
今日の朝焼け
2010/12/21 am6:31
池田屋旅館のロビーで玄関先を眺めていた。
浴衣に羽織がけの泊まり客が三々五々と坂道を散歩するのがよく見える。
二枚歯のゲタが〝からんからん〟と石畳を引きずる音や酔人の嬌声など
温泉街の喧騒に乗って聞こえてくる。懐かしい音だ。
胸がわくわくするような、「私も見に行きたい」と祭り気分を起こさせてくれる。
湯気でもやった熱い湯に肩までつかると頭の中がとろけていきそうだ。
仕事のことや、そのころ私を悩ませていたことが、風呂の蒸気に蒸され
頭のてっぺんからすーっと抜けてゆく。これも温泉の効能のひとつと。
素肌にかけたときのさらっという感触を楽しみながら浴衣に袖を通す。
ほてったからだに冷たいお茶が胃まですーっと落ちた。
紬の手触りがする羽織に池田屋の焼印が入ったゲタをつっかけ表に出た。
ごったがえす繁華街にまぎれても、浴衣の柄や半纏のシルシを見れば
どこの旅館の泊り客かすぐに見分けがつく。
人の多さにあきれながら浴衣姿で出かけて良かったと思う。
坂の両側に並ぶ観光客目当ての店をひやかしながらそぞろ歩く、
懐かしいスマートボールの店があった。
浴衣の裾をはだけ真剣に的を狙うが白い玉はポケットに入らない。
目をつぶって打てば入るのに・・・ひとりごと。
坂を登りきった右側にひなびたパチンコ屋があった。
繁華街にある電飾に飾られた店と違い客もまばらで店内は閑散としていた。
この店ならあるかもしれない。
店に入り見渡すと隅のほうにわずか1列だけあった。
1つ1つの玉を自分で打つ旧式の羽台と格闘した30分はタバ4コ個の
ご褒美をくれた。無心に玉を弾くのは私の右手だが玉が描く放物線と
玉を見つめる目は私の手を離れている。ふ、こんなところで味わうとは。
帰り道の途中に「射的」があった。
しばらく見ていて気がついた。
裸電球に照らされたヒナ段の景品を打つ人には、すごくうまい人と
やたらヘタな人がいる。
得手不得手の差、夜店の射的といえども侮れない。
自分の立つスタンスによって的を捉える目の位置が劇的に違う。
しばし夢中で遊び、たくさんのキーワードを持って宿に帰った。
日常を離れた保養地に自分にあったポジションを持つのもわるくない、
魂の解放が得られないような保養地は逆にストレスを生むことも承知、
深い谷を有して青山を為すならばいずこも同じ...直心是道場。
忘れ物を取りに戻れない人は哀しからずや人生の機微に触れず。
自分の中ではネパール(カトマンズ)、インド(ベナレス)、チベット(カシミール)、
モンゴル、中国(西安)、国東半島..etc.これらは聖地になっている。
いつでも飛んで行ける環境になったとたん、時期を選ばないと痛手を負ような
気もする。きっとまだ早いんだ。
2010/12/21 am6:48 雲の下にわずかに太陽が
2010/12/21 am7:01 雲から顔をだした太陽
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