市ヶ谷日記

喜寿を超えた老人です。日々感じたことを、過去のことも含めて、書き記しておこうと思います。

「セクハラ」とは何か。財務事務次官は役人としての矜持を全うした。

2018-05-14 | 独吟

 セクハラ事件の責任を負って、財務省の事務次官が辞任した。

 事の成行きをメディアの報道から顧みると、何とも奇妙で不思議な事件と言わざるを得ない。深夜、アルコールの入った席でテレ朝の記者と事務次官が会合し、そこにおいて次官が「抱きしめたい」とか、「おっぱいを触りたい」とか、発言したことが問題であるらしい。

 それでは事務次官が、(貴女は魅力ないので)「抱きしめたくない」とか、「おっぱいを触りたくない」と言えばよいのか。普通の女性であれば、このように言われる方が侮蔑された気分になり、セクシャル・ハラッスメントになるのではないか。

 仮にも事務次官の発言がセクハラであるとすれば、美しく化粧し、着飾った女性に対し、どう褒めればよいのか。「抱きしめたくも、抱きしめたくもありません」とか、「触りたくも、触りたくもありません」とか、言うのが正解なのか。まるで禅問答である。

 換言すれば、男と女が会った場合、性的なことは一切話題にしてはならない、ということである。これでは、文学も、詩歌も、そして広く芸術全般が面白味のないものになってしまう。

 テレビをはじめマスメディアは、事務次官の言動のみを非難しているが、筆者は、テレ朝の記者が自社でなく他のメディアにこの情報を流したことに違和感を覚える。そして、テレ朝記者の行動から判断して、財務事務次官はテレ朝記者が欲しがっている情報を漏らさなかったと推測できる。事務次官は、ハニーの美味に弱いのかもしれないが、守秘義務を守ったわけであり、公務員としての矜持を全うしたことになる。このことをどのメディアも触れていないのは、これまた不思議と言うほかない。

 法律を少しでもかじった人は知っているであろうが、罪刑法定主義というのがある。何をしたら有罪、何をしたら無罪、という基準が明確でなければならないという基本原則である。その時々の世論の勢いで有罪になったり、無罪になったりすることは、断じてあってはならない。今回のセクハラ事件のように、マスメディアが一方的な意見のみを取り上げ、国会の審議においては問答無用の議論が横行し、世の中全体がヒステリックな状態になるのは、セクハラの蔓延以上に恐ろしいことである。我が国は法治国家であり、世論の高まりにより物事が決する国でないことを、近隣の国々にも示すべきである。


米朝首脳会談後、トランプ政権は失速し、世界秩序の不安定化が進む。

2018-05-12 | 独吟

 待望の米朝首脳会談が、6月12日、シンガポールで開催される見通しとなった。

 米国は北朝鮮からの核攻撃を回避し、北朝鮮は金王朝の存続保証を求めて、両首脳が話し合う。世界はこうした動きを一応歓迎するムードに浸っている。米朝首脳会談の成功により、世界経済の成長が続き、各国の株式市場も高値をうかがう勢いである。

 ほとんどの人が喜んでいる時、敢えて水を差すつもりはないが、筆者は、首脳会談後の状況はそれほど安泰ではないと考える。

 まず、米国ではトランプ支持の熱気が一気に冷めてしまうと予想される。軍事および経済でナンバーワンの米国が世界一弱小な北朝鮮を捩じ伏せたところで、「トランプ、よくやった」と言うアメリカ人は少数であろう。そして、自由平等平和に最も逆行する金王朝の存続を許したことで、トランプ大統領批判が強まると考えられる。金正恩は、日本人をはじめ各国の民間人を誘拐し、贋金を造り、麻薬を製造し、最近ではインターネットにおいてまで悪さをしている。そのうえ彼は、腹違いの実兄を殺害し、叔父を処刑した。こんな極悪非道な人物の存在に手を貸す大統領は、米国大統領の風上にも置けない、と考えるのではないか。こうした国民世論の変化は、11月の中間選挙において、トランプ陣営が描いている構図と全く異なる状況を生み出す可能性がある。

 一方、金正恩の運命も穏やかでなくなる。北朝鮮とその他の地域を遮断する壁が低くなれば、金王恩の偶像は直ちに瓦解するであろう。特に、韓国からの情報流入の影響は強烈である。北朝鮮においては、彼を憎悪する人は、上から下まで充満しているはずであり、その独裁体制の維持はますます難しくなる。彼および彼の妹のテレビに映し出される能天気な顔を見ながら、筆者はこの二人に降り懸る過酷な運命に思いを馳せてしまう。

 いずれにせよ、米朝首脳会談の後、想定外のことが起こると考えられる。米国が国内問題で混乱すれば、世界の秩序を安寧に維持する勢力がなくなる。中国は、この機に乗じて、世界制覇に向かうかもしれない。ヨーロッパでは、イギリスのEU離脱の道筋がまだ見えていない。しばらく鳴りをひそめていた世界の火薬庫、中東でも新たな動きが出始めた。

 こうした時期、日本は、長期政権の利を生かして、新たな世界秩序構築のための役割を果たすべきである。日本の世論は、テレビをはじめ低劣なマスメディアに扇動されて、安倍おろしに躍起となっている。国会でも、我が国の安全や世界秩序の構築といった大きな問題を看過し、つまらぬ些細な問題に拘泥している。安倍総理には、長期政権を維持し、世界平和の実現に貢献することを期待している。