Shpfiveのgooブログ

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Yahoo!知恵袋で見かけたトンデモ議論(14) その2 軽減税率の導入とインボイス導入はイコールではない

2018-09-10 20:57:51 | 政治・社会問題
さて、こちらの質問のBAが決定しました。


>石弘光氏も主張しているが
「インボイス方式をとらないというのは、当時の世界では日本の消費税くらいのものであった」

そりゃ~そうですよ。
世界各国は軽減税率を採用してしているが、日本は採用していないからです。
下の一覧表を見れば一目瞭然でしょう。
多くの国が軽減税率を採用しているからインボイスも導入しているのです。
何回言えばわかるのですかね(笑)

→当の質問者も補足で

石弘光氏の書籍から
下記の様な事も引用されています。

また政府税調による「平成16年度の税制改正に関する答申」の中でも

「将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる。しかしながら、消費税の税率構造のあり方については、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保、事業者の事務負担、税執行コストといった観点からは極力単一税率が望ましい。……また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書の保存を求める『インボイス方式』の採用が検討課題となる。これらについては、今後の消費税率の水準に関する議論も踏まえ、高い税率水準の下で複数税率を採用している欧州諸国の例も参考にしつつ、引き続き検討を深めていくべきである」(政府税調[二00年])


↑は ejz氏の発言である複数税率が軽減税率云々・・そのままかと思います。
先生は理解できてませんね。


→と述べていますが

この人たちは日本語が読めないのでしょうか(笑)?


なお、この人はこちらの記事での誤字訂正前の私の文を引用しているので、一応ここで訂正しておきます。

(政府税調[二00年])→(政府税調[二〇〇四年])

せっかくなので、石氏の引用ではなく、オリジナルの方を確認しながら、この人たちの主張のおかしさを指摘することにしましょう。

財務省ホームページにある税制調査会の「諮問・答申・報告書等」より引用します。
http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/161125b2-2.html

2.消費税
 高齢化の進展に伴う社会保障給付の増加が見込まれる中、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化に向け、歳出・歳入両面から財政構造改革を進めていかねばならない。歳出改革路線の堅持・強化とあわせ、消費税についても国民的な議論を行っていくべきである。
 消費税は、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合い、安定的な歳入構造を構築する上で重要な税である。今後の税体系構築にあたっては、国民の理解を得る努力を払いつつ、消費税の税率を引き上げていくことが必要である。
 将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる。しかしながら、消費税の税率構造のあり方については、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保、事業者の事務負担、税務執行コストといった観点からは極力単一税率が望ましい。低所得者層に対する配慮については、税制全体や歳出面を含めた財政全体の中で、近年の民間非営利活動の広がりをも踏まえつつ、十分な吟味が行われるべきであろう。また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書等の保存を求める「インボイス方式」の採用が検討課題となる。これらについては、今後の消費税率の水準に関する議論も踏まえ、高い税率水準の下で複数税率を採用している欧州諸国の実態も参考にしつつ、引き続き検討を深めていくべきである。
 消費税は、わが国財政全体にとって重要な役割を果たすべき税であり、基本的に一般財源とすべきである。しかしながら、今後、税率を引き上げる際には、国民の理解を得るため、社会保障の給付水準との関係を明確に説明することが必要であろう。


→まず確かに

将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる。


とされてはいます。

が、その続きは

しかしながら、消費税の税率構造のあり方については、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保、事業者の事務負担、税務執行コストといった観点からは極力単一税率が望ましい。


であることを見落としてはいけません。

少なくとも2004年当時の税務調査会の見解、そして財務省の見解は「極力単一税率が望ましい」というものであったわけです。

この事は、皮肉なことに当のejz********の発言

https://blog.goo.ne.jp/shpfive/e/efb36d69fa353c34e66abda0287bb3ca

これも大ウソです。
自民党も大蔵省(現、財務省)も軽減税率は一貫して反対していました。


とも一致します(笑)。

まあ、実際には中曽根内閣当時の売り上げ税法案の時に軽減税率とインボイスの導入は盛り込まれていましたので

自民党も大蔵省(現、財務省)も軽減税率は一貫して反対していました。

→というのは、どっちに転んでも「嘘」なんですけどね(笑)。

さて、であるにもかかわらず2004年度税調においては

財政全体の中で、近年の民間非営利活動の広がりをも踏まえつつ、十分な吟味が行われるべきであろう。また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書等の保存を求める「インボイス方式」の採用が検討課題となる。

とされています。

つまり「極力複数税率(軽減税率)は採用したくないが、将来的なインボイス採用は検討している」というのが、当時の税務調査会の見解たったわけです。

さて、私は何かおかしいことを言っているでしょうか?

なお石弘光氏が軽減税率の採用を希望していたのは、おそらく確かです。

が、石氏の個人的見解はともかく、税務調査会の見解としては

軽減税率の導入とは別に、インボイス導入は必要性がある

と判断していたということになるわけです。

なお、現在では多くの経済学者が軽減税率の非効率性と格差助長を問題視しているということは、あらためて指摘しておきます。
http://www.nira.or.jp/outgoing/vision/entry/n161011_829.html


政府は消費増税時期の再度の先送りを表明。2019年10月の引き上げの際、同時に軽減税率制度を導入するとしている。軽減税率導入の目的とされるのが、「逆進性」の緩和だ。消費税には所得や資産に関係なくすべての人に同じ税率がかかるため、所得の低い人ほど、税負担が重くなる逆進性があるとされる。しかし、すでに軽減税率を導入している欧州諸国の専門家は、他国には導入しないよう助言してきた。軽減税率は本当に逆進性の緩和に有効なのか。わが国の実情に合う制度なのか。検討する。

→が、インボイス導入についての、このような議論は私は知りません。

経済学者の方々はこのような声明なら発表していますけど
http://blog.canpan.info/zkamei/archive/137


軽減税率制度の導入は国民生活や経済等に直結する政策決定であり、かりに、社会的合意を経て制度導入をする場合にも、欧州型インボイスを採用し、いわゆる益税や不正の防止徹底等、消費税をはじめとする税制への信頼を確保していくことが不可欠である。こうした十分な準備を整えることなく、現状の内容や課税方式によって導入されることがあっては、将来に禍根を遺す税制の改悪になりかねないと我々は大いに懸念している。


追記

早速悪質投稿者が揚げ足とりのための質問を知恵袋に投稿したようです。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12195962967


これは阿Q自身の主張の担保にひっぱり出して来た
石弘光氏が委員を務める税制調査会の
2004年報告書を先生独自の解釈を駆使してコネクリ回した挙句
そのように結論付けていますが
残念な事に前年2003年の報告書を読むと
「将来複数税率が採用されるとインボイス方式を採用する必要がある」とキッパリ書いています。
また「請求書等保存方式は、単一税率の下では適切な仕入税額控除に特段の支障がない」と
単一税率ではインボイスは不要と書いています。





===税制調査会 少子・高齢社会における税制のあり方 2003年6月==


P8より抜粋請求書等保存方式は、単一税率の下では適切な仕入税額控除に特段の支障がない

② 仕入税額控除
現行消費税制度において仕入税額控除を行うためには、課税仕入れ等の事実を納税者自身が記載した帳簿の保存に加え、取引の相手方が発行した請求書等の取引の事実を証する書類の保存が必要とされている(「請求書等保存方式」)。このような請求書等保存方式は、単一税率の下では適切な仕入税額控除に特段の支障がないが、将来、複数税率が採用される場合には、
適正かつ円滑な施行に資する観点から、免税事業者からの仕入税額控除を排除し、税額を明記した請求書等の保存を求める「インボイス方式」を採用する必要がある。

===抜粋終わり=




まあ、この「阿Q」という呼び方に、この悪質投稿者の人間性がよくあらわれていると思いますし、こんな質問が投稿できる知恵袋もQ&Aサイトとは名ばかりの落書きサイトと評して差しあげますけど

ただ、「このような請求書等保存方式は、単一税率の下では適切な仕入税額控除に特段の支障がない」という記述自体は(それが本音かどうかは別として)確かに無視するわけにもいかないでしょう。

私は単に建前と本音の違いだと思いますけど。

現実問題として「請求書等保存方式」は単数税率でも、既に様々な問題が起きています。

例えば「必要経費の誤魔化し」などは普通に行われていますし、逆に斉藤貴男氏の指摘する「損税」の問題などもありますね。

何しろ国税の滞納額全体のうち、60%近くが消費税ですから。

制度の欠陥を抜きにして、この問題を考えること自体野暮でしょう。


また、石弘光氏自身は(その当時、単数税率だったにもかかわらず)消費税制度にインボイスを導入できなかったことは欠陥の一つだと考えていたことはこちらでもふれました。


この反面、消費税はいくつもの重大な欠陥を持っている。たとえば、次の四点が特に重要である。

1 インボイスを使用しない帳簿方式

2 あまりにも適用範囲の広すぎる簡易課税制度

3 非常に高い非課税水準つまり免税点

4 限界控除制度

このような諸措置はすべて、法定納税義務者になる業者を懐柔するために設けられた特例であり、消費税の性格を著しく歪めてしまったといわざるを得ない。この結果、次のような二つの問題が生じてくる。

a 誰が最終的に消費税を負担するのかが非常に不明確である。

b 価格付けが混乱する

第一に、インボイス方式をとらないというのは、当時の世界では日本の消費税くらいのものであった。諸外国の付加価値税において、まずこうしたケースは存在しない。これまで発展してきた付加価値税の制度の中でインボイスを導入すればすべてが完全だというわけではないが、連鎖的に発生する売上、仕入をできるだけ把握するために必要なものといえる。課税当局に提出義務はなくても、インボイスの保存は税務調査に有用だし、何よりも課税業者自身の仕入の算定を容易にするであろう。



私は石氏のこの見解に基づいて発言しました。

複数税率にしなければインボイスは不要、などとは石弘光氏は発言しているのでしょうか?

諸外国の付加価値税において、まずこうしたケースは存在しない。これまで発展してきた付加価値税の制度の中でインボイスを導入すればすべてが完全だというわけではないが、連鎖的に発生する売上、仕入をできるだけ把握するために必要なものといえる。課税当局に提出義務はなくても、インボイスの保存は税務調査に有用だし、何よりも課税業者自身の仕入の算定を容易にするであろう。

これが石氏の実際の発言です。

まあ、何かしら揚げ足をとると、相手の全体を否定できると考えている悪質投稿者には言っても無駄でしょうけどね。

追記2

ところで、この悪質投稿者さんはデンマークでは付加価値税について、基本的には軽減税率を採用していないということをご存じないのでしょうか?

では、そのデンマークは付加価値税にインボイスを採用していないのでしょうか?