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相対性理論とローレンツ対称性

2014年02月06日 | 宇宙

 観測者が異なっても物理法則が変化しないという「不変性」は、時間と空間(時空)の対称性を意味する。この時空の対称性は1890年代初頭に研究にあたったオランダの理論物理学者ローレンツにちなんで「ローレンツ対称性」と呼ばれている。

 完全な球を思い描いてほしい。球はどのように回転させても、以前とまったく変わらぬ同じ形に見える。回転対称性という性質である。これに対しローレンツ対称性は物体の形に関するものではなく、「速度の変化」に対して物理法則が不変であることをいう。観測者の方向(回転)や速度によらず、同じ物理法則が成り立つということである。ローレンツ対称性が保たれている時空は等方的で、どの方向もどんな等速運動もそれぞれ等価である。“特別な方向”や“特別な等速運動”というものはない。

 時空のローレンツ対称性というこの考え方が、相対性理論の基盤をなしている。よく知られた相対論的効果はすべて、ブースト(観測者に対して等速運動すること)の効果である。アインシュタインによる1905年の論文よりも前に、ローレンツを含む数人の研究者が同様の効果に関する方程式をまとめていた。だが、それらの式は物体の物理的な変化を記述しているのだと解釈されていた。原子間結合の長さが短くなる結果、物体が収縮するというふうな解釈である。これに対しアインシュタインの功績は、物体の長さと時計の進み方が本質的に関連していることに気づいたことであった。それまで別物と考えられてきた空間と時間を「時空」という1つの概念にまとめあげたのである。

 ローレンツ対称性はさまざまな基本粒子と力を説明するうえで欠かせない。ローレンツ対称性に量子力学の原理を組み合わせると、「相対論的場の量子論」(相対論的量子場理論)と呼ぶ理論的枠組みが生まれる。この考え方では、粒子や力はどれも時空に広がる場によって記述され、これらの場はローレンツ対称性を持つものとなる。電子や光子といった粒子は、それぞれに対応する場の中での局所的な励起状態、量子として存在している。

 素粒子物理学の「標準モデル」は既知のあらゆる粒子と、重力を除く力(電磁気力、強い力、弱い力)を記述する理論であるが、これも相対論的量子場理論の1つである。相対論的量子場理論では、ローレンツ対称性のおかげで場の振る舞いや相互作用が厳しく制約される。一見するといろいろな相互作用を理論に付け加えることができるように見えても、ローレンツ対称性が損なわれるようではいけない。

 標準モデルには重力の相互作用が含まれていない。現時点で最も優れた重力理論はアインシュタインの一般相対性理論であり、この理論も『ローレンツ対称性』を基礎にしている。

 一般相対性理論も特殊相対性理論の延長で、観測者の向きや速度によらず物理法則がどこでも不変であるとすることを基礎としている。ただし、重力の影響があるため、異なる場所で行った実験を比較するのはより複雑になる。

 また、一般相対性理論は量子効果を含まない古典的な理論であり、これを標準モデルと矛盾なく統合する完壁な方法はまだ見つかっていない。しかし、、部分的に統合したものはすでに、「重力を加えた標準モデル」と呼ばれる理論で、すべての粒子と4つの力を記述する、「統―理論」と呼ばれているモデルである。

 標準モデルと一般相対論を融合したこのモデルは驚くほどの成功を収めている。あらゆる基本現象と実験結果をうまく説明できるし、このモデルを覆すような明確な実験結果はいまだにない。しかし、物理学者の多くはこのモデルの統合の仕方に不満を感じている。

 その一因は、量子論と重力の方程式がそれぞれすっきりした形で表現されるにもかかわらず、両者が数学的に相容れないように見える点にある。このため、重力と量子効果の両方が重要になる場合(例えば低温の中性子が地球の重力場に逆らって上昇するというよく知られた実験など)では、重力を外から与えられた力として量子論の方程式に組み込まざるを得ない。

 しかし、多くの理論物理学者は正解は別にあると信じている。量子論と重力を矛盾なく統合し、自然界を包括的に記述する完壁な「究極理論」を打ち立てられるに違いない。そのような統一理論の研究に最も早くから取り組んだ物理学者の1人が、アインシュタインその人であった。彼はこの問題に晩年を捧げ、重力だけでなく電磁気力をも記述する理論を追究した。

 しかし残念ながら、アインシュタインがこの問題に取り組んだのはいささか早すぎた。いまでこそ私たちは電磁気力が「強い力」と「弱い力」に密接にかかわっていると確信しているが、そもそも強い力と弱い力が理解されるようになったのはアインシュタインの死後になってからである。ましてや電磁気力を重力に結びつけるなど、当時はとんでもないことであった。

 アインシュタインが追い求めた「究極理論」への有望なアプローチの1つが、弦(ひも)理論である。さまざまな粒子や力はすべて、1次元の「ひも」や2次元以上の膜(ブレーン)によって表されるという考え方に立つ。

 もう1つのアプローチとして、「ループ量子重力」という考え方がある。これは一般相対性理論について矛盾のない量子論的解釈を見つけようという試みで、空間は連続したものではなく、体積と面積にはそれ以上小さく分けられない最小単位があると予言する。これら体積や面積の量子がパッチワークのように空間を埋め尽くしていると考える。この「ループ量子重力」については、このブログで十分に述べてきたことである。

図:時空の対称性_相対論が保たれるなら
「ローレンツ対称性」は自然界に備わった基本的な性質で、物理学にとって非常に重要な意味を持つ。ローレンツ対称性は回転対称性とブースト対称性という2つの要素からなる。長さは同じだが材質の異なる2本の棒と『メカニズムは異なるが同じ時を刻む2個の時計が置かれているとする(a)。回転対称性が保たれている場合、ー方の棒と時計をもう片方に対して回転させても、 棒の長さや時計の進み方は変化しない(b)。ブースト対称性は、一方の棒と時計を動かして、もう片方(図では静止している)に対して等速運動させたときに何が生じるかに関するものである。ブースト対称性が保たれるなら、運動する棒の長さは短くなり、運動している時計は遅れる。長さの変化や時計の遅れは、相対速度から正確に求めることができる(c)。時間と空間を組み合わせた「時空」を考えた場合、ブースト対称性は回転対称性とほぼ同じ形式の数式で表現される。
ローレンツ対称性と密接なかかわりを持つものとして「CPT対称性」がある。Cは電荷の反転、Pはパリティの反転、Tは時間の反転の意味である。CPT対称性が保たれるなら、反物質(電荷の反転)でできた時計を鏡に映し(パリティの反転)、時間を逆に進めれば、反転前の時計と同じ時間を刻み続ける(d)。場の量子論ではローレンツ対称性が保たれる場合にはCPT対称性も必ず保たれることが、数学的に示されている。

図:時空の対称性_相対論が破れると

時空全体を満たすベクトル場によって、ローレンツ対称性に破れが生じる場合がある。粒子や力はこのベクトル場(矢印)と相互作用する。荷電粒子が電場と相互作用するのと同様である(ちなみに電場もベクトル場)。この結果、ローレンツ対称性が保たれている場合とは異なり、どの方向も速度も、もはや等価ではなくなる。異なる材質でできた2本の棒は、ベクトル場に対してある向きでは同じ長さでも(左)、方向が変わると伸びたり縮んだりするだろう(中央)。同様に、最初の方向では同じ時間を刻んでいた2個の時計が別の方向を向くと、遅れたリ進んだりする。また、これらの棒と時計が運動すると(右)、材質や運動の方向、速さに応じて、棒の収縮や時計の遅れの程度が変わってくるだろう。

 究極理論がどのような形になるにせよ、量子論と重力は「プランク長」と呼ばれる微小スケールでは不可分に結びつくようになると予想される。プランク長はおよそ10^-35mで、19世紀のドイツの物理学者プランクにちなんで名づけられた基本的な長さである。あまりに小さく、顕微鏡ではもちろん観測できないし、高エネルギー粒子加速器を用いても手が届かない(加速器では10^-l9m程度の世界を見るのが限界だ)。このため、究極理論の構築が非常に難しいのはもちろん、究極理論が予言する新たな物理現象を直接観察することも実際には不可能に近い。

 こうした障害はあるものの、統一理論に関する手がかりをプランク長の世界から引き出す実験の道がないわけではない。十分に精度のよい実験を行えば、統一理論が予言する新たな物理現象を反映した間接的証拠をつかめる可能性があるだろう。


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1 コメント

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宇宙誕生 (鈴木行次)
2015-09-06 09:57:04
私は宇宙理論に興味を持っています。ハッブルの法則から私が作った数式を検討した結果宇宙はホワイトホールから誕生したと考えるのが良さそうだと考えるようになりました。
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