市ヶ谷日記

喜寿を超えた老人です。日々感じたことを、過去のことも含めて、書き記しておこうと思います。

 富久クロスのペントテラスは将来に禍根を残す

2015-09-25 | 独吟
 四半世紀の歳月を経て富久クロスがようやく誕生した。バブル崩壊の事例として何回もマスコミに取り上げられ、全国的に知れ渡るようになった東京都新宿区富久町の再開発事業である。
 この事業の中核は55階建てのコンフォートタワーの建設である。高さ191メートル、JR環状線内では最高を誇ることになる。富久クロスが接する靖国通りには高層ビルが林立しているが、その中でもひときわ目立つ存在である。
 富久クロスは、このコンフォートタワー、その傍らにある低層賃貸マンション、商業施設の入居が予定されている建物、そしてこの商業施設の上に造られたペントテラスと称する一群の戸建て住宅から構成されている。
 土地の坪単価が数百万円もし、高層住宅が立ち並ぶ地区に、何故、戸建て住宅が建てられたのか。これらの戸建て住宅が地権者たちの獲得した補償物件であると言えば、理解が早いであろうが、筆者は、今年4月10日のブログでも指摘したように、このペントテラスが富久クロスの将来に禍根を残すのではないか心配しているのである。
 富久地区の再開発が持ち上がった時、地権者たちは、住民同士が互いに挨拶するような街、季節ごとにお祭りが行われるような街、猫がうろちょろするような街を造り、そこに自分たちが住めるようにしてほしい、という身勝手とも思える要望を事業者に突きつけた。
 地権者たちができるだけ多くの補償を求めること自体は、当然であり、非難することはできない。問題は、こうした地権者たちの活動を「住民主導の街づくり」と称賛し、住民たちを扇動してきた関係者である。一番悪いのは、NHKをはじめとする大手マスメディアであり、住民たちを学術的立場から支援してきた研究者と称する人たちである。
 完成したペントテラスは、どう見ても地権者たちの要望を満たしているとは思えない。地権者たちが望む木造の戸建て住宅ではあるが、住民が相互に交流し、猫がうろちょろするような街ではない。その証拠にここに住み続ける予定の地権者はほとんどいない、というのが近隣の人たちの噂である。
 むしろここに誰が住むのであろうかという心配の方が先になる。戸建て住宅のひとつひとつは見栄えはよいが、建物が小さく、富裕層が住む家ではない。一応、庭も付いているが、狭いうえに外から丸見えである。建物が建っている地面の下は商業施設の屋根であり、大きな樹木は育たない。そして何よりも、現在の価額は目の玉が飛び出るほどの高さであるが、人工土地であるため将来の値上がりが期待できる投資対象にもならない。
 富久クロスのペントテラスは、身勝手で幼稚な地権者たちの要望を無批判に尊重しすぎたために出来上がった代物であり、近い将来においてスラム化が進む危惧さえ抱かせる街である。こうした街づくりに加担したマスメディアや研究者の責任は重大であると言わざるを得ない。
 皆さんも、富久クロスを見物に来ては如何ですか。