私は「身土不二」の原理を何となく信奉している。人間は生まれ育った土地で実った食物を食べることで健康を保つことができる、という考え方である。
埼玉県上里町(旧賀美村)で生まれ、本庄で育ち、今は東京で暮らしている筆者は、食事の材料を購入するため、月に2~3回は道の駅「はなぞの」にあるJA農産物直売所まで往復している。都内から関越自動車道「花園」インターチェンジまでの高速代3,360円、それにガソリン代約2,500円をかけての買出しであるが、健康維持のための必要経費と考えている。
しかし、残念なことに、近頃はその農産物直売所に肝心の農産物が売られていないのである。どこのスーパーでも売っているような食品類は山ほど積まれているが、私が求める肝心の地場で作られた野菜類は、品切れで商品棚は空っぽのままである(写真参照)。
お客は大勢来ているのに売り物がない。いくらボンクラな農協経営者であっても、これだけ多くのお客が来るのであるから商品の集荷に努めているであろう。それでも売る農産物が集まらないのはこの直売所に出荷している農民に儲ける意欲がないからである。
我が国の農家は、おんぶにだっこの手厚い保護政策にどっぷり浸かり、生活が安定していて、野菜を出荷すれば儲かることは分かっていながら、それをしないのである。ちなみに、企業家精神が一般農家より旺盛と思われる花木類の生産農家の商品棚はいろいろな種類の花木で埋めつくされている(写真参照)。
恐らく、この農産物直売所を設置するにあたっては、我々の税金を財源とする多額の補助金が投入されたはずである。企業努力をしない農家を保護し、温存するすることにどれほどのメリットがあるのか、納税者の一人として疑問を覚える。そして、驚くべきことに、直売所で入手できなかった野菜は、直ぐ近くのスーパーではちゃんと売られており、しかも価格が安いのである。
農家とそれに寄生している農協は、日本経済のゾンビである。隣の経済大国中国では、経済発展の妨げになる国営企業を「ゾンビ」と称し、習近平国家主席がその退治に躍起となっている。日本の安倍晋三内閣総理大臣も、習近平主席に負けないよう、ゾンビの退治に辣腕をふるってほしい。
日本農業は将来性のある産業である。TPPの早期実現、農地規制の撤廃などにより、やる気のない農家を経済活動の舞台から退場させ、企業家精神旺盛な人たち及び企業の農業への参入を後押しする必要がある。こうした思い切った施策なしに日本農業の明日はないと認識すべきであろう。