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明治の文豪森鴎外の小説はすっかり教科書から消えた

2004年11月08日 | 詞花日暦
殉死を許してやったのは
慈悲であったかもしれない
――森鴎外(作家)

 明治期の文豪が教科書から姿を消す。森鴎外も例にもれない。急逝した知人の遺族が蔵書を整理した。浩瀚な鴎外全集三十八巻の買値は一万円にも満たなかった。部厚い一冊がコーヒー一杯にも値しない。古い時代の作家の凋落ぶりが際立っている。
 かつて三島由紀夫は鴎外の文章を絶賛した。自分が書きたい理想の文章だといった。時とともに古びず、いつまでも新鮮でありつづけるだろうと。たしかに簡潔で雄勁な文章は深い味わいがある。時代が変っても、味わいつくすことがない。
 鴎外最初期の時代小説『阿部一族』に登場する細川忠利の臨終に、殉死を願い出る家来がおおかった。忠利には次世代を継ぐ嫡子と近習の若者がいる。「老成人らは、もういなくてもよいのである。邪魔になるものである」といって、老いた家来の自死を許した。鴎外の作品が消えていくのを見やるのは、むろん「慈悲」といった問題ではないのを知っておきたいものである。

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4 コメント

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朝日新聞のトップに (菅原)
2004-11-08 07:31:53
森鴎外の娘たちに宛てた手紙などの発見が報道された。一面トップというほどのニュースなのだろうか。ほとんどの人がすでに読むことをしない作家なのに……。
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天声人語ですね。 (persempre)
2004-11-08 18:34:11
ここに、くると、毎日、なにかしらの発見があります。 やっぱり菅原さん、かっこいいんじゃないですか。女将がそういったんですから。(^_^)



ところで、ある定年を迎えた男性が、いいました。「食って、出して、寝て、それだけ。 この年金財政が、逼迫してるときに、長生きは罪だ」。 「自立した一生、そんなものは、ないんだから、いままで充分、働いたんだから、これからは、自由な時間を充分、楽しんでください」というようなことを、お返し したような記憶がありますが、共同体の中で、いつまでも、年寄りが大事にされ、居場所が確保されている、ということが少なくなった、現代。 この記事を読んで、ふと思いだしました。
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消え去るものは・・・ (菅原)
2004-11-08 19:05:14
消え去るんでしょう。政治形態も、経済も、時代の感性も、問題意識も、ついでに女性の心も変わる以上、消え去るしかありません。しかし長い歴史のスパンで見ると、消えたかに見えながら、生き延びているものがあります。消滅を身近にした私のような人間が多少でも抗って、注意を喚起しておくのも悪くないでしょう。悪あがきと言いますが。格好は悪いんです。長い一生付き合った本人が一番よく知っています。女将の言葉は好意的な営業トークですよ。
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変わらないもの、 (persempre)
2004-11-09 21:39:56
努力して、残すことは大事ですよね。 もっと大学に頑張ってほしい。 独立法人化されて、人気取りの研究が多くなると、ますます、生産性から遠ざかるものは疎んじられていくような気がする。在野で、趣味的に、研究している人のほうが、もしかしたら、これから古いものを残せるのかもしれません。



定年後に余力があれば、そういうのも、いいかも。 どうせ、人間なんて、ローマ時代から 精神面は、なんにもかわっちゃいない(後退してるかも)。 もしかしたら、灰と消えるかもしれないけど、悪あがきを、細胞の1部分に残してくれる人がいないともかぎらない。
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