを諸刃の剣に例えられる方もいらっしゃいますが、私としては、うまく運用していただき、制度の目的でもある「介護職員の資質向上や雇用管理の改善」「資質向上やキャリア形成を行うことができる労働環境を整備する」「介護職員の社会的・経済的な評価が高まっていく好循環」を作り出し、職員に誇りを持って介護の仕事に向き合ってもらいたいと思っています。」と述べました。

経営層(理事長・施設長)から私どもに「では、処遇改善加算をどのように職員に還元したらよいか?」という質問を多くいただきます。
現場の事務長などは、「年度末に一時金として支給すれば、入りも出も同じでしょう」という手っ取り早い方法を示すかもしれません。

しかしそのような支給方法で、果たして介護職員の資質向上やキャリア形成を後押しするようなインセンティブ(動機付け)となるでしょうか。
職員一律に同額を支給されれば、真面目に法人・施設、利用者のために毎日頑張っている職員からすれば、面白くはないでしょう。
「正直者がバカをみるような社会にしてはいけない」という中学校時代の恩師の口癖が印象的に残っています。
まさに人事・給与制度は「正直者がバカをみる」ような制度では運用も、職員の育成、定着もままなりません。

だからこそ、処遇改善加算分を例えば、夜勤手当に上乗せし、夜勤を頑張って入ってくれる職員に還元する、また介護福祉士などの資格を目指すために資格手当に上乗せするなどの支給方法を勧めています(現に手当に上乗せし、余剰分をメリハリをつけて一時金として支給している法人様がいらっしゃいます)。
このような支給をする上で大事なのは、各種手当の基礎額と処遇改善加算の上乗せ分を明確に分け、職員に周知を図る必要があります。

例えば、「通常の夜勤手当は5,000円であるが、介護職員処遇改善加算が支給されている期間に限り、3,000円を上乗せして支給する。ただし、介護職員処遇改善加算がなくなった時点で、上乗せして支給する加算相当額は廃止する。」といった補足文を明示するなど、職員が誤解しないような対応が必要となります。

少し手間ですが、処遇改善加算を介護職員の資質向上やキャリア形成のインセンティブ(動機付け)に活用しなければ、「もらえて当たり前」という状態を招くことでしょう(ひいては、37,000円もらえていない、理事長・施設長が何か悪いことをしているのではないかという悪い噂が流れるかもしれません)。
きちんと処遇改善加算について職員一人ひとりが理解するとともに、組織・サービスの高次化に向けて取り組む職員への成果報酬という位置付けにすれば、おのずと頑張る職員とそうでない職員との淘汰がなされ、前者は次世代の法人・施設を担っていく人財となることでしょう(そのためには、きちんと理念の浸透や職員一人ひとりが自身の役割などをきちんと理解する(させる)アプローチが必要であることは言うまでもありません)。

参考までに、厚労省から処遇改善加算に関するQ&Aが出ましたので、合わせてご確認ください。

管理人

あまりにも多い介護職員処遇改善加算の勘違い

2017年03月13日 | 人財育成
4月から介護職員処遇改善加算が拡充され、加算Ⅰでは月額37,000円(現行よりプラス1万円)となります。
以前、「処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅲを明確にし、キャリア形成の後押しを」の記事で、新しい要件については取り上げました。

今回は、介護職員処遇改善加算の仕組みについて、改めて取り上げます。
介護職員処遇改善加算は要件を満たすと、施設に勤める職員一人当たり37,000円が自動的に振り込まれ、そのまま介護職員へ還元される加算、ではありません。
よって、新聞やニュースで「1万円増額」「37,000円」といった数字だけが一人歩きしてしまっているため、「うちの施設は37,000円支給されなかった(何か施設長は悪いことをしているのではないか?)」と不信感を抱く介護職員も多くは、頭を悩ましている施設長や経営層が少なくありません(辞められる職員もいると聞きます)。



介護職員処遇改善加算は、「サービス別の基本サービス費に各種加算減算を加えた1月あたりの総単位数にサービス別加算率を乗じた単位数を算定する」ことが謳われています。
特養であれば8.3%、デイサービスであれば5.9%を総単位数に乗じた額となります。
よって、入院者が多く、空床が埋まらず(利用率が低下し)、総単位数が減れば、自ずと施設に入る介護職員処遇改善加算相当額は減る仕組みです。
また、他の加算と大きく異なる点は、区分支給限度基準額の算定対象から除外されます、要するに利用者の自己負担が発生しないという性質を持っています(なので、介護職員の、介護職員による、介護職員のための処遇を改善する加算といえます)。



支給方法は基本給や手当、賞与など自由ですが、「安定的な処遇改善が重要であることから、基本給による賃金改善が望ましい」と記載されています。
しかし、お客様の多くは、加算のはしごが外された時、法人・施設負担として職員一人当たり37,000円降りかかってくることを懸念し、手当の増額や年度末に一時金として支給しています。

また、毎月一定額支給している施設では、利用率が低下したため、支給額相当額を受け取られず、法人負担となっているお客様もあります。
介護職員処遇改善加算のことを諸刃の剣に例えられる方もいらっしゃいますが、私としては、うまく運用していただき、制度の目的でもある「介護職員の資質向上や雇用管理の改善」「資質向上やキャリア形成を行うことができる労働環境を整備する」「介護職員の社会的・経済的な評価が高まっていく好循環」を作り出し、職員に誇りを持って介護の仕事に向き合ってもらいたいと思っています。

そのためには、まずは職員自身が当事者意識を持って、正しく加算要件を理解することが必要です。
職員一人ひとりが自分たちの処遇をこれまで以上に改善していきたいと願うのであれば、利用率を高水準で維持させなければなりません。
介護職員の読者のために、誤解を恐れずに書かせていただくと、法人や施設だけの責任や努力だけではなく、職員による取組み成果があってこそ、初めて介護職員処遇改善加算により職員一人ひとりの処遇を改善することが出来るというものです。
例えていうならば、営業成績の悪い営業マンに高額な給与や賞与を支給しない原理と同じです(処遇改善のための原資(加算)をみんなの取組み成果として取ることは、法人や施設の永続発展のためには必須条件です)。
しかし、”戦略マップ”や”BSC(バランストスコアカード)”でも取り上げたように、「財務の視点」を達成するためには、「成長と学習の視点」から取組む必要があります。
ぜひ、職員のやる気を引き出しながら人財育成(資質向上)と収入増の両輪を回し、職員の処遇改善につなげていけるようストラテジー(戦略)を考えましょう。
また、法人・施設としても、職員が変な不安を抱かないよう、きちんと説明し、職員へ周知を図る姿勢を示すことが重要です。

詳しくは、3月9日付で厚労省から出された通知をご参照ください。

管理人

仕事をする上で大事にしているスタンス(考え方)を持とう

2017年02月18日 | 人財育成
引っ越し先のブログが承認されるまで、こちらで更新していきます。

皆さんは仕事をする上で大事にしているスタンス(考え方)みたいたものはありますか。
私は、昔上司だった方から言っていただいた言葉で、今も仕事をする上で、大事にしているスタンスがあります。

⑴細部まで気を配った頑張り方
⑵自分の解釈にならないよう確認する
⑶当事者意識を持つ
⑷自分のために頑張る
という4つの言葉です。

簡潔なワンメッセージですが、仕事をするうえで大事なキーワードとして、自身の心の中に大事にしまっています。
4つの言葉のなかで、特に「⑵自分の解釈にならないよう確認する」、ということはチームで仕事をする上で、また福祉の現場で専門性を持った多職種が協働でケアや援助をしていくためには、必要不可欠なキーワードです。
しかし、私を含めて、ここが十分ではなかったり、苦手な方々が多く、連携して仕事を成功させたり、多職種がそれぞれ違った方向性で業務を行ってしまうということが少なくありません。

ここで大事なのは、何よりもしっかりと方向性を確認し、価値観をすり合わせることが重要です。
そのために会議や打ち合わせを重ね、皆んなで解を出すプロセスが必要です。
そのプロセスをきちんとファシリテーションできる存在がリーダーといえる立場の方ではないでしょうか。

うまく行っている組織では、このプロセスを大事にするため、月1回の会議をあえて2回に増やしたり、現場レベルの打ち合わせの回数を増やすなど、その都度方向性を確認したり、価値観をすり合わせる機会を多く持つ工夫をしています。

斯く言う私も、部下に仕事を依頼する場合は、部下の解釈になっていないか確認したり、アウトプットイメージのすり合わせを何度も繰り返していきます。
そうすることで、「⑶当事者意識を持つ」ということにもつながります。
案件ごとに誰をアサインするか、またアサインされるか、は同じ価値観を共有でき、結果(成果やアウトプット)をきちんと出せる人材に集中するものです。

ただし、そういった人材に集中することは、組織上良い状態とは言えません。
どの職員もこのような存在になってもらう必要があります。
是非、職員との個別面談時などを生かして、仕事に対してどういったスタンスを持っているかについての共通認識を図っていきましょう。

管理人