そこのけ×2 インフォメーション

二次創作サークル『そこのけ×2』のインフォページです。
家庭教師ヒットマンREBORN!のディノヒバンヌ。

後記:ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

2012年06月10日 | ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

 4月26日から始まり、偶然にも翌月の同日に連載を終えた妄想サファリ話。
1カ月間に渡りお付き合いありがとうございました~

 少し間があきましたが、後記を書くと言ってたのを思い出しまして。
改めて第一章から読んできました。
 や~、手直ししたいくらい恥ずかしいです!
長くならないよう単調にサクサクと進めようと色々はしょって短くしたのは意図的であっても、
特に最初の方なんかは小説というつもりは皆目なかったにせよヒドイ有様ですね(肉付けしたい…)
…まあ、伝えたいサファリ版ディノヒバ像は描写できてるみたいなのでヨシとします!


 お話作るのが好きで創作活動しているようなものなのですが、文字表現っていうのも
ちょっと齧ってみて楽しかったです!
(この後に下書きもペン入れも背景のパースで多大な時間が取られることも
トーンもホワイトもカラー表紙描くことも必要ないのが凄くイイ!!)
ちゃんとしたお話にする為には、ちゃんとサバンナに生息する動物や植物形態とか
調べて名称を出したり、お勉強も必要ですが。

 私もすこ~しですが調べたことがあったのでここでお披露目
まず黒ヒョウ。
 サファリで恭弥といったらコレしか当てはまりませんよね!
舞台がアフリカのサバンナってなってますんで、黒ヒョウ生息地ではないようです。
東南アジアだそうで。確かに薄茶色の草原の世界に、あんな黒いのいたら目立って
狙われちゃうし、エサにも逃げられちゃいますね(^^;)
だからこそ妄想サファリでは貴重種であって、ママンも狙われちゃって恭弥坊やは
独りになっちゃったんですがね!

そして草!
 ディーノから恭弥へ捧げるサファリハンバーグに添えられますが、はたして猫みたいに
ライオンも食べるのか?⇒体調の悪い時に食べることがあるそうです!
おっしゃあーっ!妄想がリアリティを増しました(笑)

 ライオンも低い木なら登るという、知らなかったこともコメントで教えて頂きました。
妄想力をパワーアップして下さるのも皆様のおかげです
普段、リアル界でディノヒバの話することもないので、本当に楽しい時間を過ごさせて
もらいました!(感涙)

 この妄想界では、色んなシチュのディノヒバと共に、ここで生まれたライオンディーノと
黒ヒョウ恭弥も暮らしてます。
二頭のことを時々思い出しもらえると嬉しいですv


 最後にちょっと小ネタを。。。
 猫科の動物の赤ちゃん期の可愛いことってば!! 最強です。
ライオンディーノも、ヨタヨタ歩きの子供の頃はさぞや可愛かったかと…。
(TVで見たライオン赤ちゃんのあの潤んだ目と夢見心地の表情に悶えました)
そしてその頃に出会った恭弥なんかは、もうコロコロしている黒くて小さな
猫なのか犬なのか分からんような赤ちゃんだったんだろうなぁ~
(黒ヒョウの赤ちゃんは見たことないので一度見てみたい!!)

 ちっちゃい恭弥がヒョウパンチを繰り出す頃、『かみころちゅ!』(←決め文句)と
言ってポフポフと仔ディーノの顔を叩いてたらいいと思います。
「ちっとも痛くないぜ♪」とノホホンとしていたその時から3年後、そのヒョウパンチは
凄まじいものになるのですねぇ~。

 ひょっこり小ネタが浮かんだら、また書き込みに来ると思いますが、とりあえず
この後記で締めくくります。

 ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥は永遠です!! 

 


ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥*最終章

2012年05月26日 | ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

  ギ、ギリギリ今週中のupに間に合いました
最終回は、ちょっと長めになりますが読み納めくださいまし

 前回ぶった切った箇所からの続きからです。


サ腐ァリバスinア腐リカ

 

 群れの総入替えだ。 

「困った時はいつでも頼ってくれ。あんたの守ってきた土地だ。ここの恵みを独り占めする
気はねぇんだ」

 今まで通りディーノに敗れた群れは、ディーノ達が一つ前の闘いで得て、住んでいた土地へ
移動することとなる。なかなか条件のいい土地だから不自由はしないだろう。
 雌ライオン達も元・王に大人しく従う。彼への信頼は絶大で、誰一人、不服を訴えるものは
いない。むしろ誇りに思ってさえいる風情だ。

 いつかこの王も、歳を老い力を失うと群れを追われることとなる。
その時には、ここに戻って来てくれればいい。大いに歓迎する。

 ディーノの仲間の若い者達は、美女揃いのその群れを名残惜しそうにいつまでも見送っていた。
「なんだ、お前ら。いつだってここを出て自分の群れを探せばいいんだぜ?」
「分かってるよ。おれたちゃそんな遠慮はしないぜ、ロマさん。ここがあまりに離れがたいんだ」
ロマーリオは一笑してから、ディーノへ駆け寄った。

「傷の具合はどうだ?ボス」
「ん…、結構やられたけどな、致命傷はねーぜ」
全身に無数の傷を負い、流血も少なくはない。

 ロマーリオが、傷の手当てをする為に皆を呼んでくると言ったのを制した。
男ばかりに全身を舐められる図を想像して、ゾッとしたのが理由だ。

「こういう時に女の子がいてくれりゃあな…」
しばしピンク色の想像に浸ってしまったが、ハッとして振り払った。
自分が捨てた道を、都合のいい時だけ思い浮かべるのは宜しくないだろう。

 自分でケアをする為、群れから少し離れようとしたところに老齢のライオンが近づいて、
咥えていた薬草を渡した。

「化膿せんように塗り込めてやってくれ、ボス」
こういう時に、年配者の知恵は役立つ。こういう時だけでない、闘いの時にせよ、
生活の上でも、年の功だけ積み上げた経験と知識はおおいに役に立ってくれる。
礼を言って、木々の茂みに分け入った。


 鋭い爪と牙で傷つけられた切り傷は、煩わしい痛みを付きまとわせる。
横たわり、自分でせっせと傷口を舐めた。

 日が沈み、夜に差しかかろうとする頃にはいつも風の向きが変わる。
今まで自分の血の匂いで気づかなかっただけかもしれない。
ふと、ディーノは動作を止めて風に向かい鼻を利かせた。

「!」
間違いない。間違えるはずもない。
微かだが、愛しい人の匂いがする。

 閉じかけた傷口が開くのも構わず、ディーノは走りだした。
もしかしたらこの辺りに棲んでいるのだろうか?
そうでなくても豊かな土地だ、狩りをしたり水を飲みに来たりして立ち寄って
いるのかもしれない。
 走り過ぎる際、ところどころの木に恭弥の匂いが残っていた。

 恭弥がここに来ていることは間違いない!


 茂みを抜け、木々がまばらになる。遮るものが無くなると、風は一層強く嗅ぎ慣れた
その匂いを運んでくる。


 草原が広がる先を見つめた。

 夜の差しかかり時だ。薄暗い中でも夜行性動物の目は利く。
肩の高さまで覆う草をかき分け、黒い影が小気味よくこちらへ近づいてくるのが見える。

 距離が縮まり、こちらの存在に気付いたのかその影はピタリと止まった。
首をのばし顔だけヒョッコリと草のしげみから覗かせた。

「きょ…恭弥…!!」
夢か幻か、感動のあまり昇天しそうになった意識をかろうじて繋ぎとめた。

 ちっとも変わっていない。艶やかな毛並みも、しなやかな曲線も、ディーノの大好きな
生意気そうなその表情も。

「生々しい血の匂いがしたから、ご馳走かと思って来たんだけど…」
「オレをエサと思ったのかよ!」
そんな小憎たらしい発言も、愛おしくて仕方がない。
ケガなんてどうだっていいから、走り寄って抱きしめちゃおうと一歩踏み出した時だった。

 カサッと、恭弥の傍らで音がした。
うんと小さな子供が、後ろからぴったりと自分の想い人に寄り添っていたのを目にした時、
全身が凍りついた。

 恭弥と同じ、小さな丸い頭にキラキラ輝く丸い目。毛並みは豹だ。恭弥とは違って、斑点
模様のある豹だ。

 「そ…そうかぁ~。恭弥も父親になったかー」
笑顔で祝いの言葉を述べたが、顔中の筋肉が引き攣って固まっているのを、自分でも
ハッキリと感じる。
耳元で心臓の音が爆音となって聞こえる。
全身の血液が、ザザザザーと音を立てて引いていく気がした。

 その顔をジッと見ていた恭弥は、おもしろそうにフンッと鼻を鳴らして笑った。
「助けてあげたの」
「へ?」
半分抜けかけた魂をギュッと引き戻した。

長いしっぽを操って、仔ヒョウを大事そうに傍らに包み込む。
「もっと小さかった時に迷子になってたんだ」
「きょ…」
恭弥らしい優しさに言葉がつまった。涙腺すらゆるんだ。
小さき者、弱きものにはめっぽう甘い黒ヒョウだ。

「そっか、そっかー!よかったなぁ」
突然生命力がみなぎってきた。
もしかしたら傷口から、おさまりかけた出血が噴出してるんじゃないかと思ったくらいだ。

仔ヒョウに近づくと、ギョッとしたように恭弥の陰に隠れる。
「アナタ血まみれだから、この子が恐がるだろ?」
痛みを上回る衝撃的出来事を目にしてすっかり忘れていた痛みが、そうだったと思いだしたとたん
ビリビリと体中に蘇ってきた。
「イテテテ」

「仕方ない人だね。もう少し我慢できる?」
そう言うと仔ヒョウを連れ、今ディーノが来た道をスタスタと歩いてゆく。
こんなケガ人を引きずり回すとは、さすが容赦のない恭弥だ。
嬉々としてついてゆく自分もどうかと思うが。

 木々の茂みに少し入ると、とある一本の木の下で止まった。
さっき恭弥の匂いがしたから見上げたら雌のチーターがいてシャーッと威嚇された所だ。
「ちょっと待ってて」
恭弥は木を登り、そのチーターに近づいた。何やらゴソゴソしている。
すぐに恭弥は降りてきた。
「アナタはこの子ね」
ディーノの目の前に、チーターの赤ちゃんが置かれた。もぞもぞと目も開いていない状態で動いている。
もう一度木に登り、もう一匹口に咥えて降りてきた。

「運んで」
ライオンの王となったディーノに命令する。
こんなちっこいの、どこをどう口にくわえりゃいいんだと躊躇ってしまう。
「そっと優しくね」
持ち上げようとしている時に言われた。
「甘噛みなら慣れてるだろ?」
色っぽい言い様に、恭弥を見たまま固まりそうになったが、あの頃の力加減を思い出して
赤子を咥え上げると、モゾモゾしていたちっこいのは大人しく動きを止めた。
拍子抜けしそうなほどに軽い。

 じっとしたままの素直な可愛らしさに、ディーノは愛おしさに似たものを覚えた。
「子供の本能って凄いだろ?運びやすいようにイイ子になるんだ」
ゆったりと笑うそのたたずまいは、きっとどんな女の子よりキレイだ、と言いそうになったのを
ぐっと堪えた。

 それぞれ赤ちゃんを口に咥えしばらく歩くと、ある木に辿りついた。
恭弥は2匹の赤ちゃんを順番に木の上に運んだ。
仔豹もその後を追い、赤ちゃんの番をするように体をくっつけて休んだ。
恭弥はそれを見届けると子供たちの顔を一舐めずつしてから、ディーノが待つ木の下へ戻った。

「あの赤ん坊も拾ったのか?」
その木の根元で2頭並んで横たわり、子供のいる場所を見上げながら再会の感動に浸る。

「うん。さすがに僕はミルクをあげられないから、授乳中の女の子を探してお願いしてるんだ。
お礼は、代わりに狩りをしてきてあげるの」
「あったまいいな~」
「大きくなったら狩りの仕方を教えて、ちゃんと独り立ちさせるんだよ」

そうやって今までも多くの子供を育ててきたと言う。

「かっこいいゼ、恭弥!」
フフン、と顎を上向き加減で笑う。笑った後、ふいにディーノの顔を舐めてきた。
「ッ…!」
 傷口を癒すように丁寧に舐めてくる。
傷が痛いのと、喜びで胸がふくれて嬉しいのとで泣きだしそうだった。

「恭弥はここに棲んでるのか?」
「子供がいる今だけ通ってる。ここに棲む動物は温厚な子が多いから頼みごとがしやすいんだ」
肩から脇にかけて舐めている口元が答えた。
恭弥が誰かを頼るなんて…自分がそれになれれば嬉しい。

「これ、傷跡が残るね」
「いいんだ、名誉の傷だ」
恭弥がほんの一瞬だが息を止めた気がした。
「やられたんじゃないの?ここのボスに」
今度はディーノが恭弥を見てフフンと笑った。

「オレが、勝ったんだ」
恭弥は酷く驚いた顔をした。まん丸な目がもっとまん丸になった。

「あのキングを…」

どこへともなく視線を流し、呟くような言葉にディーノは複雑な思いだ。
だがすぐにそんな気持ちは霧散する。
「そう…」
恭弥の視線が自分に戻って来て、
「そう。あなたが王になったんだね」
 期待した褒めてもらえるような言葉は言ってもらえなかったが、もうその微笑みだけを与えて
もらえれば天まで昇れそうだ。

 嬉しくて愛しくて思わずその小さな顔をめいっぱい舐め上げてやったら、久々の豹パンチが
飛んできた。

不覚にも横っ面で思いっきり受けてしまった。目の前に星が散るとはこのことだ。

「自業自得だよ」
ちょっぴり怒りながら、それでも恭弥は体中に広がる無数の傷口をひとつひとつ大事そうに
キレイにしていく。

 ディーノはくったり倒れ込み、恭弥から傷の手当てをただ大人しく受けていた。

目をつむったまま、酷く幸せそうな顔をして。


 夜はまだ始まったばかりだ。

 

 ************


 黄金の獅子を王に戴く群れがある。

ライオン同士の争いのない楽園に彼らはいる。

不思議なことに雄だらけの群れだが、さらに不思議なことにライオン以外の猫科の
子供たちも彼らに守られ、育てられている。


 時々、このサバンナには珍しい黒いヒョウがこのライオンの群れを訪ねにやってくる。

決まって小さな子供を連れている。親のいない、置きざりにされてしまった子供達だ。

 その黒ヒョウから面倒を見てほしいと頼まれるのだろう。
その度に王は、困りつつもデレッとした顔になって引き受けている。

 黒ヒョウは、そうしてまたどこか遠くへ行ってしまう。
だがしばらくすると、またその美しい姿を現すのだ。

ずっとずっと、生きている限り、ライオンの王に会いに来るのだろう。

 

 幾多の動物が、その懐で生まれ育まれ死んでいく。

 母なる大地、このサバンナは果てしなく広い。

 

 

 

  こんな一つの長い(真面目な)お話になるとは思いもしませんでした。
国語力の弱い私が最後まで書けたのも、読んでいるよ!とのお声をくださった皆様のおかげです!
数は少なくとも、すごいパワーになりました

 今日、参考資料を探すのに単行本を漁ってたら、
標的367でヒバリの口から『ここはまるでサバンナだ』ってセリフが吐かれてて驚いた!
(そんなセリフがあったのすらまったく記憶になかった・笑)
 嬉しそうにしていたヒバの顔見て、きっとこの妄想サバンナは無意識下に誘導されてたんだわ~v
と運命を感じました。

 最後までお付き合いありがとうございました 改めて後記など書きに来たいと思いますv


 


ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥その9

2012年05月22日 | ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

 思えば遠くに来たもんだ。。。探検隊、出発してからどれだけ経ったのでしょう。
ゴールももう目の前だ!悔いのないように妄想サバンナを駆けまわるゾ

 

 

 楽園というものを、ディーノ達は初めて見たような気がした。

 広大なサバンナに突如あらわれたその楽園は、なにもかもが豊かだった。
広がる森、花々が咲き乱れ、蝶や鳥が羽を休ませている。
日陰も多く、水辺も近いので風も涼しい。
そこに棲む動物達は、平和そのものに見えた。


 そしていよいよ、ここをテリトリーとするライオン王と対峙する時が来た。
王たる風格と体格の持ち主だ。
普通のライオンなら、その威圧だけで負けてしまうだろう。
顔から身体に至る大小もの傷跡が、過去の歴戦を物語っている。

2頭から随分と距離をおき、それを見守るように周りを囲むディーノの群れの誰もが
固唾を飲んだ。
 これは今までのようにはいくまい、下手をすりゃ…不吉な予感までもする。


「引くならまだ間に合うぞ、若僧」
余裕のあるゆったりとした物言いだが、ビリビリと殺気を感じる。
「そんな気があんのなら、鼻からここへは来やしねーぜ」

 その言葉を合図に、互いに取っ組みあった。
 熟練された重厚感のある筋肉と、若々しい躍動力に富んだ筋肉がぶつかり合う。
後ろ足で立ちあがる姿は、身の高さも増して大迫力だ。

「どっちのパンチも受けたらすげぇイテーだろうな」
「ああ、へたすりゃ一発で失神モノだぜ」
仲間達は緊張で体中に力が入ったまま、遠巻きで戦いの行く末を見届けようとしている。


 そんじょそこらの威力じゃなかった。
パンチもぶつかる衝撃も、噛みつく牙も雄叫びも、何もかにもに圧倒されそうだ。

 だがディーノは鍛えられているのだ。あの高速パンチに。素早い身のこなしを逃がさんと
あの艶やかな黒い身体を何度も捕まえて押さえこんだ。
力ではまだ叶わなくても、機敏さならディーノの方がはるかに勝っている。
 可能な限りかわして、素早い動きで相手を翻弄する。体力を消耗させれば、力は
互角になる。

 両者ともあちらこちらに血の筋が伝うようになった。衝撃を受ける度に、血の飛沫が
辺りに散る。

 ただごとならぬ雰囲気に、近隣の多種多様の動物達が集まって来た。
ライオン達の群れから更に距離を置き、周囲をぐるりと囲む。

 いたる所の肉が抉れているのだろう、痛みを我慢しても力が入らない。
相手はせいぜい浅い傷をいくつか負ってる程度だ。
だが、息が上がってきている。持久戦に持ち込めばこちらが有利だ。


 予想に反して粘る若いライオンを前に動揺も表わさず、王はディーノの群れに視線を移した。
雄ばかりの奇妙な群れだ。若いのから年寄り、血気盛んのから、一頭になったら野垂れ死ぬ
だろう弱った者まで。
この者達を守りながら群れを引き連れ、この地に辿りついた若いライオンの姿に視線を戻した。

「オレ達には夢がある」
王の疑問に答えるように、ディーノは言った。

「ライオン達の楽園をつくる」
王は息を整えながら、静かにディーノを目を見た。話の先を促したのだ。

「…群れに入れないライオン達が幸せに暮らせる楽園だ」
たった独りっきりで荒野で死ぬこともない…それがディーノ達の理想郷。

 そしてもう一つ、この楽園にあの人も暮らしてほしい。
恭弥…。この地を手に入れたら、迎えに行こう。どんなに遠くにいても必ず探しだす。
今、ディーノはそう心に決めた。

 ディーノの顔つきが変わったのを目にして、王は瞬時に距離を取った。
2頭とも動かないまま緊迫の時が過ぎる。
ディーノは相手の考えが読めずにいた。どう出てくるのか、すぐに反撃できるよう
体中の筋肉が緊張でわななき出しそうだ。

呼吸を止めて固まってしまったギャラリーの見つめる中、敗北の証である後ろ足を
折ったのは王だった。
「いいだろう、この地を譲ろう」
「!?」

「お前の覚悟を知った。俺は今まで、自分のライオンとしてのプライドの為だけに闘ってきた。
だが、お前は違うようだ。仲間の為に闘っている者に、たとえ闘いに勝とうとも、それは真の
勝利ではない」

王は、退くことを決意した。

 


 あんまりキリのいい所ではないけど、変に長く続いちゃうのでここで一旦切ります。
続きは今週中にupしま~す


ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥その8

2012年05月19日 | ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

 華のない一話になってしましました
さらっと読んで下さい。。。

 

 

 サバンナの中でも、地の利に恵まれるエリアとそうでないエリアがある。
湖や川などの水辺があるか、灼熱の太陽から身を守る木々が茂っているか、
獲物となる動物の生息もしくは移動の際の通過エリアとなっており捕獲に有利か、
などなど。

 当然、条件のいいエリアは強いライオンの群れが支配している。
つまりは強いボスが君臨していることとなる。


 そんな弱肉強食のサバンナで、近頃、勢力をのばしているライオンの群れがあった。
金の獅子をボスとする、ディーノの群れだ。

 ただ、彼の群れは他とは少し、いや、かなり違っていた。
群れのライオンが全員オスなのだ。
若者から壮年者、さらには現役を引退した老ライオンまで。
各々がそれぞれに事情を抱え、この群れに加わり群れを大きくしてきた。
ディーノの生き様に惚れこんでいるライオンも多い。

 勢力を伸ばしていると言っても、彼らは極力争いを避けた。
雄ライオンの群れだが、相手のボスとは必ずディーノが一対一で向かい合った。
先方もディーノを見るなり、戦って叶う相手でないことは火を見るより明らかなせいか
大抵は話し合いで終わってしまう。
戦ったところで、易々と勝ってしまうから、相手はケガを負うだけ損をする。
 普通なら群れを乗っ取られるところだが、ディーノ達はテリトリーだけを奪う。
その群れは土地を追われることになるが、ディーノ達が今までいた土地へ移るだけとなる。
ほんの少し条件が下がるだけの土地だ。

 このようにしてディーノ達は、少しずつ条件のいい土地にテリトリーを移していった。
相手の群れを追いだして、なぜテリトリーを拡大しないのか不思議に思う一員もいたが
「同じライオンじゃねーか。無駄な殺生や、ましてや相手を路頭に惑わす必要はない。
オレ達はオレ達だけで喰っていけるだけのテリトリーがあればいいさ」
ボスにそう言われれば、納得もするしカッコイイとも思ったりもする。

「だいたいオレは、メスに喰わしてもらうってのがどうも落ち着かなかったんだ」
ディーノの右腕であり、それが理由で群れを離れたロマーリオは、なかなかの狩りの名手だ。
「カッコよく生きてーじゃねぇか」
というのがロマーリオの信条だ。
 ディーノに出会い、こんな見目麗しい雄々しいライオンが群れに入らない道を選んだ理由を知り、
いたくシビレたらしい。すぐに仲間にしてくれと言い寄った。

 そうして旅を続けているうちに、仲間が増えた。

 独立してこれから群れを見つけようとする若ライオンが、それまでの間だけでもディーノの群れに
置いてほしいと身をよせたが、クールで渋いこの群れが誇りに思えてそのままいついたり、
老いて群れから追い出され、独り身になって不自由しているところに、ディーノに助けられ、恩返しにと
持ちうる限りの知恵と情報を与えてくれる者がいたり。
 わざわざ噂を聞き、果てないサバンナを探し回って群れに入りにきたライオン達もいる。

 自ら望んで、この掟破りの群れの一員となっているのだ。
結束は固い。


  恭弥と別れ、どれくらいの距離をこの群れで移動してきただろう。
自分だけの力ではない。仲間と共に切り開いてきた道だ。
目指すはナイル川の恵みを受けた黄金の大地。
なみなみと水をたたえた大河は、生きるものすべてに恵みを与える。渇きに餓えることはない。
木々は生い茂り、多くの動物達がその土地に憩い集まる。
この世の楽園と呼ばれるその場所が手に入れば、そこが旅の終着地だ。

 最後の移動を始める。
いよいよそんな時が目前に迫って来た。

 広いサバンナと言えど、金の獅子の存在はかなり知れ渡っている。
恭弥もどこかで耳にしているだろうか。自分をを思い出してくれているだろうか。

「もうすぐアンタの夢が叶うな」
ロマーリオがどこか少し高揚した声で話しかけた。
「ああ。オレでなく、みんなの夢でもある」
みんなが豊かに過ごせる安住の地へ、それを掲げて皆の目標とした。

 その地を支配する最強のライオンを思った。
きっと命がけの闘いになるだろう。
でも自分は死なない。恭弥に会えないまま、死ぬわけにはいかない。

 ディーノ達の目の前に、突如、森かとかと見紛う豊かな自然の風景が広がった。
彼らが夢見て目指してきた、楽園だ。

「恭弥…」

 ライオンの、王の中の王になれば、その噂を風に聞きもしや恭弥が会いに来てくれるかも
しれないと淡い期待をもっていた。

「へなちょこだったアナタが、よくここまで来れたね」
生意気に、だけど少しだけはにかむように微笑みながら、褒めてくれる顔が脳裏に浮かぶ。
僅かでもいい、望みがあるなら託したい。

 ディーノはその一心で、最強の相手に臨もうとしていた。

 

あと2回で終了予定!もう少しお付き合いください


ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥その7

2012年05月16日 | ライオンディーノと黒ヒョウ恭弥

 ライオンに「この人」とかって言っちゃってますが、お気になさらず~ 他に表現のしようがニャイ。。。

サバンナ探検隊、いざ出陣じゃ~

 





 あれからこの広大なサバンナで、金のたて髪をしたライオンと黒いヒョウが共にいる奇妙な
光景があちらこちらで目撃されるようになった。

 時にライオン一頭のみで、かと思うとぴったり2頭で寄り添っていたりする。


「恭弥~、ダメだったぜ」
見知らぬ土地をしばし走り、恭弥の匂いをたどり彼の寝そべる低木にまでたどり着いた。

「またなの」
木の上からひょこっと顔だけを覗かせた後、スルスルと木を降りてくる。
ディーノに頭だけ擦りつけてその場でしゃがんだ。
まだ息が切れているディーノもそれに倣う。

 群れを離れてからというもの、随分この広いサバンナを二人で旅してきた。
当然のごとく、途中にいくつものライオンの群れが存在し、それを目にする度に恭弥は
ディーノから離れた。

 ライオンの群れにボスがいるなら、その雄ライオンと戦ってその座を奪う。
雌しかいない群れならば、受け入れられさえすれば必然的にボスとなる。

 なのにディーノは
「いや~、見るからに強そうな雄だったから、無理!」とか
「女の子達に、お呼びじゃないって断られちまった」とか言って、せっかく距離を置いた
恭弥のところへ戻って来てしまう。


 恭弥はひとつ、溜め息をついた。
ディーノほどの体躯のライオンはそうめったにいない。
どんなライバルだって尻尾を巻いて逃げだす、そんな風格ももっている。
ましてや若くて美しいこの人を、拒絶する雌ライオンなんていやしまい。

 理由は…自分だ。
ディーノがどこかの群れのボスになる日が、自分との別れの日だ。そう約束した。
それを避けているのが一目瞭然だ。
こんなこと、いつまでも続けていいわけない。


「…あなたがちっとも群れのボスに収まらないから、僕はいつまでたっても自由になれない」
つぶやかれた言葉に、ディーノの笑顔がこわばった。

いよいよ切りだす気なのだろうか、別れの言葉を。


「あなたと別れるのは寂しいけど、でもその日こそ僕が本来のヒョウとして生きられる日
でもあるってことなんだ」

ディーノだっていつまでも一緒にいられると思ってるハズがない。だから出来るだけ
慎重に、言葉を選ぶ。
これで引き下がってほしい。黙って自分から離れてほしい。でなければ……

「なんでだよ。恭弥だってオレのこと好きだろ?オレは恭弥が大好きだ。だから一緒に
いる。なにが悪い?」 

 もう、開き直りにしか聞こえない。
どんな思いで恭弥が話をしてるのか、分かってるのだろうか。

「僕はヒョウで、あなたはライオン」
「うん」

「種が違うし、子供だって残せない」
「うん」

「分かり切ってることだよね」
当たり前すぎて、言った自分で笑ってしまった。

「だけど」
ディーノは屈託もなく明るい表情で話しだした。顔周りの髪が明るいからそう見えるのだろうか。
無理に作った笑顔でも、眩しくうつる。

「ライオンだからこうとか、ヒョウだからこう生きなければならないとかおかしいじゃねぇか。
お前、そういうの一番キライだろ?お前の本音はどこにある?本当の望みはどうだよ」

正直すぎる男の吐く言葉だ。
説得するには骨が折れそうだから、自分が引くしかない。


 恭弥は深呼吸した。感情的にならないように、冷静に話せるように。

「僕はよく考えるんだ。このサバンナに生まれ落ちて、あなたと出会って、ずっとあなたと
一緒にいられた。それはどれほどの奇跡なんだろうって」
「…ああ、運命だな」

 恭弥はチラリとディーノを見やってから、言葉をつづけた。
「いっぱい感謝してる。だけど、僕は僕だ。戻るべき場所がある」

 ディーノの表情が曇った。

「あなたの隣じゃない」 
「………!」

 かるく…いや、かなりの衝撃を受けたようだ。身動き一つできなくなったライオンディーノは
ともすれば呼吸すら忘れているようだ。

「あなたといると苦しいんだ…。それはきっと僕が単独で生きてゆく種だから、誰かと一緒に
いるとか束縛されるとか我慢がならないんだ。。
あなたと離れて寂しいと思うのは、ライオンの群れで皆とずっと一緒にいたから。情も移るし、
誰かが近くにいて当たり前の環境だったから。
あなたも一人になれば、きっと寂しくて誰かを求めるはずだよ」

 地面の一点に視線が固定されてしまったかのように動かないディーノに、告げる。

「あなたは僕と一緒にいちゃダメだよ」

言葉のひとつひとつにも芯が通っているように思える恭弥だ。
ゆるぎない判断であり、不屈の決意だ。


 恭弥が去っていく後ろ姿をぼんやり見ていた。しなやかな長い尾をくねらせて、静かな
音一つしない優雅な歩き方に見とれた。やがてその黒い姿が歪んでぼやけた。

 ぼやけた視界の中央で、恭弥が振り返ったのだろう、 
「あなたをずっと想っているよ。可愛い、あなたにそっくりな赤ちゃんを作ってね」
それが最後に聞いた愛しい人の声になった。

 自分のことを思って恭弥は身を引いたのかとその時分かったけど、ディーノはただ瞳から
涙がこぼれないように、ただじっと動かずにいるだけだった。