仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「プレゼント」 若竹七海

2007-02-28 00:38:11 | 讀書録(ミステリ)
「プレゼント」 若竹七海
お薦め度:☆☆☆+α /
2007年2月26日讀了


1996年5月に刊行された著者の第6作。
フリーターの葉村晶と、風采の上がらない小林警部補が交互に登場する連作短篇ミステリー集。

「海の底」
葉村晶が、大學の先輩である編集者、遠藤にホテルに呼び出される。
カーペットのしみの除去を頼まれる。
そのしみはどうやら血液のやうなのだが、はたして・・・

「冬物語」
雪深い山奧の山莊に被害者を呼び出して殺した犯人の視點から描く倒敍もの。
探偵役は小林警部補。
ただし、嚴密には小林警部は探偵ではない。
何故かといへば・・・

「ロバの穴」
カウンセラーもどきの電話相談會社、その名も「王樣の耳はロバの耳社」に勤める葉村晶。
ここで電話相談に乘る仕事をしてゐる者は何故か自殺する者が多い。
人のこころの暗部を聞かされ續けて、自らのこころが壞れてしまふのだらうか?
しかし、じつはこの會社にはおぞましい裏があつたのだつた。

「殺人工作」
「私の名前は三杉若葉。これから、ひとを殺すつもりだ。」といふ一文から始まる。
そして、まさしく死體の處理をする場面が續くのだが・・・

「あんたのせいよ」
興信所の探偵となつた葉村晶のもとに、學生時代の戀敵、南佳代子から電話がかかつてきた。
彼女の指定する場所にいかなかつたことで葉村晶は殺人事件の容疑者にされ、事件に卷き込まれてしまふ。
揚げ句の果に、眞犯人にフライパンで撲殺されさうになるのだから、探偵とは危險な商賣だ。

「プレゼント」
誕生日のパーティーに招待された人たちが會場に着いたら、當の本人が殺されてゐた。
當日呼び出された人間の中に犯人がゐる筈だ。
事件は暗礁に乘り上げ、1年たつても犯人はいまだに捕まらない。
1年後、眞相究明のために當日現場にゐた人間が集められる。
そして、小林警部補が犯人を指名するのだが・・・

「再生」
アリバイを作るためにビデオカメラをセットした男。
しかし、そのビデオには思ひもよらないシーンが映つてゐた。
葉村晶もすでに1年興信所で探偵をしてゐる。
その興信所に依頼をして來たのは、ホテルで罐詰にされてゐた作家だつた。
しかも、その作家の擔當編集者が、「海の底」で登場した遠藤。
さて事件の行方やいかに。

「トラブル・メイカー」
葉村晶の周圍には事件がすり寄つてくる。
まさに「トラブル・メイカー」だ。
その葉村晶が被害者になつてしまふ。
事件を擔當するのは、ご存じ小林警部補なのであつた。


「冬物語」「プレゼント」「再生」の切れ味がなかなかよかつた。
特に「再生」には騙されてしまつた。
ちなみに葉村晶は、ほかの作品でも登場してゐる。
作品の前後關係からすると、本書が初登場なのかもしれない。


プレゼント

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1 コメント

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Unknown (藍色)
2010-08-30 13:56:25
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