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睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

夢の中で

2018-03-30 10:25:18 | 逝ける人々・本・禅と仏教
田んぼのあぜ道でバッタやてんとう虫を捕っていた。草むらの中でネズミくらいの大きさの黒い影が動くはっとして草むらに手を突っ込んだらバスが出てきた。 バスといっても赤く錆つき窓ガラスも割れている。バスの横に回ると移動販売らしい大きな開口部があり、その隣に雨ざらしのノボリが斜めにかしいで立っていた。 "おいしいホットドッグとハンバーガー"と書いてある、しゃがみこんで時代錯誤なノボリの字を眺めてい . . . 本文を読む

ありがとうはその時に

2018-02-06 16:43:01 | 逝ける人々・本・禅と仏教
その風貌とは似ても似つかない繊細な眼差しでジャケットを見つめる大将を偲んでKenny Gを聴いている。 今年の早春、まだ霜柱が立つころにキャンプに行く約束をした。彼が七輪セットと備長炭、名古屋コーチンに自宅栽培の長ネギを、おれはミニコンポと電源と椅子を2個、それと薪の束を。 行先は西湖のキャンプ場、まだ浅き春の極寒のなかで、人けのないキャンプ場で、好きなArtistのCDを心ゆくまで響かせ . . . 本文を読む

明かりが消えた赤提灯

2018-01-26 10:06:01 | 逝ける人々・本・禅と仏教
行きつけの赤提灯は去年の暮れに閉店してしまった。ここ数年顔色に生気がなく動きが緩慢になっていた店主が意を決して病院に出向いた結果、膵臓がんStⅣオペ不可。 自宅療養している彼の見舞に行ったとき、青白く横たわる彼の横にある酸素ボンベや介護用品を見たとたん「セカオピ受けた?」などとはとうてい言えなかった。 薄く目を開けて「焼き鳥わりいなぁ.....」と、細く震える声でつぶやく彼の手をさすることしか . . . 本文を読む

親父part7(Last)

2010-12-20 18:23:52 | 逝ける人々・本・禅と仏教
東の空に満月 201012/20 pm18:21 2000/09/24午前5時16分永眠。---看護士さんのエンゼルケアを受けた父はストレッチャーに乗せられ地下の霊安室に安置された。担当医と看護士の弔問を受けてほどなく葬儀社の車が迎えにきた。黒いワゴン車の後ろに父が乗り、かたわらに母が付き添った。自宅前で近所の方の出迎えを受け、父は1階の居間に安置された。線香がともり一膳飯が供えられた白木の . . . 本文を読む

親父part6

2010-12-19 09:29:18 | 逝ける人々・本・禅と仏教
2000/09/08這えば立て、立てば歩めの親心赤ちゃんになった父も...歩め。明日がある陽は沈みまた昇り瞼が明かない朝はないはずだ屋根の上ヴァイオリンを弾く夢を...夢みむ。2000/09/09名鉄が自宅に介護ベッドを配達してくれた。梱包を解く日はくるのだろうか。意識あり、手が小刻みに震えてたうんうんと頷く密度の濃い視線。2000/09/10 ちりちりと皮下に死にゆく黒みみず 大根の茎かじりた . . . 本文を読む

白い雪と加川良の「下宿屋」

2010-12-16 03:39:26 | 逝ける人々・本・禅と仏教
昨夜は前に住んでた隣家のおじいさんの通夜に行ってきた。浪々と漢詩を謡う鍛えられた声は壁を越え庭を越えわが家にまで聞こえてくる。元気なうちに詩吟をおしえてもらえばよかった。何度も誘われたのに、気後れがして、曖昧な返事を繰り返した。あの咳払いすら懐かしい。 仕事関係を含めると数え切れないほどの通夜・葬儀に参列した。ほんの義理で行くのもあれば、遠方まで車を駆って行くのもある。死は誰にも平等でありながら . . . 本文を読む

親父part5

2010-12-13 07:30:07 | 逝ける人々・本・禅と仏教
2000/08/24そんなにすぐクタばるようなオヤシじゃない。葬式の準備をするくらいなら、奇跡を起こす。首根っこをひっつかんで現世に留めようオヤジ。 ド田舎の風習がもたらす目の回るような忙しさ。疲労困憊だが、できることはすべてやった。あとは、しばし眠りたい。2000/08/27  K大学病院とN病院の連携はスムーズで、医師間で最善の方法を検討してもらっている。K診療所に通院しながら血圧の治療を . . . 本文を読む

親父part4

2010-12-12 03:16:44 | 逝ける人々・本・禅と仏教
K大学病院を最後に退院してから半年が経った。この年の春先からオヤジは腰の痛みを訴えていた。水面下でオヤジの白血病は進行していのだろう。2000/07/08 オヤジの顔から精気が失われた。畑仕事もできず、一日のほとんどを横になってすごす、座薬を入れても痛みが消えず、母は懸命に父の腰をさする。父は今、ゆるやかに、いのちの砂時計を見つめている。オヤジはつぶやいた。「お盆まで生きられそうもないなぁ」亡き戦 . . . 本文を読む

親父part3

2010-12-11 07:34:50 | 逝ける人々・本・禅と仏教
1999/09/21表に出ると横なぐりの雨が降っていた。K大学病院に着いたのは11時10分過ぎ。思ったより道路が混んでいた。1階の外来ロビーに座り、入院手続きが終わるのを待つ、3階西370号室の4人部屋。担当医は30歳前後、後退した頭髪を短く刈りこみ、恰幅のいいいかにも働き盛りを思わせる脂ぎった顔をした医者だった。青緑色の上着の袖からのぞく逞しい二の腕にカルテを抱え、厚い胸板の前で揺れる聴診器を右 . . . 本文を読む