Shpfiveのgooブログ

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別に「憲法改正」などしなくても、日本国政府の有権解釈さえ変更できれば、今のままでも「徴兵制度」は可能である - Yahoo!知恵袋で見かけたトンデモ議論

2020-04-02 22:02:15 | 政治・社会問題
さて、本ブログで知恵袋の代表的な悪質投稿者として取り上げさせてもらっている「悪質投稿者e」(別ID多数)が、今度はこともあろうに「言論の自由」などと名乗って(笑)

このような「質問」を知恵袋に投稿しています。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10222268165

現憲法下では徴兵制は可能ですか?

政府解釈で法的に可能になったとしても

実際問題として徴兵制実施ができますか?


知恵袋でうっかり回答して「違反連絡攻撃」などを受けてもバカバカしいので、本ブログにて私自身の答えを述べさせていただくことにします。

まず

現憲法下では徴兵制は可能ですか?


ということですけど、すでに本ブログでも何回も取り上げさせていただいた通り、現在の自衛隊そのものが、「日本国憲法」本来の考え方から言えば憲法違反と考えるのが妥当です。

少なくとも憲法学者の多数派はそう考えてきました。

-すくなくとも現在の自衛隊を-単なる警察と見ることは不可能であり、これを軍隊ないし、本来にいう「戦力」に該当する、と見るのが妥当だろうとおもわれる。

宮澤俊義『全訂日本国憲法』(日本評論社)P173

なお、この点に関連して、軍隊と警察力の違いが問題になるが、両者の相違点としては、①その目的が、軍隊は外国に対して国土を防衛することにあるのに対して、警察力は国内の治安の維持と確保にあること、②その実力内容が、それぞれの目的にふさわしいものであること、の二点を挙げることができる。つまり、軍隊とは、具体的には、組織体の名称は何であれ、その人員、編成方法、装備、訓練、予算等の諸点から判断して、外敵の攻撃に対して国土を防衛するという目的にふさわしい内容をもった実力部隊を指す。
この解釈を一貫させていけば、現在の自衛隊は、その人員・装備・編成等の実態に即して判断すると、九条二項の「戦力」に該当すると言わざるを得ないであろう。


芦部信喜『憲法』(岩波書店)P60~61

繰り返しますけど、憲法学者による多数派説は「自衛隊はどう考えても戦力」であるというものです。

念のためですけど、警察権の延長などではありません(笑)。

だから憲法学者の多数派説は徴兵制に対しては、第9条が「戦力の保持」を禁じていることを根拠にして「憲法違反」であるとしています。

逆にいうと「憲法違反」であるはずの自衛隊が、今現在、多くの国民から支持されており、違憲無効となってもおかしくないはずの(少なくとも第81条に基づく違憲審査の対象となるはずの)「自衛隊法」が有効とされているわけですから、「日本国憲法」の方こそが「無効化」しているという言い方も出来るでしょう。

だから「徴兵制度」にしても、本来的な「日本国憲法」の解釈からすれば「憲法違反」とされるはず、と私自身は考えています。

ここは念押ししておきます。

「日本国憲法」の「無効化」についても言いたいことはありますけど、そこは抑えて…

さて、日本国政府の有権解釈はというと、こうなっています。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/189/touh/t189187.htm


政府としては、衆議院議員稲葉誠一君提出徴兵制問題に関する質問に対する答弁書(昭和五十五年八月十五日内閣衆質九二第四号)一及び二について等で累次にわたってお答えしているとおり、一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解している。このような徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと解してきている。お尋ねの「新陳交代を前提としない一時的臨時的な戦時編成要員の徴集」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、自衛隊にこのような制度を導入することは許容されるものではないと考えられる。

つまり政府の有権解釈としては、ざっくりいうと「徴兵制度は意に反する苦役」であるから「憲法違反」であるとするものです。

真っ先の疑問

自衛隊員は「意に反する苦役」についているのでしょうか?


まあ、自衛隊員は「職業選択の自由」を行使して入隊したから例外であると考えたとしても

そもそも憲法学者である大石真氏によるなら、他国の例から見ても

国民に祖国防衛義務や兵役義務を課している憲法は多く、徴兵制自体を憲法十八条にいう「奴隷的拘束」と見るのは無理があろう

大石真『憲法講義Ⅱ』(有斐閣)P56

と見るのが自然であると考えられます。

もっとも

ただ、徴兵制度を法制化することが可能だとしても、軍事任務が「意に反する苦役」にならないように、「良心的兵役忌避者」(Conscientious objector)の制度を設け、代替役務についても定める必要があろう。

(同上)

といった制度設計は必要ですけど、あえて言うなら

「日本国憲法」第9条が「自衛権行使のための戦力まで違憲ではない」としているという仮定にたち、かつ「自衛隊」が憲法違反ではないという前提に立つのであれば「徴兵制度」が「憲法違反」という論理は成立しがたいように思います。


実際、国民が外敵に対して「抵抗権」を発揮する、そのための方策として考えれば、バラバラの国民が「民兵」として立ち上がるよりも「徴兵制度」による組織作りを行った方が合理的ではないでしょうか?

ただし

私は「徴兵制度」は、恐らく国民的コンセンサスを得ることが出来ないと思っていますし、コスト的にも合わないので実現はしないだろうと思っています。

その説明は別の機会に。