真実を求めて Go Go

今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

「レベル2マルチバース」その1

2014年05月11日 | 宇宙

 前回と前々回の2度に渉って、テグマーク が「レベル1マルチバース」という多宇宙について記述してきました。

 この「レベル1」とは、約420億光年先の「宇宙の観測地平線(宇宙の地平線)」までは観測できるが、この地平線で宇宙が終わっていると考える理由は特にない。そして、地平線の向こうにも、私たちの周囲と同じような領域が数多く、あるいは無限に存在していてもよいはずで、その各領域では,初期の物質分布は異なっていたかもしれないが、同じ物理法則が支配している。現在,宇宙論研究者の大半はこのタイプの多宇宙解釈を受け入れている。

 しかし、一部の研究者はさらに踏み込んで、物理法則や宇宙進化の歴史、さらには時空次元の数さえも違うまったく別の宇宙が存在すると主張する。いくつかの宇宙は生命を宿しているかもしれないが,ほとんどの宇宙は生命が誕生しない不毛の地だろう。この「レベル2」の多宇宙解釈の代表的な支持者はアレックス・ビレンケンである。彼は、「宇宙は無限であると同時に、有限、進化しているのに、静的、永遠でありながら、始まりがある」「私たちの地球とまったく同じ惑星が遠く離れたどこかの領域にあり、そこでは地球と全く同じ惑星が遠く離れたどこかの領域にあり、そこでは地球と同じ海岸線と地勢を持つ大陸があり、私たちのクローンを含めて地球と同じ生き物が住んでいて、その内の何人かはこの本を手に持っている」と、彼の著書、「多世界宇宙の探検(日経)BP社)」の中に書き残している。

 この本の「第六章 捨て去るには美しすぎる」に「美しい終了の問題」という箇所があります。ここで真空と水の沸騰をインフレーション理論に結びつけているのですが、やはり、美しすぎるように感じます。少し長くなるかもしれませんが、この第六章の序文を掲載させて戴きます。


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 どんな物理学者でも、数日前に考えついた美しい理論に致命的な欠点を発見したときの落ち込む感覚を味わっています。悲しいことに、たくさんの美しい理論がこの運命をたどります。インフレーション理論の場合もそうでした。いつものように悪魔はちょっとしたところに潜んでいましいた。詳しく検討してみると、偽の真空は予想していたほどスムーズに崩壊しないのです。

 真空が崩壊する過程は水の沸騰によく似ています。真の真空の小さな泡がランダムに出現して、偽真空の真んの中で膨張します(下図)。

画像データ61
図:真の真空の小さな泡がランダムに勢いよく飛び出して膨張する。先にできた泡の方が大きく成長している。

 泡が成長するとき、泡の内部はほとんど空のままです。偽の真空が真の真空に姿を変えることから生まれたすべてのエネルギーは、拡大してゆく泡の壁に集中します。泡同士が衝突してくっつくとき、泡の壁は崩壊して素粒子が放出されます。最終的には、物質の熱い火の玉で満たされた真の真空が姿を現します。

 泡がすまじさ割合でい出現すると、こういうことが実際に起こるので、真空が崩壊する過程全体は、「倍増時間」すなわち宇宙の体積が二倍になる時間よりも短い時間で完了してしまうのです。ということは、宇宙が均一で平坦になるよりもはるか以前に、インフレーションはあっという間に終わったということです。反対のケースだったらどうなるでしょうか? 私たちに興味があるのは、反対のケースです。泡形成の割合が低ければ、泡が衝突し始めるときまでに、宇宙は何倍にも膨張することができます。しかし、このケースも難点を抱えているのです。

 問題は、泡の間の空間が偽の真空で満たされていて、そのため急速に膨張しているということです。泡は非常に速く膨張し、光速に近い速度ですが、それでさえ偽の真空の指数関数的な膨張には追いつきません。泡が形成された後、宇宙の体積が二倍に膨張するまでの間に泡が衝突しなければ、それ以降泡同士の間隔はどんどん広がる一方で決して衝突しません。

 そうするとインフレーションはどうやっても終わらないという結論にいたります。泡は際限ない大きさに膨張し、泡と泡の間の拡大するすき間の中で新しい小さな泡が出現し続けます。その結果、インフレーショにンよって形成される見事な均一性は完全に破壊されてしまいます。インフレーション的な膨張には適切な終り方が欠けているという問題は、「美しい終了の問題」として知られるようになりました。

 グースは、新しい理論を発表した二、三か月後に、問題があることに気づきました。インフレーションについての彼の論文は、そのときまだ書かれていませんでした。理由は簡単です。アラン・グースほど論文を書き上げる仕事を先のばしにする人はいないのです(彼との共同研究プロジェクトにたくさん関わってきた私は、すぐにそのことに気づきました)。もちろん、グースは自分の理論に重大な欠点を見つけてがっくりきていました。しかし依然とし彼は、そのアイデアは間違っているとしりぞけるには美しすぎると感じたのでした。一九八〇年の八月にようやく論文に着手したとき、こういう言葉で論文を締めくくっています。「私がこの論文を発表するのは、誰かがインフレーションのシナリオの望ましくない点を取り除く方法を見つけ出してくれることを望み、それを励ましたいからである」。
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 話が少しそれてしまいましたが、ビレンケンの書籍を紹介した理由は、今回の主題である「レベル2マルチバース」についての考察に、「インフレーションが生む無数の泡宇宙」と非常に深い関係があるからなのです。

 私が『多世界宇宙の探検』を読んで、この上の図を見たときの感動(美しさ)が今でも忘れられません。この時、四角形で囲まれた空間(水)がダークエネルギーで満たされた「空」に思えたのです。そして、このエネルギーが水中の1点(特異点)にエネルギーを注入して(ホワイトホール?)気体である水蒸気(私たちの時空構造を持った宇宙)に相転移(インフレーション)を起こし、それがビッグバンとして観測されたのでは?

 この様に解釈すると、ホワイトホールから泡が成長するとき、ビレンケンの解釈とは全く逆の宇宙が創造されるのかもしれません。そして、泡の内部(エネルギーを注入して素粒子に満たされた物質宇宙)と泡の壁(ビッグバンの始まり)に対してのエネルギーの流れ方に対する思いを替える必要があるのかも?


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