一人

2007年04月16日 00時10分24秒 | 日記
今晩は一人だ。
今は珍しく家には誰もいない。
この誰もいない一人きりの数時間を僕は僕という人格を構築する上で最も重要な作業に費やす。
ゆっくりと誰にも邪魔をされずに。耳栓すらする必要も無い。
今さっき読み終えたばかりの本をまた頭から読み返す。すると驚く程読みこぼした言葉の多さに我ながら愕然とする。
結局お粗末な僕の脳は高尚かつ尊大なる文章ですらそれを蓄積、保存するという行程を欠いているんだろう。
とうとう僕は自分に落胆し本を読む事を中断する。
僕がその小さな本と三分の二程飲み終えた缶ビールを持って自分の部屋の戸を開くと、乾いた音をたてて正面の壁に貼ってあるポスター貼りのカレンダーが剥がれるのが見えた。右肩が剥がれ、その姿は迷信深いとはほど遠い僕にも不吉なイメージを与えた。すぐに僕は右手でポスターに手を滑らせてめくれたカレンダーを元の通りに貼り直す。
そんな単純な行為ですら僕は少なからず自分の生活にリアリティを感じられる。そんな素朴な心の動きに僕は動揺しつつ、これはビールのせいだろうと自分に提案する。
僕はこの全く不毛なテキストをキーボードで入力しつつチラチラと時計に目をやる。
もう寝る時間だ。
まだ誰も帰ってはこない。
もう一度本を読もうと思う。

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