9月6日の16時に大洗のフェリーターミナルに着くと、窓口はカーテンに閉ざされていました。
私は数十年振りのサイクリングなので、フェリー乗船開始の17時までに大洗港に到着できる自信がなく、今回は苫小牧行きフェリーの予約を取りませんでした。
商船三井フェリーの大洗-苫小牧航路は今まで何度も利用していますが、夏休み以外は、車の持ち込みさえなければ、99%乗船できるだろうことが分かっています。自転車を持ち込む場合も同様の筈です。
17時になれば窓口は開くだろうと、たかを括り、ロビーの椅子に半身を横たえてその時を待っていました。
外では台風18号の影響か、雨が降り始めていました。
16時30分頃になって、女性の二人連れがロビーに現れ、「窓口はまだ開かないの?」と訊ねられましたので、「多分17時ごろになれば開くと思いますよ」と答えました。
しかし、実際に時計の針が17時を過ぎても、窓口には何の変化も現われません。
これはおかしいぞと思い、ロビーに居た守衛さんに「窓口は何時になったら開くのでしょうか」と訊ねてみました。
すると、守衛さんから「今日はもうフェリーの便がないので、明日まで窓口は開かないですよ」との回答がありました。
「えぇぇえ! うっそぉ~、ネットで調べたけど、夕方便に欠航はない筈だけどなぁ」
実は一ヶ月程前に、大洗-苫小牧間を繋ぐ商船三井フェリーは、航海中の「さんふらわ あだいせつ」に火災が発生し、それ以降船数が不足し、通常運行に支障が出ているのです。
それでも、2、3日前にフェリー会社のホームページを覗いたときは、1日2便の内、夕方の便に欠航はなかった筈なのです。
しかし守衛さんと一緒に、ドアに貼ってある運行表を確認しに行くと、何と、この日の夕方便だけが欠航となっていました。
「そうか、見落としたんだ。まいったな~」
外には雨が降り続けていました。
直ぐ守衛さんに、「このフェリーターミナルは、夜も開いているんですか?」と聞いてみました。
守衛さんは気の毒そうな声で、「今夜19時から明朝7時までは閉まります」との返事が返ってきました。
そこで再度、ターミナルの外階段下のスペースを指差して、「あそこにテントを張れないでしょうか?」と聞いてみました。
「いや~、ここは町管轄の建物なので、ちょとね~、良いとは言えないですよ」とのこと。
「えぇ~、どうしよう」
すると、「確か、素泊まり2~3千円で泊まれる民宿がこの近くにあると思うけど」と守衛さんがアドバイスをくれました。
「本当ですか、それは助かる。早速探しに行ってみます。」と答え、ロビー内に居た先ほどの女性達にも声を掛け、一通りの状況を説明し、どうしますか?と聞いてみました。
彼女達も此処へは電車とバスを乗り継いで来たので、今夜の宿が大洗に確保できるなら有難いとの返事でした。
「じゃあ、私が自転車で街へ行って民宿を探してきますから、ここで待ってて下さい。」
と言い置いて、急いで雨の中へとはしり出しました。
大洗の雨降る街で数軒の民宿を当たった1時間程の後、その内の一軒に、三人は無事に雨露を凌げる場所を確保することが出来ました。
さすがに、一泊2~3千円という料金ではありませんでしたが、高い安いと言ってる場合ではなかったのです。
二人連れの女性は姉妹だそうで、お話の内容から50歳代後半と推察しました。
登別でスナックを経営しているとかで、筑波に居る妹さんの家族に不幸があり、フェリーを利用して苫小牧と大洗を往復することになったのだそうです。
旅先では、本当に多彩な方との巡り会いがあるものです。
私はこの夜、100㎞以上もの自転車旅の疲れもあってか、温かい風呂に浸った後、一本の缶チューハイも飲み干せないままに、深い眠りへと入っていったのでした。
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