
夏と言えば足元はビーサン!サーファーを年中見かける湘南の海
辺の街じゃ珍しくないが、住民の気持ちが海に向かうのは五月の
連休の頃。家々の靴箱にはビーサンが何足か押し込まれている。
それを引っ張りだして街中でも履く。もちろんまずは若者からだ。
その後は子供やその昔、ヤンチャだったオヤジやオシャレなオバ
アバ女子が続く。今年はどんなビーサンにしようかと、ハワイア
ングッズの店などをのぞくのも楽しみの一つ。
ビーサンには鮮烈な思い出がある。七十年代初め、ヘップバーン
が女の子の憧れのスタ―だった頃、スリムな七分丈で脇にスリッ
トの入ったサブリナパンツが流行った。(彼女が主演の、麗しの
サブリナ、で着ていた)そして湘南ボーイ、ガールと呼ばれた
面々は、ビーサンで湘南電車や横須賀線に乗ったりした。
ま、イキがってたんですよねえ。
そんな時期にあたしの仕事場は銀座。ヤマハホール、ガスホールが
近い。まだまだ車が少ないある日のこと。
ふと見るとパッと銀座通り(中央通り)を横切った女(ひと)が!
サブリナパンツ姿で籠バッグとビーサンだ。向田邦子さん!
印象的だったから記憶には地震がある。
最近の新聞に在りし日、自宅でくつろぐ彼女の写真が掲載されて
いた。彼女の着るものへのこだわりが記されていたが一言でいえ
ばシンプルでモダン。今でも古い感じはしない。オシャレな彼女
はピンときたものは、ためらわず取り入れたんだと思う。
彼女の残した小説やエッセイは今も人気だ。時々読み返す。鋭い
洞察力は、特に女を書くとき異彩を放つ。そこには怖い女がいる。


●写真は縞模様の私のビーサン、オシャレな女子のビーサンの足元、海へ行く電車で見たパパと子供のビーサンたち