真実を求めて Go Go

今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

「ビッグバン」=「ブラックホール」=特異点!

2013年03月06日 | 宇宙

物理学や宇宙論では、無数の特異点の中でもとくに二種類が重要視される。

 一つが、ビッグバンと呼ばれる時間の特異点である。
物理学者も含め誰一人として、それが何であるかは本当のところは知らない。
宇宙のインフレーションという概念を考え出したアラン・グースでさえ、「ビッグバン」という言葉は、「実際何が起こったのかまだわかっていないため、つねに暖昧さを抱えている」と言う。

 一方、「ブラックホール」の扱いについては、ブラックホールは、空間の塊が重力の影響で一点につぶれたものであるということで、幾何学者はビッグバンよりは多少成功している。
微小な領域に詰め込まれた質量が超高密度の天体をつくり、その脱出速度が光速を超えて、光を含めあらゆるものを捕らえてしまうのだ。
ブラックホールはアインシュタインの一般相対論から導かれるが、あまりに奇妙な天体であるため、アインシュタイン本人もその存在を否定していた。
考えを変えたのは、カール・シュヴァルツシルトが、アインシュタインの有名な方程式の解としてブラックホールの存在を示してから15年後の、1930年になってからだった。
シュヴァルツシルトもブラックホールの物理的現実性を信じなかったが、現在では、そのような天体の存在は広く受け入れられている。

 天文学者はブラックホールとおぼしき天体を多数見つけ、この主張を裏づける見事なデータを蓄積しつづけてきたが、それらの天体はいまだ謎に包まれている。
一般相対論は大型ブラックホールを完全に十分に記述できるが、その大渦巻の中心へ進み、曲率が無限大である極小の特異点について考えると、その描像は破綻する。
砂粒より小さい微小ブラックホール - 量子力学が関係する領域に含まれる - も、一般相対論では扱えない。
質量が大きく、サイズが小さく、時空の曲率がとてつもなく大きいそのようなミニブラックホールの場合、一般相対論の不十分さが際立ってくる。
そこに助け船を出してくれるのが、一般相対論と量子力学との衝突を処理するために考え出され、それ以降楽しみを与えてくれている、ひも理論とカラビ=ヤウ空間だ。

 一般相対論と量子力学という、二つの名高い物理学の分野のあいだで繰り広げられた論争の中でも、もっとも世間の注目を集めたものの一つが、ブラックホールによって情報が破壊されるかどうかというものだ。

一九九七年、スティーヴン・ホーキングとキップ・ソーンが、ジョン・プレスキルとある賭をした。
賭の対象は、一九七〇年代前半にホーキングが理論的に発見した、ブラックホールは完全には「黒くない」ということの意味合いだった。
ブラックホールは、低いものの、ゼロではない温度をもっており、ある程度の熱エネルギーを保持しているはずだというのだ。
すべての「熱い」物体と同じく、ブラックホールもそのエネルギーを放射して、最後には何も残さず完全に蒸発する。
もしブラックホールの発する放射が完全に熱的であり、そのため情報を含んでいないとしたら、以前にブラックホールの中に蓄えられた情報 - たとえば、のみ込んだ恒星特有の組成、構造、歴史 - は、ブラックホールが蒸発するときに消えてしまう。

 これは、系の情報は必ず保存されるという、量子論の基本教義に反する。
ホーキングは、ブラックホールの場合には量子力学に反して情報が破壊されると論じ、ソーンも同調した。

 しかしプレスキルは、情報は生き残ると主張した。 

 「月曜日に、沸騰した湯の中に二個の氷のキューブを入れ、火曜日にその水分子を詳しく調べれば、前の日に二個の氷のキューブが入れられたのを確認できるはずだ」とストロミンガーは説明する。
現実的ではないが、原理的には可能だ。
別の考え方として、たとえばブラッドベリのSF『華氏四五一度』を一冊、火の中に投げ入れる。
「その情報は失われたと思うかもしれないが、もし無限の観察能力と計算能力があれば、つまり、その火に関するあらゆる事柄を測定し、灰の行き先を追いかけ、「マクスウェルの悪魔」(この場合は「ラプラスの悪魔」)の手助けを借りれば、もとの本の状態を再現できる」と、物理学者の大栗博司は言う。

 しかし、同じ本をブラックホールに投げ入れた場合、ホーキングの主張によればデータは失われる。
一方プレスキルは、以前のへーラルト・トホーフトやレオナルド・サスキンドと同じく、これらの二つのケースに基本的な違いはなく、ブラックホールの放射には、何かとらえがたい形でレイ・ブラッドベリの古典小説の情報が含まれており、理論上はその情報を復元できるという立場をとった。

 科学的決定論の原理という科学の大黒柱の一つが危機に瀕し、関心が高まった。
「決定論」とは、ある特定の時刻において系を記述するすべてのデータが手元にあり、そして物理法則がわかっていれば、原理的には、未来に何が起こるかを決定でき、また過去に何が起こったかを導き出せるということだ。
しかし、もし情報が失われたり破壊されたりしたら、決定論は成り立たなくなる。

 ストロミンガーは次のように言っている。
「量子力学と重力を矛盾なく調和させられると主張していたひも理論にとって、正念場だった。ひも理論はホーキングのパラドックスを説明できるのか?」
ストロミンガーはカムラン・ヴァッファとともに、一九九六年の画期的論文においてその疑問に挑んだ。
問題への入口としては、ブラックホールのエントロピーという概念を使った。
エントロピーは、系のランダムさ、つまり無秩序さの指標だが、系の情報蓄積量に関する意味合いも含んでいる。
ほとんどの系のエントロピーは、体積とともに変化する。

 しかし一九七〇年代前半に、当時プリンストン大学の大学院生だった物理学者ヤコブ・ベッケンシュタインが、ブラックホールのエントロピーは、事象の地平面に囲まれた体積でなく、その地平面の面積に比例すると提唱した。
事象の地平面はいわば「後戻りできない地点」で、時空内のその見えない一線を越えた物体はすべて、重力に屈して容赦なくブラックホールへ落ちていく。
しかし、実際には「地点」でなく二次元の面なので、「後戻りできない面」と考えたほうがいいだろう。
自転していないブラックホール(シュヴァルツシルト・ブラックホール)の場合、地平面の面積はブラックホールの質量だけで決まり、質量が大きいほど面積も大きくなる。
ブラックホールのすべての可能な配置構成を反映したエントロピーが、地平面の面積のみに依存するとしたら、そのすべての配置構成は地平面上に存在していて、ブラックホールに関する情報もすべて地平面上に保存されていると考えることができる。

 このベッケンシュタインの研究と、ホーキングによるブラックホール蒸発の考え方から、ブラックホールのエントロピーを計算するための方程式が導かれた。
いわゆるベッケンシュタイン=ホーキングの公式によれば、ブラックホールのエントロピーは確かに地平面の面積に比例する。
一般相対論によれば、ブラックホールは質量、電荷、スピンというわずか三つのパラメータで完全に記述できるため、ブラックホールがとてつもなく大きなエントロピーをもっているという事実は、まったくの驚きをもって受け止められた。

 一方、エントロピーが巨大だということから、ブラックホールの内部構成には、これら三つのパラメータよりはるかに多い、とてつもない多様さが存在すると考えられる。
ブラックホールの中で他に何が多様でありえるのか?
それを解く鍵はおそらく、ブラックホールをミクロな構成要素に分割することにある。
エントロピーは、同じマクロな特徴を生じさせる、ミクロな状態の配置構成の数として定義される。
その関係をもっと定量的な言葉で述べると、エントロピー(S)は、ミクロな状態の個数の自然対数に等しい。
または、ミクロな状態の個数は e^s に等しい。

 もしエントロピーとミクロな状態の数との関係が、自然界のすべての系のうちブラックホールだけで成り立たないとしたら、その非対称性は深遠で不気味だ。
それらのミクロな状態は「量子化」されており、そのため有限値として数えることができる。
ひも理論には、ストロミンガーが「純粋な重力物体」と呼ぶブラックホールの量子状態が関係している。

 エントロピーを計算するという問題の答えを与えるのは、ひも理論に課せられた義務であり、失敗すれば正しい理論でなくなる。



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