そこのけ×2 インフォメーション

二次創作サークル『そこのけ×2』のインフォページです。
家庭教師ヒットマンREBORN!のディノヒバンヌ。

ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥*最終章

2012年05月26日 | ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

  ギ、ギリギリ今週中のupに間に合いました
最終回は、ちょっと長めになりますが読み納めくださいまし

 前回ぶった切った箇所からの続きからです。


サ腐ァリバスinア腐リカ

 

 群れの総入替えだ。 

「困った時はいつでも頼ってくれ。あんたの守ってきた土地だ。ここの恵みを独り占めする
気はねぇんだ」

 今まで通りディーノに敗れた群れは、ディーノ達が一つ前の闘いで得て、住んでいた土地へ
移動することとなる。なかなか条件のいい土地だから不自由はしないだろう。
 雌ライオン達も元・王に大人しく従う。彼への信頼は絶大で、誰一人、不服を訴えるものは
いない。むしろ誇りに思ってさえいる風情だ。

 いつかこの王も、歳を老い力を失うと群れを追われることとなる。
その時には、ここに戻って来てくれればいい。大いに歓迎する。

 ディーノの仲間の若い者達は、美女揃いのその群れを名残惜しそうにいつまでも見送っていた。
「なんだ、お前ら。いつだってここを出て自分の群れを探せばいいんだぜ?」
「分かってるよ。おれたちゃそんな遠慮はしないぜ、ロマさん。ここがあまりに離れがたいんだ」
ロマーリオは一笑してから、ディーノへ駆け寄った。

「傷の具合はどうだ?ボス」
「ん…、結構やられたけどな、致命傷はねーぜ」
全身に無数の傷を負い、流血も少なくはない。

 ロマーリオが、傷の手当てをする為に皆を呼んでくると言ったのを制した。
男ばかりに全身を舐められる図を想像して、ゾッとしたのが理由だ。

「こういう時に女の子がいてくれりゃあな…」
しばしピンク色の想像に浸ってしまったが、ハッとして振り払った。
自分が捨てた道を、都合のいい時だけ思い浮かべるのは宜しくないだろう。

 自分でケアをする為、群れから少し離れようとしたところに老齢のライオンが近づいて、
咥えていた薬草を渡した。

「化膿せんように塗り込めてやってくれ、ボス」
こういう時に、年配者の知恵は役立つ。こういう時だけでない、闘いの時にせよ、
生活の上でも、年の功だけ積み上げた経験と知識はおおいに役に立ってくれる。
礼を言って、木々の茂みに分け入った。


 鋭い爪と牙で傷つけられた切り傷は、煩わしい痛みを付きまとわせる。
横たわり、自分でせっせと傷口を舐めた。

 日が沈み、夜に差しかかろうとする頃にはいつも風の向きが変わる。
今まで自分の血の匂いで気づかなかっただけかもしれない。
ふと、ディーノは動作を止めて風に向かい鼻を利かせた。

「!」
間違いない。間違えるはずもない。
微かだが、愛しい人の匂いがする。

 閉じかけた傷口が開くのも構わず、ディーノは走りだした。
もしかしたらこの辺りに棲んでいるのだろうか?
そうでなくても豊かな土地だ、狩りをしたり水を飲みに来たりして立ち寄って
いるのかもしれない。
 走り過ぎる際、ところどころの木に恭弥の匂いが残っていた。

 恭弥がここに来ていることは間違いない!


 茂みを抜け、木々がまばらになる。遮るものが無くなると、風は一層強く嗅ぎ慣れた
その匂いを運んでくる。


 草原が広がる先を見つめた。

 夜の差しかかり時だ。薄暗い中でも夜行性動物の目は利く。
肩の高さまで覆う草をかき分け、黒い影が小気味よくこちらへ近づいてくるのが見える。

 距離が縮まり、こちらの存在に気付いたのかその影はピタリと止まった。
首をのばし顔だけヒョッコリと草のしげみから覗かせた。

「きょ…恭弥…!!」
夢か幻か、感動のあまり昇天しそうになった意識をかろうじて繋ぎとめた。

 ちっとも変わっていない。艶やかな毛並みも、しなやかな曲線も、ディーノの大好きな
生意気そうなその表情も。

「生々しい血の匂いがしたから、ご馳走かと思って来たんだけど…」
「オレをエサと思ったのかよ!」
そんな小憎たらしい発言も、愛おしくて仕方がない。
ケガなんてどうだっていいから、走り寄って抱きしめちゃおうと一歩踏み出した時だった。

 カサッと、恭弥の傍らで音がした。
うんと小さな子供が、後ろからぴったりと自分の想い人に寄り添っていたのを目にした時、
全身が凍りついた。

 恭弥と同じ、小さな丸い頭にキラキラ輝く丸い目。毛並みは豹だ。恭弥とは違って、斑点
模様のある豹だ。

 「そ…そうかぁ~。恭弥も父親になったかー」
笑顔で祝いの言葉を述べたが、顔中の筋肉が引き攣って固まっているのを、自分でも
ハッキリと感じる。
耳元で心臓の音が爆音となって聞こえる。
全身の血液が、ザザザザーと音を立てて引いていく気がした。

 その顔をジッと見ていた恭弥は、おもしろそうにフンッと鼻を鳴らして笑った。
「助けてあげたの」
「へ?」
半分抜けかけた魂をギュッと引き戻した。

長いしっぽを操って、仔ヒョウを大事そうに傍らに包み込む。
「もっと小さかった時に迷子になってたんだ」
「きょ…」
恭弥らしい優しさに言葉がつまった。涙腺すらゆるんだ。
小さき者、弱きものにはめっぽう甘い黒ヒョウだ。

「そっか、そっかー!よかったなぁ」
突然生命力がみなぎってきた。
もしかしたら傷口から、おさまりかけた出血が噴出してるんじゃないかと思ったくらいだ。

仔ヒョウに近づくと、ギョッとしたように恭弥の陰に隠れる。
「アナタ血まみれだから、この子が恐がるだろ?」
痛みを上回る衝撃的出来事を目にしてすっかり忘れていた痛みが、そうだったと思いだしたとたん
ビリビリと体中に蘇ってきた。
「イテテテ」

「仕方ない人だね。もう少し我慢できる?」
そう言うと仔ヒョウを連れ、今ディーノが来た道をスタスタと歩いてゆく。
こんなケガ人を引きずり回すとは、さすが容赦のない恭弥だ。
嬉々としてついてゆく自分もどうかと思うが。

 木々の茂みに少し入ると、とある一本の木の下で止まった。
さっき恭弥の匂いがしたから見上げたら雌のチーターがいてシャーッと威嚇された所だ。
「ちょっと待ってて」
恭弥は木を登り、そのチーターに近づいた。何やらゴソゴソしている。
すぐに恭弥は降りてきた。
「アナタはこの子ね」
ディーノの目の前に、チーターの赤ちゃんが置かれた。もぞもぞと目も開いていない状態で動いている。
もう一度木に登り、もう一匹口に咥えて降りてきた。

「運んで」
ライオンの王となったディーノに命令する。
こんなちっこいの、どこをどう口にくわえりゃいいんだと躊躇ってしまう。
「そっと優しくね」
持ち上げようとしている時に言われた。
「甘噛みなら慣れてるだろ?」
色っぽい言い様に、恭弥を見たまま固まりそうになったが、あの頃の力加減を思い出して
赤子を咥え上げると、モゾモゾしていたちっこいのは大人しく動きを止めた。
拍子抜けしそうなほどに軽い。

 じっとしたままの素直な可愛らしさに、ディーノは愛おしさに似たものを覚えた。
「子供の本能って凄いだろ?運びやすいようにイイ子になるんだ」
ゆったりと笑うそのたたずまいは、きっとどんな女の子よりキレイだ、と言いそうになったのを
ぐっと堪えた。

 それぞれ赤ちゃんを口に咥えしばらく歩くと、ある木に辿りついた。
恭弥は2匹の赤ちゃんを順番に木の上に運んだ。
仔豹もその後を追い、赤ちゃんの番をするように体をくっつけて休んだ。
恭弥はそれを見届けると子供たちの顔を一舐めずつしてから、ディーノが待つ木の下へ戻った。

「あの赤ん坊も拾ったのか?」
その木の根元で2頭並んで横たわり、子供のいる場所を見上げながら再会の感動に浸る。

「うん。さすがに僕はミルクをあげられないから、授乳中の女の子を探してお願いしてるんだ。
お礼は、代わりに狩りをしてきてあげるの」
「あったまいいな~」
「大きくなったら狩りの仕方を教えて、ちゃんと独り立ちさせるんだよ」

そうやって今までも多くの子供を育ててきたと言う。

「かっこいいゼ、恭弥!」
フフン、と顎を上向き加減で笑う。笑った後、ふいにディーノの顔を舐めてきた。
「ッ…!」
 傷口を癒すように丁寧に舐めてくる。
傷が痛いのと、喜びで胸がふくれて嬉しいのとで泣きだしそうだった。

「恭弥はここに棲んでるのか?」
「子供がいる今だけ通ってる。ここに棲む動物は温厚な子が多いから頼みごとがしやすいんだ」
肩から脇にかけて舐めている口元が答えた。
恭弥が誰かを頼るなんて…自分がそれになれれば嬉しい。

「これ、傷跡が残るね」
「いいんだ、名誉の傷だ」
恭弥がほんの一瞬だが息を止めた気がした。
「やられたんじゃないの?ここのボスに」
今度はディーノが恭弥を見てフフンと笑った。

「オレが、勝ったんだ」
恭弥は酷く驚いた顔をした。まん丸な目がもっとまん丸になった。

「あのキングを…」

どこへともなく視線を流し、呟くような言葉にディーノは複雑な思いだ。
だがすぐにそんな気持ちは霧散する。
「そう…」
恭弥の視線が自分に戻って来て、
「そう。あなたが王になったんだね」
 期待した褒めてもらえるような言葉は言ってもらえなかったが、もうその微笑みだけを与えて
もらえれば天まで昇れそうだ。

 嬉しくて愛しくて思わずその小さな顔をめいっぱい舐め上げてやったら、久々の豹パンチが
飛んできた。

不覚にも横っ面で思いっきり受けてしまった。目の前に星が散るとはこのことだ。

「自業自得だよ」
ちょっぴり怒りながら、それでも恭弥は体中に広がる無数の傷口をひとつひとつ大事そうに
キレイにしていく。

 ディーノはくったり倒れ込み、恭弥から傷の手当てをただ大人しく受けていた。

目をつむったまま、酷く幸せそうな顔をして。


 夜はまだ始まったばかりだ。

 

 ************


 黄金の獅子を王に戴く群れがある。

ライオン同士の争いのない楽園に彼らはいる。

不思議なことに雄だらけの群れだが、さらに不思議なことにライオン以外の猫科の
子供たちも彼らに守られ、育てられている。


 時々、このサバンナには珍しい黒いヒョウがこのライオンの群れを訪ねにやってくる。

決まって小さな子供を連れている。親のいない、置きざりにされてしまった子供達だ。

 その黒ヒョウから面倒を見てほしいと頼まれるのだろう。
その度に王は、困りつつもデレッとした顔になって引き受けている。

 黒ヒョウは、そうしてまたどこか遠くへ行ってしまう。
だがしばらくすると、またその美しい姿を現すのだ。

ずっとずっと、生きている限り、ライオンの王に会いに来るのだろう。

 

 幾多の動物が、その懐で生まれ育まれ死んでいく。

 母なる大地、このサバンナは果てしなく広い。

 

 

 

  こんな一つの長い(真面目な)お話になるとは思いもしませんでした。
国語力の弱い私が最後まで書けたのも、読んでいるよ!とのお声をくださった皆様のおかげです!
数は少なくとも、すごいパワーになりました

 今日、参考資料を探すのに単行本を漁ってたら、
標的367でヒバリの口から『ここはまるでサバンナだ』ってセリフが吐かれてて驚いた!
(そんなセリフがあったのすらまったく記憶になかった・笑)
 嬉しそうにしていたヒバの顔見て、きっとこの妄想サバンナは無意識下に誘導されてたんだわ~v
と運命を感じました。

 最後までお付き合いありがとうございました 改めて後記など書きに来たいと思いますv