市ヶ谷日記

喜寿を超えた老人です。日々感じたことを、過去のことも含めて、書き記しておこうと思います。

人命が危機にさらされても「表現の自由」は守る。オバマ大統領の決意はさすが。

2014-12-25 | 独吟
 Sony Pictures Entertainmentへのサイバー攻撃について、米国FBIは12月19日(米国時間)、北朝鮮が関与していると断定した。これに即応してオバマ大統領は「北朝鮮に対しそれ相応の対応を取る」との決意を表明した。
 そして、更に注目すべき点は、オバマ大統領が、北朝鮮を非難するとともに、サイバー攻撃の原因となった映画“The Interviews”を制作したSony Picturesに対して、民間会社である彼等の受けた脅威に同情しつつも、映画公開をキャンセルしたのは“mistake”である、と苦言を呈したことである。
 こうした米国の反応は、そこまでやるのかというのが一般的日本人の受けとめ方であろう。しかし、民主主義を国是とし、「表現の自由」を尊重するアメリカ合衆国においては、どこかの国の独裁者が“censorship”を課すようなことがあってはならない、というのである。たとえ風刺映画であっても脅しにより公開を差し止めることができれば、独裁者は気に入らないドキュメンタリーやニュースに対しても同じような行為をすることが予想されるからである。
 翻って我が国の政府およびマスメディアの対応はどうか。政府は「サイバー攻撃は国家の安全保障に関わる重大な問題」と捉え、米国とは異なる観点から北朝鮮を批判している。また、言論の自由を錦の御旗にいつもは政府への非難に熱心な有力マスメディアも、この問題に対する反応は弱いと思われる。Sony Picturesがアメリカ法人とはいえ日系企業であり、政府もマスメディアもこの問題にもっと敏感に対処すべき立場にあると考える。
 「表現の自由」に関連して更に言えば、お隣の自称民主主義国家である大韓民国において、我が国の報道機関が「表現の自由」にまつわる重大な侵害事件に巻き込まれている。朴槿恵大統領の動静を報じた産経新聞の前ソウル支局長が韓国官憲により起訴されている事件である。
 我が国マスメディアの態度は不可解、と言わざるを得ない。この事件が「表現の自由」の核心に触れる問題をはらんでいるにもかかわらず、一応は取り上げるが、新聞紙面を覆う大問題として報道することはない。
 産経新聞前支店長に関わる問題は、マスメディアの「表現の自由」に対する本気度を測る試金石である。我が国のマスメディアがタブーに囚われない真実の報道をすることを期待したい。


STAP細胞事件。日本人の名誉はどうなるのか。

2014-12-20 | 独吟

日本国民を一喜一憂させたSTAP細胞騒動が決着した。
理化学研究所は12月19日、検証実験の結果、STAP現象を確認できず、検証実験を打ち切ると発表した。この検証作業には小保方晴子氏も加わっており、これが不成功に終わったことで、STAP細胞の存在はともかく、彼女の研究が嘘で固められた虚構であったことが明らかになった。発表の当初からこの研究には浮ついたところがあり、それを見抜けなかったことが慙愧に堪えない。
小保方晴子氏からは理化学研究所に退職願が出され、12月21日付けで退職するという。退職に際して、彼女は「予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれますが、与えられた環境の中では魂の限界まで取り組み、今はただ疲れ切り、このような結果に留まってしまったことに大変困惑しております。」と述べている。
このコメントを読むと、小保方さんという女性がどういう性格の持ち主なのか、戸惑いを感じる。事件の真相は彼女が一番よく知っていると思われるが、かつての記者会見において「STAP細胞はあります」、「これまで200回以上つくりました」と発言し、今日まで頑張り通してきた彼女の神経は通常の日本人を超越しており、異常であると言わざるを得ない。
そして、理化学研究所の対応は更に不可解である。理研の代表である野依良治理事長のコメントがふるっている。
「STAP論文が公表されてからこの10カ月間余り、小保方晴子氏にはさまざまな心労が重なってきたことと思います。このたび退職願いが提出されましたが、これ以上心の負担が増すことを懸念し、本人の意志を尊重することとしました。前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待します。」
これでは、小保方晴子氏が理不尽な圧力を受け、自ら退職願を提出せざるを得なかったと言わんばかりである。彼女の退職は、依願退職ではなく、懲戒免職が妥当である。
今回のSTAP細胞事件は、単に理化学研究所の問題ではない。やや大げさな表現であるが、日本国および日本人の名誉に関する事件である。ほとんどの日本人が今回の事件を「恥ずかしい」と考えているはずであり、世界中にばらまかれたこの事件の経過を外国人に何と説明してよいのか、考えただけでも身の毛がよだつ。
STAP細胞事件によって地に落ちた日本国および日本人の名誉を回復するには、相当の期間と地道な努力を要する。理化学研究所は全組織を挙げて国民に謝罪すべきであり、理事長のコメントから窺える理研の今回の事件に対する認識は我々日本人の気持ちを逆撫でするものである。 
彼女の上司であった笹井芳樹氏は、今回の事件に遭い、死をもって責任を果たした。痛ましいことであり、死者に対しては、これ以上何も言う必要がない。しかし、残っている理事長以下の理研幹部は、どのような形で責任を全うするのか、今後の動向を注視したい。

自民党の選挙戦略が光る。アベノミクスを争点にしたことが野党の敗因

2014-12-03 | 独吟
 12月2日の総選挙公示日における選挙演説を聴き比べると、安倍首相の勢いが他の野党党首・代表を圧倒している。明るい未来を予告し、希望を抱かせる安倍首相の主張に、国民は何となく信頼を寄せるであろう。
 民主党は「中間層の復活」を掲げて戦うようであるが、陳腐な言葉が踊っているだけで新しさが感じられない。自民党から政権を奪取した時のような魅力は望むべくもない。
 維新の党の訴えでは「身を切る改革」だけが目立ち、荒っぽさが付きまとう。党の顔である橋下市長が大阪にくすぶっている限り、ブームを再現することは難しい。
 次世代の党、生活の党、社民党は、失礼な言い方であるが、消滅を待つだけである。
 共産党はいつもながら気を吐いている。消費税撤廃、原発反対、軍国主義反対を叫んでおり、この党だけが自民党に真正面から戦を挑んでいる。
 そして、野党共通の失敗はアベノミクスを選挙の争点にしてしまったことである。本来であれば、消費税増税や財政再建、防衛問題、規制撤廃などが争点でなければならないのに、アベノミクスを主要な争点にしてしまった。
 アベノミクス自体はこれまでの自民党の景気対策とほとんど同であり、目新しいところがない。しかし、党首の名前を冠したことにより、何か新しく立派な内容を持つ政策のような印象を醸し出している。この得体のしれない政策が争点となったことにより、各党は安倍首相の掌の上で戦っているようなものであり、首相が掌を反せば、党首や代表の落選を含め野党が惨敗する可能性すら予見されるのである。
 その上、前にも指摘したように、12月8日公表のGDP「2次速報」において7-9月期のGDP成長率がマイナスからプラスに変換することが予想される。このGDPマジックにより、アベノミクスの有効性が立証され、民主党をはじめ各野党の「アベノミクスの失敗」という主張は足場を失い、自民党完勝、野党完敗というストーリーが展開されることになる。