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ひもに隠れた「カラビ=ヤウ多様体」とは? その2

2013年02月24日 | 素粒子

前回は「カラビ-ヤウ多様体」の成り立ちでしたが、今回は1984年の「第1次ストリング革命」までを書きます。

第1次ストリング革命:wikipediaより
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1984年、グリーンとシュワルツによって、10次元の超重力理論および超弦理論でアノマリーのない理論が存在することが示されると、超弦理論は脚光を浴びるようになった。
特にE8×E8のゲージ場を含むヘテロティック超弦理論において、理論の定義される10次元のうち余分な6次元をカラビ-ヤウ多様体でコンパクト化した理論は、低エネルギーでの超対称性を持つ理論が導かれ、重力を含む統一理論の候補として盛んに研究された。
しかし、余分な6次元がコンパクト化されるメカニズムが不明であること、コンパクト化として可能な多様体の種類が無数にあり、その中から1つを選び出すことが摂動論の範囲では不可能であることなどの困難が存在した。
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 ひも理論に超対称性は必要ないかもしれないが、ひも理論は超対称性を取り込むことで間違いなく恩恵をこうむる。
そして超対称性は、物理学者をまさにカラビ=ヤウの玄関口へと導いてくれた。
カラビ=ヤウ多様体を手にしたストロミンガーとカンデラスは、次のステップとして、それが本当に、私たちの見ている物理を担う正しい多様体であるかどうかを確かめたいと思った。
一九八四年にその研究計画を携えてサンタバーバラ校にやって来た二人はホロヴイッツと親しくなった。
ストロミンガーとカンデラスが取り組んでいる問題――ひも理論の内部空間の数学的必要条件を見極めること――を知ったホロヴイツツも、その必要条件がカラビ=ヤウの必要条件に合致すると理解した。

 まもなくしてストロミンガ-が、プリンストンに戻っていたウィッテンを訪ね、それまでわかったことを詳しく説明した。
実はウィッテンも独自にほぼ同じ理解にたどり着いていたが、そこへ至るルートは違っていた。
カンデラスとストロミンガーは、ひも理論において10次元が存在し、それが何らかの六次元多様体にコンパクト化していなければならないという考え方からスタートした。
そして、どのような種類の六次元空間が、いくつかの必要条件の中でもとくに、正しい種類の超対称性をもたらすという条件を満たすのかを明らかにしようとした。

 一方、ウィッテンがこの間題にたどり着く出発点となったのは、閉じたひもが時空を伝わりながら、リーマン面と呼ばれる複素一次元あるいは実二次元曲面をつくっていくというイメージだった。
共形場の理論と呼ばれる二次元版の量子論に基づいており、背景時空に関する仮定が少なく、共同研究者たちの計算とはまったく違っていた。
それでも二人とも同じ結論、つまり、内部空間の幾何はカラビ=ヤウでなければならないという結論に達した(それ以外の多様体ではうまくいかない)。
ストロミンガーとカンデラスそれにウィッテン、ホロヴイッツの四人は一九八四年に研究を完成させ、正式な論文が翌年に出された。
その論文によって、「カラビ=ヤウ空間」という用語がつくられ、その奇妙な六次元領域が物理学の世界に紹介された。


図1:カラビ=ヤウ多様体の2次元「断面」のコンピュータグラフィック

 一九八五年の論文が発表される以前、カラビは「この研究に物理学的意味は何もないと予想していた。純粋に幾何学の研究だった」という。
しかしこの論文がそれを一変させ、この数学的構造物を理論物理学の舞台の中心へと押し出した。
この種の多様体は言葉で説明するのも難しいし、目に見えるようにするのはさらに難しいが、それを考えると、このような難解な概念にしては驚くようなブームだった。
ある物理学者は、六次元空間は「私が難なく思い浮かべられるより三つも次元が多い」と言っている。
その空間に多次元のよじれた穴が開いているとさらに複雑になり、穴は少数であることもあれば、高級なスイスチーズのように500個に達することもある。
カラビ=ヤウ空間の特徴としておそらくもっとも単純なのは、コンパクトだという点だろう。
カラビ=ヤウ多様体は、あらゆる方向に無限に広がる紙でなく、折りたたんでくしゃくしゃに丸めた紙に似ているが、その丸め方は綿密でなければならない。
コンパクトな空間は無限に長い領域や無限に広い領域を含んでおらず、十分に大きな箱を用意すれば必ずその中に入れられる。

そのような空間の表面に立って同じ方向に歩きつづければ、出発点に戻ってこられるかもしれない。
正確な場所には戻ってこられないとしても、どんなに歩こうが決して出発点から無限に離れることはない。
カラビ=ヤウ空間をコンパクトだと呼ぶのは、決して大げさではない。
そのような多様体の正確な大きさはまだわかっていないが、とてつもなく小さく、直径は10の-30乗センチメートルのオーダーだと考えられている。
私たちのような四次元世界の住人にはその六次元領域を見ることは決してできないが、それはつねに存在しており、私たちの空間のあらゆる点にくっついている。
私たちがあまりに大きすぎるため、その中に入って見回すことはできないのだ。

私たちがカラビ=ヤウ空間に一瞬入り込んでも同じように打ち消し合い、四次元領域でたどるもっと長い軌跡に比べれば無視できるようになるのだ。
別の考え方として、私たちは端のない空間に住んでいる。
私たちに手の届く範囲は、たとえそのごく一部しか訪れられないとしても広大だ。
ところが、その大きく広い世界のどこへ行っても、必ずすぐそばに、決して立ち入れない小さな見えない領域が存在している。
ここで、x方向が私たちの無限の四次元空間を表し、y方向が内部カラビ=ヤウ空間を表すという、変わったx-y軸を想像してほしい。
x-y軸上のすべての点に、隠れた六次元の領域が存在している。
逆に、x軸上のすべての点には、やはりさらなる四次元空間、つまり私たちが歩き回れる方向が存在していることになる。

 もっとも驚かされることの一つは、この宇宙のうち内部に秘められた隠された部分 ―― 決して見たり触れたり喚いだり感じたりできない場所 ―― が、私たちが経験する物理に対して、レンガや石、車や宇宙船、および無数の銀河からなる有形の世界よりも深い影響を与えうるということだ。
少なくともひも理論研究者はそのように主張している。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の物理学者ジョー・ポルチンスキーは、次のように説明している。
「私たちが自然界で測定するすべての数、つまりクォークや電子の質量など基本的だと考えられているものはすべて、カラビ=ヤウの幾何から導かれる。
その形がわかれば、原理的にはすべて知ることができる」。
ブライアン・グリーンは、「宇宙の暗号はカラビ=ヤウの幾何のなかに書かれているのだろう」と言う。



図2:ひも理論が正しければ,4次元時空のすべての点に,隠れた(6次元)カラビ=ヤウ多様体が存在してしいる



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