市ヶ谷日記

喜寿を超えた老人です。日々感じたことを、過去のことも含めて、書き記しておこうと思います。

佐藤健太郎著「世界史を変えた薬」は感動を呼び起こす書

2016-05-26 | 独吟

 私は眼が悪いため、読書する習慣を持たない。近視であるとか、遠視であるとか、というのではない。かつて網膜疾患を患い片目を失明したため、本を買っても価値がなければ読まないことにしているからである。

 そうしたなか、先ごろ書店で見つけた「世界史を変えた薬」(佐藤健太郎著。講談社)は、稀に見る名著である。しかも、内容がきわめて面白く平易で、読み応えがある。

 世界の歴史を動かしたのは、優れた政治家、有能な軍人、高邁な思想家などではなく、我々を苦しめた病気であり、その苦しみから我々を救ってくれた薬である、とこの著者はいうのである。ビタミンC、キニーネ、モルヒネ、サルバルサン、サルファ剤、ペニシリン、・・・・等々の発見や開発を歴史上の様々な事実に絡めながら、物語が進められる。私は、眼が悪くなるのを恐れながらも、この本を一晩で読み切ってしまった。若者が読めば、薬学専攻に進路をかえる者が続出するかもしれない。

 断っておくが、私は、この本の出版元である講談社とは無縁の人間である。また、著者がどういう人であるかも知らない。ただ、読み終わった後の感動を独り占めするのが惜しく、このブログをしたためた次第である。