エゾ中村のブログ

「藤圭子」から「現代医学の功罪」まで、思いの丈を綴ります。 ・・・ From 北海道 ・・・

日本一の秘境駅「小幌」

2020-01-18 09:08:36 | 旅行・地域

 ◎トンネルとトンネルの間(約80メートル)にある「小幌信号所」  


             

数年前 居間でくつろいでいると、何やら家族がテレビを見て騒ぎ始めました。 「うちの町に、日本一の秘境駅があるんだって・・・」 一瞬、冗談かと思いました。 いくらなんでも、 北海道最大の幹線(室蘭本線)の中に秘境駅など考えられません。 秘境駅とは、乗降客が少ないローカル線の沿線にあるものだと、勝手に思い込んでいました。 テレビ局がいい加減な取材で、デタラメな放送をしているかと、半信半疑で見ました。 「あ~ その風景は 小幌 だ !」 記憶が蘇りました。 我が町には、3つのJR駅があります。 しかし、“小幌信号所”の存在はすっかり忘れていました。

小幌信号所は、室蘭線の上り線下り線が一本(単線)の時代、遅い列車が特急や急行などの通行を譲る為に停車する、駅舎がない列車の退避場です。 それを、駅と言うのか疑問ですが、昔から列車の客は乗降できました。 40年ほど前、そこに住人(漁師)が居たはずです。 全長300m程の磯場に、小石で覆われた僅かの平坦地があり、綺麗な沢水が豊富に流れ、電気は信号所から分けて貰えるので、生活に必要な最低限の環境は整っていたと思います。 ただし、交通手段は国鉄(現在のJR)または小船だけです。 何せ、地形は深い山あいの谷間で、道路など付け様がありません。 小幌は、間違いなく 陸の孤島 です。

◎“文太郎浜” 過去、漁師が住んでいた“小幌”の海岸線

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そんな小幌信号所に、偶々父の同級生が夫婦で住んでいて、何度か遊びに行ったので多少状況は知っています。 当時、上り2本・下り2本(現在は上り6本下り3本)の列車に乗って、小学校の夏休みに海水浴や釣りなどで、時間が許される範囲で楽しみました。 その頃は、漁師の家が3軒ありました。 噴火湾(別名:内浦湾)の突端で、潮のうねりが強く船の往来も厳しい磯場です。 記録によれば、江戸時代の末期「 伊能 忠敬 」が蝦夷(現在の北海道)の地図を作成する為、海岸線から測量をする際に船が岩礁に乗り上げ何度も座礁したとされ、蝦夷地で一番 測量に難儀したと言われています。 

小幌は 厳しい海である反面、魚介類が豊富な恩恵もあります。 父の友人(漁師)のお宅で、新鮮なウニがたくさん入った味噌汁と自家製のノリで巻いたオニギリを頂き、とても美味かった記憶があります。 また3軒あった家の一軒に、両足がない元気な漁師がいた事を思い出しました。 噂によれば大酒飲みで、泥酔してレールに足をかけ爆睡中、列車に両足を轢かれ切断したそうです。 それでも両腕を器用に使い、短い足を支点に馬跳びの要領で動き回っていました。 小さい磯舟を、丸太の様な太い腕で海辺へ押し出したり、漁が終われば船にロープを掛け滑車で引き上げる様に感動したものです。

◎“岩谷観音” 円空(修験僧)が彫ったとされる仏像が 6体祀られています。

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そんな小幌信号所は、JR北海道の厳しい財政の為に廃止検討中との事です。 いずれ、信号所は廃止されると思います。 鉄道マニアや釣り客は、名残惜しいと思います。 ただし、小幌には17世紀からアイヌ民族が代々祀る 岩屋観音 があります。 そうなれば、毎年行われる催事に通行手段は、磯舟かゴムボートに限定されます。 地元の要望としては、小幌信号所(秘境駅)の存続を心から願っております。

◎ 現在 JR北海道と豊浦町の協議で、小幌信号所の継続が決まっています。 しかし、今後 何年継続されるか分かりません。 とにかく、日本一の秘境駅です。 興味がある方は、一度 “YouTube” [ 小幌駅 ]を検索し、雰囲気だけでもご覧下さい。 室蘭本線内の秘境駅を、動画で“疑似体験”できます! 

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