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国際大都市建設の中の移民と移民政策

2010-06-07 07:37:05 | Weblog

「国際大都市建設の中の移民と移民政策――上海を例として」
王世軍・周佳懿

中国社会学網http://www.sociology.cass.cn/shxw/shld/P020100526339402032292.PDF

 

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3 移民と移民政策の検討

世界都市の、大対数の都市の発展に関しては、主に移民を通じてである。都市が真に優っているのは、人口の集中がもたらす思想の集積、文化の交流・融合と制度の刷新にある。上海移民と移民政策の変化から見ることができるのは、20世紀90年代以来、改革・開放に従って中央から地方へ権限が移譲され、そしてグローバル化の背景の下で、世界都市間の競争が激しいものとなり、上海はちょうど中央政府が提供している政策の弾力性と制度空間を十分に利用し、都市自身の発展と地位によって、自らの移民戦略を確定している。今の上海はまさに移民都市に回帰しているところであり、上海が移民都市であることを活力として回復・発展しているところである。上海では、大量の青年・壮年の移民が流入し、就職競争と労働市場の成長をもたらし、一つの業界のなかの労働力に需要・供給の矛盾を緩和し、上海の工業とくに労働力の集中している製造業の発展を促進し、国際都市競争力を強めている。移民の流入はさらに上海の資本の蓄積を加速し、消費市場と購買力を拡大し、経済の需要・供給と生産の発展を刺激し、上海市の企業誘致と資金導入、特に不動産業の繁栄の推進に対しては、積極的な作用を引き起こしている。移民は自らのもつ技術と資本を頼りに企業と会社を興し、都市産業発展の重要な力となっている。ほかの移民はレストラン、雑貨店、理髪店など、自らが経営する性質をもつ非公式経済に従事するその他の移民も、直接・間接に就業機会を提供し、上海経済を繁栄させている。移民の流入はさらに上海の長年にわたる低出生率がもたらす人口のマイナス成長と高齢化の趨勢を大きく緩和している(サンプルデータによると、2005年の上海の外来人口の60歳以上の高齢者は2.2パーセントにすぎず、戸籍人口の19.6%よりもはるかに低い。上海の低水準の撫養係数(15歳以下・65歳以上の非生産年齢人口の比率――訳者註)は大量の新移民の支えとは不可分のものである。

 しかし、別の方面からも見なければならない。
(1)上海移民の構成と経済発展の組み合わせには改善すべき部分を残している。現在の上海移民の大部分は出稼ぎ型の移民であり、その次に教育型の移民であって、投資移民や創業型の移民の数の比率は非常に少ないが、出稼ぎ型移民の上海住民のなかの就職難集団の労働者としての能力に違いがないことによって、数量の膨大さに加えて、一定程度において、新移民と元々の住民の就業との扱いや協調の面で問題をもたらしている。
(2)移民の社会融合には注意が必要である。次第に外来人口が上海に住むようになり、結婚して家を買うようになるにつれて、彼らはすでに事実上上海人の重要な構成要素となり、新上海人とも呼ばれるようになっている。しかし戸籍身分制度の制限によって、彼らは就職、給与、雇用保障の点に差別的で不公正な待遇をしばしば受けており、教育、医療、住宅、福祉などの点では上海の戸籍を持っている人とは平等な待遇を教授しておらず、そうして彼らが殻らが上海に溶け込んでいくプロセスを妨害している。
(3)上海はちょうど排外守旧、地方保護主義の旧理念を放棄している段階にあり、経済のグローバル化と上海発展戦略のレベルから移民問題を認識かつ処理し、そして移民に必要な支持と援助を与えることは、例えば戸籍の制限を緩和し、市民化の管理方式によって上海にいる外来人口の合法的な権利の利益を保護し、移民の優れた部分と潜在能力を充分に発揮させようとしている。しかし、政府部門が採用している措置やサービスは応急処置的なものが主で、さらにそうしたサービスの間で統制や連携が欠如して全体の整合性のある移民政策がなく、移動人口は依然として様々な政策の高速や制度的な制限に直面している。統一的な組織による管理も存在しない。これは上海の移民体制と政策が完成の途中にあることを説明するものである。
(4)国際移民都市としての機能は非常に弱く、都市の国際化の程度は依然として低いままである。改革・開放以来、上海では各業界、領域での国際交流が日に日に盛んになっているものの、上海の人口を構成する国際化の程度は依然として非常に低く、その他の国際都市とも非常に開きがあり、さらには上海の30年代の水準よりもずっと低いというありさまである。上海が国際都市へと懸命に発展しているプロセスの中で、人口の発展は多くの不足や少なくない深刻な挑戦に直面していることがあらわになっている。

 事実、現在の上海が移民と発展の関係の問題で直面している新しいチャンスと挑戦は、特に外来人口や移民が吸収されることも必要だがコントロールされることも必要だという矛盾への直面である。政府について言えば、移民政策の計画の方向性は、いっそう都市の利益と構成要素の合理性が重視される。人口拡大を都市の競争力を高める助産婦とすることは、悩みの種や躓きの石(包袱和绊脚石)となるものではない。産業構造調整と知識経済の興隆に適応し、上海は就業者に対する知識と技術の要求が次第に高くなり、経済競争力の増強を背景として、上海は様々な行政手段を通じて外来の流動人口に対して制限と指導を加えている。戸籍制度と居留政策を通じて外来の流動人口に対して適切な選択と吸収を行い、上海の経済と社会の発展に協力していく。ここから見ることができるのは、上海の移民政策には決定的な変化が起こりつつあるということであり、つまり上海の工業化から脱工業化への転換に伴って、上海の移民に対する受け入れは選択的なものとなり、全力で高い技術をもったスペシャリストと熟練労働者を吸収し、非熟練労働者を厳しく制限しようとしていることである。しかし、都市の発展に必要なのはスペシャリストだけではなく、技術を持った多くの普通の労働者を必要としている。というのは、ひとつの完成された年の経済システムというのは、労働力と人材市場にも一貫した筋道があり、高い水準の労働者は欲しいが低い者はいらないというわけにはいかないからである。上海は外来人口をコントロールすると同時に、優秀な外来の労働者を適度に受け入れ、彼らを制度上も市民にふさわしい権利を保障し、伝統的な産業の競争力を維持していくことを考えていくべきである。

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