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バリアブル基本コース データロガーの解析(23番さん)

2008年03月21日 | 上級テクニック
 ぼちぼちと進めます。データロガー解析シリーズ第二弾です。
 今度の23番さんは、中級ではかなり前の方を走る実力のある方で上級への参加
およびジムカーナへの挑戦もされている方です。
 先の4番さんと比べるとおそらく周回で3~4秒程度遅れていると思われますが、
かなり上手なライディングをされています。グラフを見てみましょう。



 ぱっと見て、4番さんとの違いは、スロットルの開けっぷりです。4番さんは、ス
ロットル開度30%から最大で50%程度だったのですが、23番さんは100%開
けているところが何箇所もあります。
 旧型の1300でこんなに開けるとはすごい度胸だとこのグラフを見たRRさん
が感想を漏らしていました。

 ここで、二つの疑問が出てきます。一つは、なぜこんなに開けられるのだろうと
いうことであり、二つ目は4番さんよりも開けているのにタイムが遅いのはなぜだろうということです。

 23番さんは冒頭に述べたように、ジムカーナにも挑戦される向上心の強い積極的
な方ですから敢えて問題点という表現をすることを許していただけると思って、以
下に分析を延べることにします。

 スロットルを開けることはとても必要なことなのですが、いきなりこれだけ開け
るためにはバイクが直立していなかればなりません。ドリフト走行をしているなら
ば別ですが。
 従って、このようなスロットルの波形を見せる人は、パイロンを小さく回り、完
全に回り終わってからバイクを立てて、そこからスロットルを目いっぱい開けると
いう乗り方をしています。大排気量車の立ち上がり加速力を活かすために直線を長
くしてドンと加速するわけです。そのためにはパイロンを旋回するときにブレーキ
を長く引き摺ってスピードを十分に落として小さく回るようにします。23番さんが
そうであるかはわかりませんが、一般的には最後にハンドルを切り増してバイクが
起きたところでハンドルを戻して、スロットル目一杯オープンということになりま
す。

 このライディングスタイルは間違っていませんし、特に、ドン付きの強い旧型
1300の場合、安全な加速方法と考えることができます。
 しかし、逆に考えると、100%スロットルを開けているのに、加速がついてこ
ないからこそ、そこまで開けることができるのだということも言えるのです。

 23番さんの場合、テーマは明快です。それは「旋回時の最低速度を2km上げ
る」ことです。ないしは、今週の平日開催のHMSで某イントラが表現したという
「大きく開けるのではなく早く開ける」ということだと思われます。
 つまり、旋回速度を高めるとコーナーの脱出速度が高まるので、スロットルの
「つき」が良くなります。そのためにスロットル開度は小さくても加速はついてき
ます。ただ、そのために旋回半径が大きくなるとすると、コーナーでロスする時間
が大きくなります。

 詳しくは説明できないのですが、グラフを注意深く読み取ると、以下のような傾
向がわかりました。下の表は、先にあげた4番さん、23番さん、それからもう一
人上級常連の15番さんの3人の速度を比較したものです。どの場所なのかがわか
らないので、それぞれのコーナーにおける最低速度と、そこから加速してブレーキ
ングを開始する直前の最高速度を並べています。(読み取り誤差があるので推定値
であることをご理解ください)



 これを見ると4番さんに対して23番さんは、最高速度はそんなに変わらない
か、もしくは高いのに、最低速度の方は押し並べて3から5km下回っていること
がわかります。タイムという観点からは、最高速度が遅いよりは最低速度が速いほ
うが一般に有利になります。
 もしもUターン180度を回るのに4メートルとして、時速12km秒速3.3
mで旋回するときと、時速10km秒速2.8mと比較すると一つのコーナーあた
りコンマ2秒の差がつきます。10回回れば2秒の差ということになります。
 単純な議論ではないのですが、そういうことが、より速く走るためのテーマにな
なるだろうと考えられます。

 また、詳しく見ると、4番さんより23番さんのほうがフロントブレーキの入力
が大きい傾向があり、「しっかり減速して小さく回る」という方向で操縦している
と思われます。

 このような小さく回ってドンと加速するスタイルは、大排気量車で、a)パイロン
とパイロンの間が長く、直線が作れて加速のメリットを活かせるコースや、b)大き
く回ると次につながるラインが制約されて、その分損をするようなレイアウトでは
有効です。
 逆にc)パイロンとパイロンの間隔が短くてアクセルを開けると前後のピッチング
モーメントが強くなってフロント加重が乱れやすい(従って、フロントが抜けて思
ったより小さく回れなくなったりする)コースや、d)旋回半径が中途半端なコー
ナーが連続するようなコースでは最低速度を高めるようなスタイルが有効です。

 これは両方使えて、レイアウトによって使い分けることが望ましいのです。バリ
アブル基本コースで言えば、例えば赤③と赤④の間が離れているので、③は小さく
回り④に向かって加速。赤④と赤⑤の間は短いので④はスピードを落とさないよう
に回って⑤につなげるといった考え方をします。

 今回のデータロガーに関して言えば、使用した7号車が、特にブレーキが不調だ
ったようで、参加された皆さんの皆が「乗りにくかった」と言っていますので、普
段のイメージとはかけ離れたライディングであっただろうと思います。そういう点
ではお気の毒だったのですが、好対照のデータが得られたので、あえてそういう分
析をさせていただきました。

 23番さん、いかがでしょうか。あの時はとにかく7号車のドン付きと甘いブレ
ーキが辛くて、さぞや苦労されたと思います。それを鑑みると、小さく回ってドン
という走り方は、リスクを避けてしっかり走るという点で、ただしい選択だと思い
ます。
 それでも4番さんが、フロントブレーキを弱くして、リアブレーキを引き摺るな
どのテクニックを駆使して旋回速度を高めているところなど、ご参考にされたらよ
いのではないかと思います。これはとても興味深い議論だと思います。


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4 コメント

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使い分けなんですね。 (かんじ)
2008-03-24 14:03:01
水曜のTKGさんのお言葉でしょうか?その日、久しぶりに新車1300に乗り、短いオフパイで基本通り、フロント・ブレーキを緩めると同時に倒し込んでました。しばらくしてTKGさんから、【アクセル・オフで倒し込むとフロント・フォークが縮むので、その縮んだフロント・フォークを伸ばさないように旋回してからフロント・ブレーキを掛けるように。ただしこれは、セルフステアが出来てないと危険。】といわれました。

その走り方でも1300がクイックに曲がることに感動して走ってたら、またTKGさんから、【アクセルを大きく開けて、その分ブレーキを大きく掛けるのではなく、立ち上がりで早くアクセルを開けることを目指すように。】といわれました。せっかくアクセル・オフで曲がってるのに、アクセルを開ける量が今まで通りで大き過ぎて、旋回中にブレーキを掛け過ぎて旋回速度が下がっていたようです。

さらに修正して走ってみると、見た目は派手ではないけれど、結果的に速く走れてる走り方だと実感しました。ただ@sushiさんのいわれてるように、場所によって使い分けることが必要なんですね。また前にHMSで、フロント・ブレーキを掛けるタイミングとして、倒し込む前、倒し込むと同時、倒し込んだ後の3通りあると習ったことも思い出しました。この辺りも興味深いですし、使い分けることが必要なんでしょうね。
その通りで‥‥ (@sushi)
2008-03-25 00:51:42
>水曜のTKGさんのお言葉でしょうか?
その通りです、というよりも、かんじさんの日記から頂戴しました。

なんというか、ここ半年くらいの間では、HMSの先端トレンドは、「旋回速度」にあるようですね。
K島さんは、進入速度を高めて、結果として脱出速度を高めるというテーマ。M川さんは、上体および下半身のフォームで高い旋回速度を押さえ込むというテーマ。若様は、開けて道幅いっぱいを使って、旋回中の速度を高めるというテーマ。TKGさんは、別の言葉を使って、同様のテーマを語っているのでしょうね。

バリアブル基本コースの第3セクション(黄色地に塗られたTEC-Rコーナーのあるところ。全体を4分割するとして‥‥)なんかは、特にアクセルを開けることとブレーキを使って小さく回ることとのバランスが要求されるセクションで、ここで色々試してみたくなります。以前にお伝えした、アクセルを開けすぎない(車体の立ちが強くなりすぎる)操作でスムーズに切り返すといったことが課題になりますよね。

ご提示いただいた話題ではもっと言いたいことがあるのですが、とりあえず、ここで切ります。

かんじさん、ありがとう。

分かっちゃいるけど・・・・ (sasayan)
2008-03-28 20:38:49
比較表でみると漠然と理解していたものが目から鱗で頭に入りますね。毎回ありがとうございます。

最低速度。テーマである、速度を「落とし過ぎない」「維持する」。頭では分かっているのですが身体と右手右足が精密に動いてくれません(泣)。

先の平日中級でTKGイントラからFブレーキをスムーズにかけ続け、フォークを伸ばさず、クリッピングでフルボトム、と同時に向き変えを終わらせる、またその速度を序々に高めて回りきれる最高速を確かめるトレーニングがありました。

その時のアドバイスも「スムーズに早く走るのなら、スロットルを大きく開けるのでは無く、少しでも早く開けられように」でした。

明日からのトレーニング、テーマは引き続き「右半身(右手右足)で速度を作れればどんなコースも簡単スイスイ(M川さん語録)」です。

sushiさんの解説は、ホント参考になります。ありがとうございます。
>sasayanさん (@sushi)
2008-03-31 10:36:14
こんにちは。

>最低速度。テーマである、速度を「落とし過ぎない」
>「維持する」。頭では分かっているのですが身体と右
>手右足が精密に動いてくれません(泣)。

コーナリング速度を高めることは最近の桶川の共通テーマという感じですね。ここのところK島さんを始め多くのイントラさんが提案していますね。
上級では毎週のようにこのためのセクションが取り入れられていて、私自身も少しずつでも上達してきたように思えます。とはいえ、新しいCB1300の抜群のスロットルレスポンスに負うとことが大きいので、まだまだ先は長いです。

スロットルワークは本当に奥が深いですね。お互い頑張りましょう!

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