PAPP GÖRGY

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パップ・ギョーリキー

イレッサ

2005-01-15 06:05:09 | NEWS
あるブログに面白いお話があったので、勝手に引用させていただきます。
以前、仕事の関係である学会に出席したときに、厚生労働省の方が
「ある遺伝子が変異している患者のみを集めた臨床試験は承認しない」
という意味のコメントをしていました。
これは一見、オーダーメード医療という考えかたから逆行するコメントだと思います。なぜそのような発言をしたかは以下のように述べていました。
「医者は自分の判断で患者に効くと思う薬を投与する権利をもつ、ある特定の変異をもつ患者のみで承認された薬であっても、その変異を持たない患者に対して医者が用いることは容易に予想され、厚生労働省としては欠損を持たないようなヒトにどのような影響があるかわかっていない薬に関しては認可できない」
ということでした。

昨年末、イレッサの延命効果が確認されなかったという臨床試験の結果を受けて、副作用で肉親を亡くされた遺族の方々が厚労省にイレッサの販売中止を求めて立ち上がりました。
上に引用させていただいた厚労省の判断は、このような弱者の立場に立ったもの、あるいは最悪の事態を想定してのものであります。
得られるものに対してリスクがあまりに大きく、そのリスクが避けられるものであるならば避けなければならない、というものでしょう。
ただ、イレッサが販売中止となると、イレッサが効く遺伝的素因を持(あるいは持つかもしれないと期待している)人にしてみればがっかりする話ではあります。
イレッサは特定の人にはとてもよく効く薬でありますから、この板ばさみに対してどう結論を出すか、難しいところではあります。

リスクは避けなければならない、と書きました。
確かにそれは当然です。
しかし、必ずしも大元での制限を厳しくしてリスクを避けなければならないわけでもありません。
医者がしっかりしていればいい話です。
イレッサを使おうとする際の患者さんのDNA解析を義務化し、効くとわかった患者さんに対してのみイレッサを使ってよい、それ以外の者に対してはイレッサを使ってはならない、こうしてしまえばいいのではないでしょうか。
イレッサの副作用で亡くなる患者さんが増加している、これはイレッサを使っていることに問題があるのではなく、使い方に問題があり、使い方を改善すればそのような悲劇は減らすことができるはずです。
特定の遺伝的素因を持つものに対してしか効果を示さない薬を締め出していくのではなく、少しでもその薬に救いを求めている人がいるのであれば、まだ作用に不明な点があるとは言えわかっている範囲内で遺伝子解析のシステム整備に力を入れるべきだと思います。
それとも、イレッサが効かないということがわかった患者さんにしてみれば救いの道が一つ閉ざされたことになり、患者さんにそんな絶望を抱かせるわけにはいかない、ということなのでしょうか。

最後に、再び先のブログから。
スーパーレスポンダーという言葉をご存知でしょうか。普通の人には反応がなくても、ある特質を持つ人には劇的に効く状況を指すのですが、イレッサには「肺がんの上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子配列変異がある」人に対しては劇的な効果が見られることがわかっていて、そのスーパーレスポンダーの多くは日本人はじめ東洋人に多いのだそうです。「多い」といっても程度がありますよね。数字で言いましょう。遺伝子配列変異は日本人の約4割(特異というより半数近くなので形質に近いかも)、英国人では1割以下。この割合の人に上皮成長因子受容体の変異が見られ、この類に属する人はイレッサのかなりの効果が期待できているわけです。

初めのほうに「イレッサの延命効果が確認されなかった」と書きました。
この臨床試験の「無作為抽出」による被検者の中に、日本人は入っていません。

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2 コメント

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まったくです (naioi管理人)
2005-01-15 20:50:04
トラックバック有難うございます。仰せの通りしっかりしたガイドラインがあり、かつお医者さんたちに常識が備わっていれば救われる人が沢山いらっしゃるのは事実で、厚生労働省の対応には怒りを覚えます。こうした議論が活発になる中で医療を受ける側も最低限の知識を深まるのではないかと、事態の是正をかすかに期待しています。イレッサに限らず今後もこのテーマは見守っていきますので、またどうぞ宜しくお願い致します。naipi
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Unknown ()
2005-01-16 22:03:02
勝手に引用させていただきました。

コメントありがとうございます。



「効く薬をなぜ!?」

と思うと厚労省の対応には怒りを覚えます。

が、同時に、医者を全面的に信用できない現状では、最悪の事態を想定して安全を守ってくれるというのもありがたいのかもしれません。

薬害エイズとかハンセン病とか、意地っ張りなところは改善していただきたいですが。
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