すずりんの日記

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小説「マリアの微笑み」⑩

2005年04月22日 | 小説「マリアの微笑み」
 彼女は、子供が欲しい。・・・なぜか。それは、「我が子、キリストを失ってしまった」からだ。でも、どんなにマリアが子供を欲しがったって、それに、どんなに杏子が元気な子供を産める体であったって、その2つを結びつけるものなど、あるわけが無い。人間の精子と石膏の像の卵子が1つになって分裂するなんて、真面目に考える気も失せてくる。

 まるで、笑い話だ。
 
 ここまで段階を経て、考えを巡らせて、結局、有り得そうなことは1つとして無い。一番確率として高いのは、「杏子の思い過ごし」ということだ。でももし、残りの2つの仮定―――お腹の子が、杏子と他の男との子であるということと、お腹の子が、彼氏と他の女との子であるということ、もしくは、お腹の子が、彼氏とマリアの子であるということ―――のいずれかを、事実として認めるとしても、一体、結婚式当日に何が起こるというのだろう。何が起こるのを予感して、杏子はあんなに怯えるのか。そして私は、杏子を何から守り、どう対処すれば良いのか。
 
 いろいろな問題が頭に浮かんでくるが、事の重大さを予想できないうちは、下手に答えを出すべきではない。私は、止まることを知らない自分の想像力に、そう歯止めを効かせて、マンションのエレベーターに乗った。


(つづく)
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