★2021年 8月初版の「ムスコ物語」
なによ!半分はイタリア暮らしだろと、パスタ好きのオババン女子は「パスタ嫌い」ヤマザキマリとある黄色の本が気になった。年寄りのたしなみで断捨離が頭にこびりついてる。でも好奇心だけが老いない。買う。
彼女は旬のモノいう人。2010年、映画でも話題になった古代ローマ人が銭湯に出現する話「テルマエ・ロマエ」で一躍有名に。イタリアでも2017年に受勲している。テレビの歴史番組、美術番組、新聞雑誌に引っ張りだこ。華奢な体に黒い長い服で低いちょっぴり早口で語る。めったに本は買わないから新聞広告で読みたい本に出会うと早速、最寄りの図書館にリクエスト。首を長~くして待つ。「むすこ物語」はその手で入手。
母は交響楽団のチェリスト。世界公演にも出向くシングルマザー。だけど母もただもんじゃない!14歳の娘を知人の伝手もあってかヨーロッパの旅に出す。娘は高校を中退してイタリア・フィレンチェの美術学校に入る。女子に手が早い自称詩人につかまり、暮らし始める・・・。破天荒とかがむしゃらとか言ってられないぶっちぎりの予定調和なしの生活は果たして?18話からなる構成。ヨーロッパ、中近東、アフリカ、北海道、沖縄、ハワイなどなどあちこちでの息子、デニス君とグンと年下の夫との、度肝を抜かれる生活ぶりが書いてある。読み始めたら止まらん面白さだけど、時系列的にあちこちの話がでてくるわけじゃない。で、頭がさまよい頁をあちこち繰るようにして読んだ。中身の濃さに刺激ピリピリ。
その中で、ヒントを得た日本人が真剣に考えたいこと二つ、さらに女子が一大決心するときの最高の切り札は何か?を実感こめて語るね。
① オレオレ詐欺/テレビじゃ爺さん婆さんに、息子や孫を語り(大事なカバン置き忘れた、株で失敗した、会社の金使い込んだ・・・)などの電話に騙されるな、と注意を促している。寂しさと金をしっかり抱えこんでひっそり息してる人がいかに多いことか・・・。
マリさんによるとイタリアの家族は強烈な絆で結ばれていると。ほんにベタベタ、ベラベラ人種らしい。マンマときたら近くに新婚の息子が住んでれば、いそいそと息子のために朝のコーヒーを淹れに行くのという・・・。もちろん嫁さんからの文句はない。電話はかけたり、かかってきたりで子や孫との交信は一日に何回もだってさ!
さて日本じゃ?どっかで大災害が起こると、離れている親が急に気になる人、多いはず。便りがないのは無事の印、の言葉があるお国柄。これじゃ息子や孫だと名乗る相手にゃメロメロだ。電話はめったにないから声を聴き分けられない!まして耳だって遠くなってるさ!
もうすぐ敬老の日。食べ物や着るものなん、ていらない。老いた親には息子や娘、孫の声は何よりの贈り物だよ!特別な日に限らず、スマホ代ケチらずじゃんじゃん声を聞かせてあげてよ。
② ジェンダーフリー/生活のため必死で描いた初めての漫画で得た賞金でやっとこ日本に帰国。札幌の母のところに小さいデニス君と転がり込む。漫画と大学や個人教授、美術のイベント、テレビレポーターとイタリア語と日本語を駆使してガムシャラに働いていた頃の話。デニス君の父と別れ恋だ結婚だにピンとこなかった時期。仕事で来ていたデンマークの女子に「なぜマリは独りなの?日本じゃシングルマザーはもてないの?」と聞かれた男子が「彼女はたくましすぎて、自分が役立たずになる」と答えた。すると彼女は「北欧じゃそんな考えは通じない!」と怒りだす。その後、彼と一切言葉を交わさず帰国時も挨拶なし、とさ。ジェンダー指数は後進国の日本。確かに北欧のフィンランド、スエーデン、19年にはデンマークでも女性首相誕生!。
数年前にやっと出てきたクオーター制なんて言葉はどこ吹く風よ!
イギリスもまた女性首相に戻ったじゃん!
③ 同居人と別れるとき/妊娠と分かったとき、さすがに猪突猛進?のマリさんも友人のいろんな考えを聞きつつ悩みに悩む。産もう!と一大決心する。自称詩人、何をやってもダメ,借金取り追われる貧乏人との結婚はない、一人で育てる、と固く心に決めて。でもでも病室のベッドの上で、もしかしたら・・・淡い期待もあったという。彼が赤ちゃんをやさしく抱き、こころから幸福そうに微笑む姿を見てこれから生活を立て直してくれるかも・・・、と思った瞬間もつかの間。友人からベビーベッドを譲りうけるはずが金が足りないからダメだった、君さ都合付かない?と聞いてきたのじゃ。電光石火さながら口から飛び出たのは、「別れます!」の最後通達!至極当然だった。
愛が消えても金さえあれば、こころは鬼でも伴侶との暮らしは繕える。
演歌の世界じゃありでもさあ、金の切れ目は縁の切れ目は、おのことめのこの関係を表す永遠の名言。鉄板です。
★今年、2月初版の「奇跡」.
林真理子さんは、元名門歌舞伎役者さんの妻だった友達に頼まれて、モデルとして書いたフィクションという。でも調べれば何もかもわかってしまう。ドキュメンタリーじゃないの?京都の祇園宵山を料亭で見る席で顔を合わせただけだったけど、6年後に偶然会い惹かれる(彼は一目ぼれしてた)・・・。特別な存在の小さい男の子を持つ身。名門一家のこまごまとした決まり事を完璧にこなすデキる人、そして美しい。彼はパリに日本人の妻と住む世界に名だたる写真家。天性の審美観の持ち主で建築や舞台美術なども手掛ける。東京にもマンションがある。彼は長身で肩幅もがっちり、いわばちょっと古い言葉で真理子さんは「美丈夫」と書いている。そして穏やかで笑顔を絶やさないとも。これじゃ女子なら誰でもまいりますよ。普通なら考えられないけど息子さんが幼稚園の頃から(,夫は不信感を持たなかった?)通うに便利だとからの1LDKの小さな東京のマンションに三人で暮らすように。彼は目立つのを避け他にもマンションを借りたけど・・・。息子さんが17歳になるまで仲良しこよし。
歌舞伎役者には女性問題がつきもの、彼女はそこも上手に裁き、やがて夫に離婚を切り出す。そこもスンナリといく。(彼もその後、すぐ再婚)二人が結婚するまでの道のりにドロドロの土壇場がない。彼女の頭の良さと情熱(歌舞伎役者さんとの結婚も熱愛)で仕組まれた不倫を成功に導いた戦略戦術の物語とオババン女子は我思う。
彼女の日記の形式で書かれた部分が多い。下世話な言い方だけどしっぽり場面が書かれているわけじゃなくサラッと触れているだけ。恋愛小説かな、と期待もしたけど色気なし。それより真理子さんご本人が彼が亡くなった後に、DVDやテレビ出演番組のアーカイブを観てると彼の男盛りの自信と色気にドキリとするって書いてる。ちょいと気になるじゃありませんか、うふふ。もちろん実名で検索すると彼も彼女もパソコン画面に現れる。そりゃ着物姿は見事、背中や胸元を露わにしたアチラのドレス姿もお似合い。もうちょっと若かったら嫉妬ムラムラ、メラメラになるよ。色白で顔かたち良し、お目目ぱっちりのシニア前の艶っぽいお年頃。やっとこ結婚にこぎつけた夫もやがて肺癌に。再発もする。壮絶な死との戦いも懸命で支え続けた・・・。いまは実業家。もともと熱い人だから事業にも懸命に取り組んでいるよう。
真理子さんは推しで日本大学の理事長に。作品も私生活も前に前に進む。いろんな和事に励んだり、ファッション本出したり。キレイになったと思う。さあジェンダーフリーを遺憾なく見せつけてよ。フレーフレー!
★2021年5月初版の「月夜の森のふくろう」
小池真理子さんの「月夜の森のふくろう」は朝日新聞連載のエッセイをまとめたもの。ご主人の藤田宣水さんが2020年1月末に肺腺癌で亡くなるまでの闘病1年10ヵ月の心情をしたためたもの。真理子さんは好きな作家さん。文庫本は数冊持っていて時々目を通す。ぐちゃぐちゃの日々にウンザリしてるとき、オシャレなカフェに逃げ込んで、真理子さんの恋物語に救いを求めるのはいいよ。美人で有名な彼女は藤田さんとの熱い恋の末、結ばれた。子供は作らないときめた事実婚。ずっと恋人のままだったんよね。真理子さんは「愛、エロス、死」しか興味がない、と言い切っている。推敲を重ねた豊穣な言葉で独特な世界を書く。
1970年から10年フランスで暮らしていたのだそうだ。1995年「恋」
で直木賞受賞。ミステリーも手掛け日本推理作家協会賞にも輝いている。オババン女子が真理子さん作品を好きな理由は、生活の匂いがしないところ。登場人物に悪者がいない、透明感があり、はかなげでぼんやりとしていてストーリーに結末がない。想像力を誘う。
整理下手なんでどこかに紛れ込んでしまった世界の映画スターの本質を見抜いたかのようなエッセイ本も持っている。
「夏の吐息」は珠玉の短編集。これ以上の作品はもう書けないかも、と自ら帯文にある・・・。「月夜の森のふくろう」のエッセイは新聞で読みふけったっけ。確かに真理子さんワールドだったよ。彼女が暮らす軽井沢の神羅万象が匂う・・・。



目の前の江の島

英文でもハッキリ、日本一の海水浴場

ようこそ、磯野さんご一家!

ヘビロテの3足

目の前に元気なセミが・・・

かわいいサルスベリの花