すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「マリアの微笑み」⑨

2005年04月20日 | 小説「マリアの微笑み」
 ―――「金縛り」なんていうのは、珍しいものじゃあない。私はまだ遭ったことは無いが、私の周りにいる親しい連中は、(杏子も含めて)「金縛り」どころか、霊体験なんて日常茶飯事、という人ばかりだ。私の友人の体験からみれば、杏子が言っていた体験なんて、ほとんど子供騙しに近かった。杏子だって、その程度のことはわかっているはずなのに、なぜわざわざ私に告白したのか。
 
 それはきっと、今まであったことは子供騙しでも、これから起こること次第では子供騙しでは済まなくなるということだろう。・・・とすれば、杏子が言っていた、あの「マリア様」の目的は何だろう。一体、何をしたくてあの2人の前に現れたのか。あの話だと、マリアは、2人に子供を授けると言ったということだったが・・・。その予言通りに身籠った杏子。しかも彼女は前から子供を欲しがっていた。普通ならここで、めでたしめでたし、杏子たちは、マリアに感謝してもしきれないはずなのに・・・。
 
 彼女は、お腹の子は自分と彼の子ではないと言っていた。ということは、彼女と他の男との子か?・・・いや、まさか。それなら、今日うちに来て、わざわざ霊体験など語らずに、その男と別れる別れないの問答になっただろう。はっきりと言わずとも、彼女のことだから、話の端々に、その男の影がちらついてくるはずだ。行きずりの関係とか強姦ということならなおさらだろう。とにかくそんなことは、その子供が、「杏子の彼と他の女との子」であるということよりも有り得ないことだ。他の女と彼との関係でできた子供を、杏子のお腹で育てるなんて、代理出産でも、子宮を貸してくれる女の人の了解なしでなされることなんか無い。
 
 子供が欲しい、それも、産婦人科や生活面の領域では何の障害も無い杏子が、子宮を借りる方はもちろん、貸す方にだって、最適であるはずがないじゃないか。
 

 ―――いや、ちょっと待てよ。1人いるぞ。・・・代理出産の、それも、子宮を借りる方に最適な女が。


(つづく)
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