大方の予想に反し、トランプが米大統領選挙を制した。筆者は、投票日前のブログで述べたように、トランプ候補の勝利を確信していた。
何故なら、トランプの主張には何か変化を起こさせるものを感じ、クリントンにはそれがなかったからである。クリントンはCHANGEを掲げて登場したオバマ大統領の成功を忘れてしまったようである。
確かにトランプ候補の発言は過激であった。メキシコとの国境に壁を造るとか、イスラム教徒を入国させないとか、中国製品に高率関税をかけるとか、実際には実行できないようなことを叫んでいた。しかし、自分こそ真のアメリカ人と自負しているアメリカ人には、心地よく響いたのである。
アメリカは世界のリーダーとして立派に振舞うことに疲れてしまったのではないか、と思う。シリアやイラク、太平洋の南や東の片隅で何が起ころうとどうでもよい、自分たちのことだけを考える、という一種のモンロー主義に舵を切ったのではないか。
我が国も、こうしたアメリカの方向転換に呼応して、対外政策の在り方を再構築する必要がある。
まず、安全保障については、国際情勢が大きく変化した今、「日本が攻撃されれば、アメリカは日本を防衛する義務がある。しかし、アメリカが攻撃されても、日本は支援しなくてもよい」という関係は、どう見てもおかしい。そして、駐留経費の負担を増やすことによって問題を解決しても、これはアメリカ軍の傭兵化であり、日米関係を更にちぐはぐなものにする。
もう一つ、近頃とみに存在感を増してきた中国や韓国、インドからの移住者への対応も、より慎重にならなくてはならない。我が国の充実した社会福祉(生活保護、公営住宅、医療保険)を求めて、オーバーに言えば中印等合わせて30億人を超える人たちが我が国に殺到しつつある。経済学的には、日本の社会福祉レベルが低下し、中印レベルと同じ水準になるまで、この流れは続く。
いずれにしても、交通・通信が発達したことで世界のグローバル化が進み、我々が「カエルの楽園」に安住することは益々難しくなっている。アメリカでトランプ大統領が誕生し、イギリスでBREXIT派が勝利し、フランスやドイツで極右政党が台頭しているのは、みな共通する背景を有している。悲しいことであるが、日本人もこのことに目を覚まし、生き残りの途を探さなければならない。