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週刊 新大土壌研

新潟大学農学部農学科 土壌学研究室の活動日記です 『週刊』を名乗っていますが、不定期に更新していきます

今までの知見から、土壌対策提案その1、

2011-04-26 | MN(野中)

 メールやブログを通じて質問が来ていますのでそれにお答えすることも含めて、下記をまとめました。 

 できるだけ早く、農家が農業を営める観点から、横山論文を私なりにまとめたものです。

 まず、私の思いを書きます。 

 日本では古くから「食農同源」と「医食同源」と言う言葉があります。つまり、食べ物は「農」の営みで作られている。農村風景はこの「農」の営みによりできている。その源は私の専門の「土」である。「土」は古代から日本では自然の生き物、生命力と考えられてきました。ヨーロッパでもヘブライ語の「土」(Adama)はアダムの起源となり、その妻イブは「生きること」(hava)を起源としています。これら、健全な「土」で栽培される農産物は私たちを健康に導いてくれます。また、「農」とは自然の中の農家の営み、生活、生きざまそのものです(ポプラ社「旬がまるごと」著者文章掲載予定、一部引用)。

 

 この農の営みを回復するためには健全な「土」が必要です。

 

 今年の秋以降は放射能核種が環境中に放出されないとの前提で書きます。

 

 1)森林地帯

 チェルノブイリと異なり、標高の高い山が多く、今回の核種の環境への放出で風向きで特に集積しやすい場所を特定して、汚染地図を作製すること。その場合、樹種にかかわらず植物体への放出直後から今まで沈着した放射能核種が多いと考えられる。この際、葉面吸収により直接植物体内に蓄積された放射能核種(この場合問題となるのはセシウム137とストロンチウム90)がある。森林土壌の場合、現在はそれほど放射能核種は蓄積していないと考えられる。森林の場合、土壌に直接蓄積されず、樹木・葉に沈着・葉面吸収される割合は90%以上と考えられる。しかし、今後、梅雨、台風、落葉による森林土壌A0層(Aゼロ層・土壌の上の植物遺体や腐植が蓄積した層)が放射能核種の蓄積層となる可能性が高い。

 このA0層に蓄積した放射能核種は自然に減少するのを待つしかありません。毎年、新しい汚染されていない落葉樹枝が堆積して、土壌に変わってゆきます。

 しかし、そのうち10~20%前後は降水により、移動して行くと予想されます。飲料水、農業用水の集水域となっている地帯は河川水、伏流水、地下水のモニタリングが長期間にわたり必要です。

 2)牧草地帯

 水田・畑土壌と比べると土壌への蓄積量は半分以下です。イネ科と比べてマメ科牧草が植物体への蓄積が多くなります。葉面吸収も含めて、1回の栽培で持ち出しはラジノクローバーで8%前後、イタリアンライグラスで4%前後です。1年に数回収穫するとすれば、1~2年で影響はなくなると考えられます。しかし、家畜(牛乳や肉)も含めてモニタリングは必要です。

 3)畑・水田

 今回は土壌1Kg当たり5000Bq以上で作付ができない地域について述べます。が、基本的に他の畑や水田も同じです。

 当たり前のことですが、横山論文でも裸地土壌が最も蓄積します。

 裸地状態で、これか夏から秋にかけて心配なことがあります。

 ①黒ボク土(火山灰土壌)は降水や風による土壌粒子が飛び散ることによる汚染の拡散です。

 ②雨による土砂流出に伴う、拡散と蓄積です。

 そのために、カバークロップ(土壌を覆い、成長の早い植物・できればマメ科で根が浅い植物)の直播(耕作しないで直接種をまく)により、今年の秋まで栽培する。秋以降、機械で植物とともに土壌表層を剥ぎ取り処分する。紙マルチなどマルチングでもよいと思いますが、その間、地下水や農業用水は利用しない。これら水は来年春以降利用できるようにモニタリングをおこない、ゼオライトなどで浄化対策を行う。

 

 菜の花などの植物による浄化はその吸収率から7~10年単位だと思います。

 

 読売新聞の私の記事は本文では上記のことを強調しているのですが、見出しで「植物」が躍ってしまいました。見出しまでチェックできませんでした。

 

 結果的に混乱させたとすればお詫びします。

 

  現在、耕作可能地域でも、横山論文で紹介しましたが、用水を通した他の農地への拡散、水の縦浸透を通した移動、低地排水不良水田への蓄積、灌水による移動、など、水を通した拡散・蓄積が心配されます。有機農業で用いられてきた水田水口にゼオライトや活性炭、ビオトープなど従来用いられてこなかった環境に安全な農業技術が役に立ちます。畑では混作栽培、カバークロッピング栽培、自然農法的な作物以外の草との共生栽培などがあります。自然農法的な栽培法も参考になります。これにより、土壌・作物と収穫物の質を高め、「ただの生き物」が増えて農薬も必要最低限で済むようになると思います。

 

 また、どうしても残存した放射能核種は水田も畑地も良質の有機物を投入することで作物への吸収を抑えられます。

 

 今後、これを契機に福島が日本で最も安全・安心で、家族経営を主体とした産地へと復活することを皆さんで応援しましょう。 

 

 あくまで、来年以降、できるだけ早く農業ができるように考えるべきです。

  

 

 


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