広橋梅林の見事な梅の景色に心満たされ、鼻歌交じりで五条市の賀名生(あのう)梅林を目指しました。
奈良盆地の南側の壁となる、紀伊山地北辺の斜面を下ります。
その先の吉野川に沿って五条市へ向かうつもりだったのですが、ナビは途中から左手の山の中へ車を導きました。
県道20号の樺の木峠を越え、紅葉川に沿ったルートを進んで行きます。
緑あふれる渓谷の中で、左右へのカーブを繰り返しながら30分程も走ると、県道が国道165号と合流する五条市西𠮷野城戸に出ました。
思わずあっと声を上げました。
この場所に見覚えがあります。
数年前に西吉野町のフクジュソウ群生地を探し、この辺りの民家で道を尋ねた記憶が蘇りました。
ブログを書きながら、PCのファイルを探すとその時の写真が出てきました。
画像の日付は2018年2月17日で、下の写真がその時のものです。
この時は残念ながらフクジュソウはまだ花を咲かせていませんでした。
再度訪ねたかったのですが、場所の記憶が曖昧で、フクジュソウは午後に花を閉じますから、今回も群生地にフクジュソウが咲く様子を確認することはできませんでした。
賀名生梅林は西𠮷野城戸から丹生川に沿って五条市方向へ4~5㎞程も下った場所ですが、そのすぐ手前の大日川地区にも見事な梅林風景が広がっています。
実は2018年2月にこの地を訪ねた時、賀名生梅林の位置を確認する為、この辺りを探索していたのです。
大日川地区の梅林が見渡せる場所へ車で上って行きました。
広橋梅林同様に、いやそれ以上の急斜面の、実梅を育てるための段々で、実梅が枝々に白い花を咲かせていました。
この地区は観光地化することを全く考えていないように見えます。
植栽されたほぼ全ての梅が、白い花を咲かせる実梅ばかりでした。
車一台ぎりぎり通れるような生活道路が急斜面を左右に横切りながら峰の上へと上ってゆきます。
そんな場所から崖の上を見上げると、苔むした石垣の上に、一軒の梅農家の姿が見えました。
目の前のこの急斜面で、梅を育てる作業が行われている筈です。
生活用水はどうしているのでしょう。
どのような経緯で、この地に暮らし始めたのでしょうか。
梅の花に包まれる「綺麗な景色」を作り上げてきた村人達の歴史に思いが及びます。
その場所で振り返ると、眼下の梅畑の先に、先ほど走り抜けてきた、樺の木峠近辺の尾根の連なりが午後の陽射しの中に見えていました。
大日川地区の梅林の中を下る途中で、斜面の中に小さな寺院の姿を認めました。
急斜面に点在する家々に暮らす人々は、お盆や年の瀬になると、この寺に集い、声かけあって梅を育ててきたに違いありません。
寺は杉木立を背に、ほのぼのとした雰囲気を漂わせていました。
大日川地区と尾根一つ隔てた賀名生梅林の入り口まで来ると、梅林に上る坂の入り口にゲートが設けられ、車両進入禁止の看板が掲げられていました。
入り口の横の広場が駐車場だったので、その場に居た村人らしき人に話を聞くと、賀名生梅林へ上る道が崩壊した為、住人以外の車の進入を禁止しているとのことでした。
梅林を見学する場合は、この駐車場に車を置いて徒歩で坂を登って下さいと言われました。
「どれくらいの時間ですか」と聞くと「30分程です」との答えでした。
最低でも1時間は必要ですが、現在は午後16時です。
実は先ほど、ここから50㎞程も離れた場所に住む90歳の叔父に、近くへ来たので、今夜は一緒に酒を酌み交わしませんかと電話したばかりだったのです。
子供の頃にお世話になった叔父は、私と酒を交わすのをとても楽しみにしてくれています。
なので今日は、賀名生梅林を下から見上げるだけにして、ここから叔父の家へ車を走らせることにしました。
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